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マサヤス   龍之介

マサヤス 龍之介

シャシンの残照  ♯ 254

#日本映画古典

☆『限りなき前進』/ 日活多摩川作品

1937年昭和12年封切 原案:小津安二郎 監督:内田吐夢 脚本:八木保太郎 撮影:碧川道夫 音楽:山田榮一 出演:小杉勇 轟夕起子 江川宇礼雄

☆ 野々宮保吉(小杉勇)は、実直なリーマンだ。定年間際で決して重役にはなれない。婚期の迫った娘(轟夕起子)の事を考えると、ふと気が重くなりややもすると、恐怖感に苛(さいな)まされる。
 或る日、彼は出社するなり専務室に収まり、社員たちに明るく振る舞い、一同を料亭へ連れて行き上等な料理をご馳走して、得意の"さんさ時雨"を唱ってきかせるのだが、その朗々たる美声は部下たちの心にも沁み入るのであった。いつか自分にも襲いくる運命ではないのか。。。
 急の報せに駆けつけた娘と近所の青年で許婚者の北くん(江川宇礼雄)に抱き抱えられる様に彼は帰っていった。父が精神病なのは明白であり、強く打ちひしがれる娘を北くんは力強く励ます。ラストの言葉が堪らなく残酷だ---親父は結局、もう過去の人間だ。過去は過去として葬らしめよだ。---
原案者小津安二郎の"らしい"作品である。小津は最初『愉しき哉保吉君』と云うタイトルで自分で映画化することを考えていたが、松竹からは内容が余りに暗いと突っぱねたので、やむを得ずストーリーを仲間の八木保太郎に手渡された(未脚本だった)。八木は当時珍しかった雑誌『新潮』に掲載された。映画のシナリオが文藝雑誌に載るのは当時も現在も珍しい。しかし、小津がもし映画化していたら脚本ほど暗いものにはならなかった筈だ。小津のサイレント期の保吉ものに見られる或るほろ苦い笑いの仮面を被らせて、この老リーマンの悲劇を描いたであろうと想像できる。
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