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何十ページ目だったか、重い腰を上げて再開した読書の途中で、それは不意に姿を現した。
色あせた感熱紙に印字されていたのは、**「サン宝石」**の文字。
11年前、当時13歳だった娘に「これ、払ってきて」と手渡されたものだ。
「……また、これか」
僕はわざと、手元のカタログに載っている奇妙な形のキャラクター——ほっぺちゃんを指さして、意地悪く笑った。
「これの、どこが良いんだか。ただのシリコンの塊じゃないか」
すると娘は、待ってましたと言わんばかりに頬を膨らませ、不機嫌そうな顔を隠そうともせずに言い返す。
「お父さんにはわかんないの!これが可愛いの!」
その、ちょっと生意気で、でも一生懸命に自分の「宝物」を守ろうとする表情が可笑しくて、僕はまた余計な一言を重ねては彼女を揶揄っていた。
あの頃、大切だったはずの思い出も、直視するのが辛くて、身の回りのものはすべて捨てたつもりだった。
けれど、投げ出したままの本の中にだけ、僕たちの時間が閉じ込められていたらしい。
今、手元にあるのは、ただの古い領収書だ。
けれど、それを見つめていると、不機嫌そうに唇を尖らせた13歳の彼女が、すぐそこにいるような気がしてくる。
「……本当に、何が良いんだかな」
僕は独り言をつぶやき、今度は少しだけ、優しく笑った。
11年という歳月を栞にして、僕はまた、止まっていたページの続きをめくり始める。
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