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嘆溺

嘆溺

散々父から向けられる不器用な、愛情ともつかない自分へ向けてきた目、や言葉、や支えの数々を、仇で返すように遮って疎遠にさせてしまった自分。ふと父の立場に自分を置いて思いを馳せてみれば、哀れみのような、悲しさが自分を襲ってくる。
毎日のように怒りを覚えていたあの家でのことも事実で、それでも己の父親であったのだということも事実で、もう今更もとには戻らない取り返しのつかない時間・季節に来てしまったのも事実。
そう遠くない未来に父がこの世を去れば、その後の俺の人生には永遠に黒い悔恨の染みが残るだろう。しかしそれを打ち立てる手立てはない。彼の不器用さの血を継いでいる自分には、それが不器用故なのか、もう既に本当に見放されて会う気も大して無いのか…、掴みきれない。会う気があれば、あの時のように図々しく、無理にでも連れてこさせようとするのではなかろうか。それでもしてこないのが、彼なりの思いやりなのだろうか。時々夢に見る。母と父が寄り添い合っていた世界があったならば、そこにどれだけ当たり前に感ぜられる幸せがあっただろうか。私がいくら歳を重ねても、私の両親はずっと両親。時々、そんな家族の形がもう壊れていることに対して、えもいわれぬような途轍もない喪失感に苛まれる。家族のつながりは呪いにも安らぎにもなりうる強固で、頼もしくて、厄介でもあるもの。楽しかったかつての家庭は、どこへ行ってしまったのか。もしかして自分に原因があったのではないか……?後戻りはできない。そう割り切っていても、たらればの世界に夢を見てしまう。
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