共感で繋がるSNS
GRAVITY(グラビティ) SNS

投稿

きりゅ

きりゅ

『たべていいよね』
この絵本は日常の中にひそんでいた危険が突然姿をあらわし、安心が一気に崩れ落ちる恐怖を描いているように思いました。はじめに、お腹をすかせたおおかみが誰にも見られていないと思って、親しい友だちのうさぎを食べてしまうという静かで衝撃的な場面から始まります。いつもそばにいて決して自分を傷つけないはずの友達が、ある瞬間に捕食者へと姿を変える。その裏切りは「信じていたものが急に壊れる」恐怖の象徴です。さらにその恐怖は連鎖し、おおかみの行為を目撃した動物たちは、ひとり、またひとりと食べられていきます。目撃すること=危険に巻き込まれること。日常のなかで当たり前に存在していた安全の領域は、あっという間に崩れていきます。「知ってしまった者から消されていく」というルールは、世界が静かに、しかし確実に狭まっていく圧迫感を生むと捉えました。やがて動物たちは誰もいなくなり、世界は一見静けさを取り戻します。しかしそれは守られた静けさではなく、恐怖によってすべてが奪われた後に残った空虚な沈黙です。ここで物語はさらに一歩踏み込み、ページを開いている読者という第三者にまでおおかみの牙が迫ってくるのです。安全だと思っていた読書という立場でも物語に侵食され、「安全圏はどこにもない」という感覚が生まれます。つまりこの物語はただの怖い話ではなく、日常の信頼や安心がふとしたきっかけで崩れ去ったとき、人がどれほど深い恐怖に包まれるかを鋭く描いていると感じました。
GRAVITY
GRAVITY15
関連する投稿をみつける
話題の投稿をみつける
関連検索ワード

『たべていいよね』