星野八郎太 ― 自己への執着から、全体のなかにある自分へ｜ごから(5辛じゃないの投稿-GRAVITY(グラビティ) SNS

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ごから(5辛じゃない

2025/10/31

星野八郎太 ― 自己への執着から、全体のなかにある自分へ

ハチマキは、いつも自分の感覚と力を信じて前へ進んできた。
誰かの指示ではなく、自分の判断。
目に見える確かな経験と技術、それだけをよりどころにして、
自分の腕で宇宙を掴もうとしていた。
その生き方は、牡牛座が象徴する「自分の感覚への信頼」を地で行くものだった。
彼は、自分の内にある確かさを信じ、それを頼りに未知へ挑んだのだ。

だが、宇宙はその信頼を簡単に裏切る。
閉鎖実験での孤独、仲間との衝突、事故の恐怖。
どれほど備えても、どんな理屈を積み上げても、
宇宙の沈黙はそれをあっさりと飲み込んでしまう。

その沈黙の中で、ハチマキの中にあった確信が少しずつ崩れていった。
努力も、自信も、夢も、次第に形を失い、
彼の心は、静かに、何もない空間へと溶けていく。
「俺には、宇宙なんて関係なかったのかもしれない。」
そう呟いたとき、彼の中にはもう、何も残っていなかった。
誇りやこだわりが消えたのではない。
それらが、重さを保てなくなり、自然に零れ落ちたのだ。

その“空っぽ”の状態こそが、ハチマキの転機だった。
何も持たない心に、外の世界の気配が入り込む。
仲間の声、誰かの笑顔、差し伸べられる手。
それらが、静かに彼の内側へ流れ込み、
冷えた空間にわずかな温もりを生み出した。

それは、蠍座の象徴する“他者とのつながり”のはじまりだった。
自分の力で立つことしか知らなかった彼が、
初めて、自分の外にある世界に支えられていることを知る。
他者と関わるということは、
自分の確かさを失う代わりに、もっと大きな全体の中に溶けていくことでもあった。

ハチマキが経験した“空になる”という出来事は、
牡牛座18度のサビアンシンボル「窓からバッグを外へ出している女」に呼応している。
自ら捨てたのではなく、自然に中身がこぼれ出たバッグのように、
彼の心は、内に抱えてきた思いを静かに外へ流していった。
そしてその空白の中に、新しい風が吹き込む。

宇宙を征服するのではなく、宇宙と共に呼吸する。
ハチマキの変化とは、まさにその意識の転換だった。
彼の挑戦は終わらない。
ただその方向が、“自分の力を証明するため”から、
“誰かと共に生きるため”へと変わったのだ。

そして、この物語を生んだ作者・幸村誠の太陽もまた、
牡牛座18度に輝いている。
その象徴は――

「窓からバッグを外へ出している女」。

内に溜めたものが外に零れ落ち、
空になった心に、新しい風が通り抜けていく。
ハチマキの旅は、その象徴が描く精神の軌跡そのものだった。