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私には自閉症の兄がいます。
意思の疎通は難しく、突然大きな声を出したり、奇声を発したり、暴れたりします。
じっとしていることはできません。
食事は手で掴んで食べます。
ぐちゃぐちゃになった手で色んなものを触ります。
一人で生きてはいけません。

私は小さい頃から兄の介助をしてきました。
学校では給食を手づかみで食べ、絶叫しながら暴れ回る兄が恥ずかしくてたまりませんでした。

「妹ちゃんはいつもお兄さんのお手伝いをしていてえらいね。」

と言われるのが苦痛でした。
したくてしているんじゃない。しなければならないからしている。
私だって友達と遊びたい、友達のように兄に甘えてみたい。
そう思っていました。

「お兄さんも妹ちゃんといると嬉しそう」

意思の疎通ができないのに、どうしてわかるんだろう。私は兄といる時間が大嫌いでした。

「障害は一つの個性だからね。自分らしさだからね。」

そう言ってみんなに授業をする先生が大嫌いでした。
私は兄が自分らしく生きれば生きるほど、自分を殺して生きていくしかないのに。

少し前に、要介助の身体障害者のカップルをテレビで見ました。最後まで見ることはできませんでした。

遠距離恋愛でも、愛の力で会いに行く。

美しい文句でしたが、愛の力ではなく、介助者の協力じゃないか。
と思いました。
障害者は不自由でも頑張っていると世間では称されるのに、私たちのような介助者は陰の存在。

正直、誰かの手を借りないと生活もままならないくせに、恋愛なんかするな。と思ってしまいました。
私は、歳をとった兄のめんどうを一緒にみさせてしまうと思うと、恋愛なんてできません。

私は生涯兄のために生きるのです。
どこで暴れ出すかわからない兄と、狭い家の中で生きていくのです。

救いが欲しいわけではありません。
きっと全ての方が私のような浅ましい考えを持っているわけではありません。

「やれる事はやった」あとの私の諦めを、誰かに聞いて欲しかっただけなのです。毎日うんざりする叫び声を聞きながら、私の1日は終わります。
兄に殴られてあざだらけの私が、兄に傷をつけようものなら虐待だと騒がれてしまうので丁重に扱います。

同じ人間なのでしょうか。
私は人間なのでしょうか。

明日も1日でも早く兄が死ぬことを祈りながら兄の介助をします。

聞いてくれてありがとう。