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空栗鼠

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#空栗鼠の読んだ本
『丕緒の鳥 十二国記』小野不由美

小野不由美の『丕緒の鳥』は、「十二国記」の壮大な世界を舞台にしながらも、華々しい英雄の物語ではなく、その世界に生きる名もなき人々の姿を丁寧に描いた短編集。

表題作の“丕緒の鳥”は、王の即位式に使う“陶鵲”を作る職人。彼の苦悩や葛藤を通じて、芸術と権力、理想と現実のはざまでもがく人間の姿が浮き彫りになる。

他の話でも、正義に迷う司法官や、国を救おうと奔走する役人たちなど、「誰かのために働く」人々の苦しい選択が描かれている。

どの物語も決して明るい結末ではないが、そこにこそこの世界のリアリズムがある。

ファンタジーでありながら、どこか現実と地続きに感じられる作品だった。華やかさよりも地に足のついた人間ドラマに心を打たれた。
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