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puspisrow

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アイコン、湿る、レフェリー
#即興小説

雨降る街の駅のホームでやることもなくSNSを覗いていた。待ち合わせをしていたが何時に来るかわからなかった。待つことにさすがに飽きてしまったので、湿って重くなった頭を上げて目の前を通り過ぎていく人々を眺めた。不思議だったのは濡れている人が思っているよりも少なかったことだ。気兼ねないラフな服装で全く濡れていない若い大学生くらいの男もいれば、何かあわれんでしまうほど肩を濡らしたフォーマルな老婦人もいた。男は傘を持っておらず、老婦人は傘を持っていた。気に止まったのはその2人くらいで、後はよくわからなかった。濡れて垂れ下がる前髪を避けて湿った指で画面をスクロールする。昨日と同じアイコンが表示された。おすすめには知らないアイコンも表示された。どのアカウントも今日の天気について話していた。雨によってうんざりしたこと、意外と悪くないということ、こちらはまだ降っていないということ。首が痛くなってしまったので再び頭を上げた。さっきよりも服は乾いて肌に張り付かなかった。目線よりももう少し見上げるとサッカーの試合が中継されていた。あちらも雨らしく選手たちは皆ずぶ濡れになって、髪が束になって頭に張り付いていた。ユニフォームももう身体の輪郭をありありと表していた。急にカメラワークが忙しくなるとどうやら監督がレフェリーに怒鳴っているらしい。放送はレフェリーの背中越しに写る全身で怒りを表現するベンチコートを着た監督を有り難がって中継していた。レフェリーの顔は見えなかった。いったいどのような顔をしているのだろうか。そこで私は急にトイレに行きたくなったので、濡れてまだ乾いていないバッグを持ち上げてトイレがあるという方向に向かって歩き出したとき、待ち合わせていた人が偶然向こうから歩いてきていることに気がついた。彼女はスマホを見て俯きながら器用に人混みを避けて進んでいたが、私のことには気づいていない様子だった。
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