共感で繋がるSNS
GRAVITY(グラビティ) SNS

投稿

かるぽ

かるぽ

【文章の練習】
地元では俺は浮ついた子供だった。少年期、それぞれの自我が芽生える頃、俺には友達と言える者はほとんどいなかった。その要因は俺自身の社会的相互交流能力の不良さに拠るところも大きいが、なかんずく価値観の違いであったろう。
当時、俺の中で自身の指向性というものは確立されていなかった。うっすらと歴史、文芸、正義というものを好んでいたに過ぎぬ。しかしそれらは未だ心の奥底に種として眠っており、表面的には蒙昧の徒の如く日々を虚飾の中に生きていた。が、萌芽ながら俺の中の指向性は虚飾の中に生きることもまた良しとはしなかった。人を馬鹿にしたり、仲間外れにしたり、揶揄ったり。そういうことは良くないことだと、俺の中の俺は知っていたらしい。
真実唾棄すべきことに、どうやら俺は内心では当時友と呼んでいた者たちのことさえ軽蔑していたらしい。甚だ失礼なことだ。もっとも軽蔑されるべきは誰かなど自明であったろうに!
もし俺がもっと早く真実というものに気づいていたのであれば、真心をもって他者と相対することの大切さを体得できていれば、その者と共有し得る価値(文芸とか楽器とかスポーツとか)をもって専心の業と定め、互いを磨いていくことができていただろうか。いいや、そうでもあるまい。畢竟俺は、嘗て軽侮してきた者共と同じく軽佻浮薄の輩なのだ。

時を経た今、よく分かる。俺は弱い。何事かに専心し自分を磨くことができぬ。苦しいことがあればすぐに逃げる。人間関係だってそうだ。相容れぬと見極めた相手に対して、容易くその者との縁を断ちきってしまうような弱さがある。ひとつ縁が切れたとて他の者がいると嘯いて。まるで蜘蛛の巣のように。その弱さが、不誠実さが、根性のなさが、今の浮ついた愚者としての俺を構築している。
それを一面を切り取って、別の角度でみれば大人びた振舞いだと言うのは欺瞞だ。何者にも専心せず、囚われず、心は凪いだ状態を保っていると宣えど、己の真実の心は欺けぬ。それは木枯らしが風に吹かれてあてどもなく彷徨っているに過ぎぬ。

まずは認めるのだ。己の惰弱な本性を。謝り続けるのだ。これまでの人々に。誓うのだ。今と、これからの人々に。真心をもって貴方がたと相対しますと。弱くとも、いつか矜持と呼べる程の芯を己の中に育むことを目指して。
GRAVITY8
GRAVITY16

コメント

兆しィ

兆しィ

1 GRAVITY

コレクトした

返信
かるぽ
かるぽ
ありがとうございます。自分も折に触れて見返しておこうと思います。
1 GRAVITY
じゃむむ

じゃむむ

1 GRAVITY

古井由吉っぽさも感じるかも。

返信
かるぽ
かるぽ
あら。知らない作者さんでした。何かお薦めの作品はあります?
0 GRAVITY
——さらに返信を表示(2)
#朗読会るぴなす💠

#朗読会るぴなす💠

1 GRAVITY

宮沢賢治と中島敦を足して2で割ったような印象を受けました。真摯ですね。お人柄は皆さんによく伝わっていると思いますよ。

返信
かるぽ
かるぽ
ありがとうございます。あまり普段やらない文体でしたね。一人称も違いますし。 実際のところ内省的な性質でして(楽天的でもあるんですけどね)、日々ああすればよかった・こう言えばよかったと一人反省会をすることが多いのですよ。へへへ。
1 GRAVITY
話題の投稿をみつける
関連検索ワード

【文章の練習】