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楓花(ふうか)
料理が出来上がり、凛子に起こされて俺は席についた。
凛子の席にも小さな皿に少しだけ料理があった。
「食べるのか?」
「うん。アタシの身体には有機脳も入ってるの。あくまで補助的なものだし、耐久年数も長いよ。それに少しばかり栄養が必要になるわけ。あとは単純に他の動力源になるんだけど、その場合は鉄屑だろうが紙屑だろうが構わない。
だけど、パートナーがそんなの食べてたら嫌でしょ」
「どうかな。見てみたい気もするが」
「バカ言わないで」
凛子が笑いながらゆっくりと料理を口に運ぶ。
俺のタイミングに合わせてくれているようだ。
なるほどな、と思いながら俺も口に入れる。
「上手いな。あれだけしか材料がなかったのに」
「いい女は少ないもので最高のものを出すものよ。あと…隠し味は、愛」
「バカ言うな」
俺は笑ったが、凛子は笑ってない。
「ほんとよ?有機脳がそれを可能にしてるの。それとも愛は信じない口?」
「愛か…正直言って分からない。人間相手でもな」
「そうよね…そうだったわ。ごめんなさい」
沈黙が流れる。しかし凛子はすぐに口を開いた。
「こういうのって、フェアじゃない、って思う?」
「何が」
「何が、って…私はアンタの記憶や感情を知れる。でもアンタは私のそれが分からない。まぁ、記憶に関しては私は生まれたてだからないんだけど」
「ふむ…確かにフェアではないと思う」
「よろしければ私の全機能を説明いたしましょうか?ガイドツアーの所要時間は約3時間です」
「やめてくれ。情けなくなる」
「優しいね」
「そういうのじゃないさ。ただ楽しみは長く取っておきたい性分なんだ」
「そういう所よ。大抵のマスターはアタシ達を所有物として捉えるわ。あれをしろこれをしろ、ってね。でもアンタは…そうじゃない」
料理を食い終えた俺はフォークを置いて答えた。
「俺は…人に疲れた。訳の分からない生き物に対して、指示するのも、説教するのもな。でも凛子は、君達は、それとは別の存在だと思ってる。俺たち人間よりも、遥かに賢く、合理的な存在だと」
凛子は口を拭きながら聞いていて、それを終えて言った。
「なるほどね。アンタらしいね。合理的なものを追求する。でもだからこそ、孤独になった」
「その通りだ。だから俺は優しくなんかないよ」
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楓花(ふうか) 投稿者
凛子が背中に密着し、俺の内腿に触れてきた。 「そこは…いい」 「でも凝ってる」 「そうじゃなくて」 「分かってる。まだ自分の機能が回復してるか、分からなくて怖いんでしょ。それも併せての治療だから、大人しく受けなさい」 仕方なく受け入れることにした。 確かに俺は不全だ。とある事を境にそうなった。 図星だった。怖かった。でも凛子なら…俺を治せるかもしれない。 凛子の姿勢、指の動きが恐れを消していく。 いやらしさの欠片も感じさせない、純粋なものが、そこにはあった。 凛子の言う通りに体勢を変え、凛子は俺の前に移動して脹脛をマッサージした。 「膝を伸ばして、曲げて。もう一度。もう一回。そう」
楓花(ふうか) 投稿者
凛子が最後に足の付け根から先にかけて、スーッと撫でた。 軽い。そして、熱い。 「素直に、なったねぇ…」 「…あぁ…なっちまったな…どうすんだこれ」 「凛子に任せて」 凛子がまさに俺の望むポジションと姿勢を取り、顔を首筋に預けてきた。 右手が俺の顎を優しく誘導する。 最後にしたのは、いつだったか。 ふとそんな事を考えると、すぐに 凛子に口を塞がれた。 「忘れて。何もかも。もう今は、それは関係ない」 時計は午後4時過ぎ辺り。 まだ夕焼けにも染まらない部屋の中で、まだ出会って間もない俺たちは、体を重ね合った。
楓花(ふうか) 投稿者
凛子が立ち上がり、食器を机の真ん中に重ねた。 「マッサージでもしてあげる。こっちきて」 言われるがままにソファに移る。 肩に触れる指はしなやかに、しかし力強く俺の筋肉に沈んでいく。 「優しいよ、アンタは。ただ、壁作ろうとしてるだけ。でもね、それは人間相手だけでいい。アタシには、そんなの作らなくていい」 全てが心地いい。身体も心もほぐされていく。 俺の呼吸に合わせて、凛子がマッサージを続ける。 「もう認めていい。アンタは頑張った。十分過ぎるほどに。それでもアンタは頑張り続けるだろうけど、もう今はアタシがいる。凝り固まったらこうやってほぐしてあげる」
🐲興風龍之介🐉
凛子良いですね。 主人公は再起するのかな?