先日亡くなった叔父からの忘れ形見をいただきました。普段なかなか使う機会は無いですが、今の自分のネクタイがボロボロになってるので大切に使おうと思います😊

「オムハヤシの昼下がり」
昼の陽ざしがやわらかく、窓辺に小さな湯気が立ちのぼる。台所には、トントンと玉ねぎを刻む音。「今日は急にお昼を作ることになっちゃったな」と、こ〜ちゃんは笑いながら冷蔵庫を開けた。
残っていたのは玉ねぎと、冷凍しておいた鶏むね肉のひき肉。そういえば、先日まとめて買って、フードプロセッサーでひき肉にしておいたんだった。「よし、これでチキンライスを作ろう」
フライパンの中でバターがじゅわっと溶け、玉ねぎとひき肉の香りが立つ。台所がその香ばしい香りに包まれると、奥の部屋から「こ〜ちゃん、いいにおいー！」と、5歳の孫の声が響いた。 3歳の妹も、ぱたぱたと小さな足で台所へ駆けてくる。
「今日はね、オムライスにしようと思ってるんだ」そう言うと、二人の目が一気にまるくなる。「わーい！オムライス！」「たまごトロトロがいい〜！」
こ〜ちゃんは笑ってうなずき、ふんわり半熟の卵を作り始めた。フライパンの上で、卵がやさしく揺れる。ドレスのようにふわりと形を整え、チキンライスの上にそっとのせる。「できた…」と小さくつぶやくと、横にあった鍋の中に目をやった。
そうだ、先日作ったハヤシライスがまだ残っていた。あの夜、みんなで美味しいねと笑い合いながら食べた味。あれをこのオムライスにかけたら、もっと美味しくなるかもしれない。
お皿の中央にオムライスを置き、まわりをゆっくりとハヤシソースで囲む。スプーンを持つ手が、まるで絵を描くように動いた。「オムハヤシ、完成だ」
テーブルに運ぶと、孫たちは拍手。「わぁ〜！すごい！レストランみたい！」「こ〜ちゃんのごはん、だいすき！」
その言葉に、こ〜ちゃんの胸の奥がじんわりとあたたかくなる。食卓には、ふわふわ卵とハヤシの香り、そして笑顔があふれていた。
食後には、昨日の作ったケーキをもう一度切り分けた。「こ〜ちゃん、ケーキもおいしいね！」「うん、しあわせの味だね」
こ〜ちゃんは静かに微笑んだ。料理の湯気の向こうに、小さな幸せが広がっていました。