チェルノボグにチェルノボグ連れて行けんのかい｜バイトの投稿-GRAVITY(グラビティ) SNS

※前回の続きの長文です。#会社 #愚痴
②
「まぁ、そう怒るな」

75歳は私をたしなめる。

「俺がこの会社に言いたいことはまだまだある。
　お盆明けに社長と個別面談の約束をしたから、まる君も同席しなさい」

『…わ、私？』

「まる君、お盆明けまでに資料をまとめたまえ！
　まだまだこの会社の悪い部分は沢山ある。

　就業規則が無い。
　労働契約書が無い。
　年間休日数が少ない。
　給料が銀行振込じゃない。

　今ざっと言っただけでもこんなに見つかるんだがね！
　見やすいように資料を作っておいて、
　面談の時にそれらを持ってきて提示してくれ！」

『…は、はい！』

この75歳。
若いころは大きい会社の部長職を務めていたらしく、貫禄がある。

さっきまでお盆休みについて不平不満を言っていたが、
いつの間にか口車に乗せられて「この会社の悪い部分をまとめた資料を作る」という役割を与えられていた。

そしてお盆休みの間、その資料の作成に追われる私。

言い出した75歳本人は悠々自適にお盆休みに入っている中、
（あれ…？　言った本人は休んでるのに、私の仕事が増えてるのっておかしくね…？）という根本的な所に気づく間もなく、お盆は過ぎて行った。

８月下旬。

「まる君、資料は出来たがね？」
『できました！』

これでこの人が社長を一喝してくれるなら！

ワクワクが止まらない。
仕事まみれのお盆だったけど、これからの年間休日が増えるなら、必要な時間だったに違いない！

「俺がお盆前に言ったことは全て覚えているね？」
『全てじゃないですけど、覚えてるところはまとめました！』

私が用意した資料を見ずに、75歳は続ける。

「じゃあ、社長と三者面談だ」
『はい！』

資料はもう既に３部用意してある。
気持ちをわくわくさせながら社長室へと向かう私と75歳。

「俺が言ったことを覚えてるってことは、大丈夫ってことだな」
『何がですか？』

「まずは、俺がお盆前に何を言ったのかテストだ。
　俺が休み前に言ったことを、まる君が説明しなさい。
　足りない所は俺が補足説明する」

『…え？
　私が社長に言うんですか？』

思っていた方向と違ってきた。
しかし、75歳はフォローしてくれるらしい。

『どういうことです？』と、
頭に疑問符を浮かべながらも私たちは社長室へと入った。