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涼
# 夏の終わりの花火
河原に座り込んで、空を見上げる。今夜は花火大会の日だった。
「どれくらいの意味があるんだろうな、こんな日常に」
隣に座る幼馴染の美月が振り返る。
「また始まった。拓海の哲学タイム」
彼女はいつものように茶化して笑う。でもその笑顔を見ていると、心の重さが少し軽くなる気がした。
「就活も上手くいかないし、将来なんて見えないし...」
「みんなそうよ。私だって不安だらけ」
美月の声は優しかった。
「でも、今ここにいることには意味があると思う。少なくとも、私たちが出会えたことには」
空に最初の花火が打ち上がった。オレンジ色の光が夜空に広がって、すぐに消えていく。
「儚いな」拓海は呟いた。
「だから美しいのよ」美月が答える。「永遠に続くものなんて、きっとつまらない」
次々と花火が夜空を彩る。赤、青、金色。一瞬の輝きのために、どれだけの準備と想いが込められているのだろう。
「僕らの人生も、きっとこんな感じなのかな」
「そうかもしれないね。でも、その一瞬一瞬を誰かと分かち合えるなら、それで十分じゃない?」
最後の花火が空に咲いた。巨大な菊の花のような光が、ゆっくりと散っていく。
拍手と歓声が河原に響く。みんな、この瞬間を心に刻もうとしている。
「来年も一緒に見ようね」美月が言った。
「約束する」拓海は答えた。
人生がどんなに不確実でも、どんなに困難でも、この瞬間を共有できる人がいる。それだけで、明日への希望を抱くことができる。
花火のように短い人生だからこそ、美しい。
そんなことを思いながら、二人は夜道を歩いて帰った。心の中に、まだ花火の残像が輝いている。
「ありがとう」
拓海は小さくつぶやいた。この出会いに、この瞬間に、そして明日への希望に。
#songtostory
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HANABI
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yumi🫧𓂃𓈒𓏸
HANABIの選曲もすき[すき] 素敵な夏の終わりの花火を ありがとう[ハート]
yjk☁️
自分の人生に大した意味も実感も持ててなくて、そこにはいつも虚無感がダラリと横たわっている。 だけど、君と一緒に見た花火の煌めき、ふと横を見ると眩しく彩られた君の横顔があった。 なんてことはない。 いつもの見慣れた顔だよ。 だけど、今日はどこか特別な気がしたんだ。 この特別を、また来年も感じたい。 それだけは……なんの根拠もないくせに、確かな実感を伴っていたんだ。