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わんわん
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『待てコラ』
第四話
俺はしばらく呆然としてから、周りを伺った。
みんなもぽかーんとしたり、苦笑いしたりしていた。
「おっさん! なかなか良かったでぇ〜!!」
和歌山ヤンキーの声だけが、室内に響き渡った。
季節は巡る。
冷たい北風の吹くある夜、俺は広島ヤンキーに呼ばれて、部屋に行った。
彼の部屋は広い。
グランドピアノが置いてあり、その横のちゃぶ台の上にカセットコンロと鍋が用意されていた。
そしてその鍋を、6人の男たちが囲んでいる。
全員知った顔で、和歌山ヤンキーもいた。
広島ヤンキーが、冷蔵庫から何やら取り出した。
「実家から鴨が送られてきたけぇ、鴨鍋じゃあ!」
学生の俺たちに、鴨鍋なんてものを食べる機会はそうそうない。
俺たちは我先に、火が通ったかも分からない鴨肉を奪い合うように口に放り込んだ。
ーー後に遊びに行って分かるのだが、彼の実家は名家だった。
ムキムキの祖父が、その地域に強い影響力を持っているようだった。
ちょっとした名所の滝も所有していたから驚きだ。
鴨鍋の残りをつつきながら、酒盛りになった。
俺は、少し飲んだだけで真っ赤な顔になった広島ヤンキーに、この際だと思って聞いてみた。
「先輩、めっちゃピアノ上手じゃないですか。
クラシックばかり熱心に弾いてますよね。
卒業後はピアニストですか?」
彼は、ちょっとうつむいて小声で言う。
「ワシは、作曲家になるんじゃ」
隣にいた和歌山ヤンキーが、でかい声で言う。
「おっさんは、小室ファミリー作りたいんよなぁ!?」
こ、小室ファミリー!?
俺は、一昔前にJ-POP界で幅をきかせていた軍団を思い出した。
「安室奈美恵とか、TRFとかの……?」
和歌山ヤンキーはニヤリと口のはしを上げた。
「おっさんはなぁ、こう見えて、ギャルが大好きやからなぁーー!!」
「ギャ、ギャル!?」
広島ヤンキーの顔を見ると、酒のせいなのか耳まで赤くなっていた。
他の先輩が笑う。
「そいつはさ、作曲で有名になって、ギャルたちをプロデュースしたいんだ〜!」
それを聞いた広島ヤンキーは真っ赤な顔のまま、机の引き出しからサングラスを取り出した。
その夜、広島ヤンキーがサングラスを外すことは1度もなかった。
#連載小説
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広島さんぴゅあじゃん[穏やか] 夢見るぴゅあさん[星] 夢は叶ったのかなぁ…☆
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ヤンキーだけどピアノが弾けて作曲志望、色々ギャップがあり過ぎて逆に魅力的だわ[大笑い]
まひろ
TRFって僕が子供の頃、親がよく聴いてました!! 懐かしー😆 先輩、キャラいいっすね!!