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わんわん

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連載小説です。1話からどうぞ。

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最終話


明人は、そっとスマホを見た。

『9月10日 0:08』

夏希のDLの日付。

「ねえ、私が消えた後……。もう一人の私を探して欲しいな」

夏希は、真剣な目で明人を見上げた。

「もし、もう一人の私が悲しそうだったら、明人くん、ピアノを聴いてあげて……?」

明人は少しの間、黒い波が白い砂をさらっていくのを見ていた。

そして、嘘をついた。

「……うん。約束するよ。必ずもう一人の君を見つける」

夏希はそっと、明人の肩に頭をあずけた。

「良かった……。安心したら、なんだか眠くなってきちゃった……」

明人は、夏希の頭をそっと撫でた。

「ゆっくり寝るといいよ。もし怖い夢を見ても、目が覚めたときに、僕は隣りにいる。夏希の最後まで、必ず一緒にいるから……!」

夏希が少しふわっとした声で言う。

「私、明人くんと過ごした1週間、本当に幸せだったよ……。怖い事もあったけど、楽しい事もたくさんあった……」

夏希のまぶたが、震えながら閉じられた。

「……きっと、……このための、過去だったん……だ……」

満月はやがて、波にきらめく光の道を伸ばした。

それは二人を静かな世界へ誘うような、ひそやかな祈りのように……。


『秋のカブトムシ』 完

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