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わんわん
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第5話
「どうして鶴見高原なの?」
高速を降りて、流れていくまばらな民家の明かりを横目に、俺は聞いた。
うつむいて黙り込むことはの顔は、長い髪に隠されていた。
しばらくして、彼女は小さな声で言った。
「子供の頃、一度だけ、お父さんに連れて行ってもらったの。真っ暗で、星がたくさん見えたの……」
それを聞いて、俺は大切なものを忘れてる事に気がついた。
「懐中電灯、持ってきてない! ことは、持ってる?」
彼女は首を横に振った。
俺はカーナビを操作して、付近のコンビニを探した。
しかし、もうすぐ高原に差し掛かる道に、コンビニはなかった。
「 ねえ、あのお店!」
ことはが指差す先に、ぽつんと看板の明かりが見えた。
『ファンシーショップ・ナナ』
しかし、ファンシーショップに懐中電灯は売っていなかった。
明かりになりそうなものは、アロマキャンドルだけだ。
仕方なく、俺はハートの形をしたベルガモットの香りのキャンドルとライターを購入した。
再び、車を走らせた。
山道を登り、空に完全な夜の帳が下りた頃、俺たちはようやく鶴見高原へ到着した。
周辺は森のように木々が茂っていたが、少し行けば高原があるようだ。
路肩に車を停めた。
車を降りた瞬間、季節外れの涼しい風が頬をなでた。
周囲は目をつぶったような暗闇だった。
買ってきたアロマキャンドルに灯りをともす。
黄色い光とともに、ふわりと柑橘系の香りが広がった。
「なんだか場違いな香りね」
言葉とは裏腹に、楽しそうにこのはは笑った。
俺たちは、ろうそくの火と共に揺れ動く影に少し怯えて身を寄せ合いながら、木々が生い茂る高原への道を歩いた。
しばらく歩くと、突然、視界が広がった。
はるか遠方に見える山まで、見渡す限り低木や岩が続いている。
そしてその上に、まるで宇宙が落っこちてきたような星空が広がっていた。
#ペルセウス座流星群の夏
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適当な番号を通知して掛けてくるサービスがあった気がする。

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