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わんわん
『一片の雪』
第9話
「西川 栞……? 有名なのかい?」
「いえ……。昔、ちょっとテレビで見かけた事があって……」
「ふ〜ん」
高橋は、丸眼鏡の奥の少し充血した目で、俺の顔を覗き込んだ。
「……ま、いいや。今日のお礼も兼ねて、少し調べてみるよ」
それから2週間ほど後、いつものバーで高橋と会った。
彼は俺の顔を見るなり、隣の席へ移動してきた。
「久しぶりだね。この前の西川 栞って子、調べたよ」
俺が礼を言うと、高橋は表情を曇らせて、握ったグラスを見つめた。
「……ただね。彼女のファンなら、聞かないほうがいいかもしれない……。それでも聞くかい?」
俺の頭に、地下鉄のホームで見た、痩せた栞の姿が浮かんだ。
……これを聞けば、きっと俺は、聞く前の自分には戻れないのだろう。
スキャパの12年を注文した。
オークニー島の断崖絶壁の蒸留所で冷たい潮風を浴びながら熟成されるシングルモルトウイスキーだ。
もう後には引けない俺にふさわしい酒のような気がした。
「……お願いします」
高橋はスマホを取り出し、画面を見た。
そして、話しはじめた。
俺の知らない、栞のことを……。
ーーー
彼女のデビューは、13歳の時だ。
この地方では大きい事務所に、スカウトで入った。
すぐに事務所は、ローカル番組出演やドラマのエキストラ出演に動いた。
しかし今ひとつ華がなかったのか、同期が引き上げられる中、新人に混じっての仕事が続いたようだ。
精力的に色々なオーディションを受けるが、大役は得ることはなかったようだ……。
17歳の時、事務所は3人組のアイドルグループを結成して、西川 栞も抜てきした。
……まあ、俺だから分かるが、これはセンターの子の引き立て役だ。
現にセンターの子は、後にこの事務所の稼ぎ頭のソロアーティストになった。……そういう道筋があらかじめ決まっていたんだろうな。
高校卒業後は、タレント一本に絞ったようだが……。
小さい役ばかりでは当然食っていけない。アルバイトをしながらの生活だろうな。
そして彼女が20歳の時だ。
その歳で芽が出ていない彼女は、事務所を移された。
移されたというより……、売られたんだ。
そして彼女は、名前を変えて……、
……AVデビューした。
#一片の雪
#連載小説

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作品ごとに良さあるけども

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回せるつちゃ回せるけど うーむ

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✧𝕋𝔸𝕄𝔸𝔾𝕆͙٭͙✧
ぁぁぁあああああ😭つらいヤツ… 前にね、憧れのジムトレーナーの人がめっちゃ良いAV男優のバイト見つけたって言ってきて、心が折れた事ある😭
いるるʚ♡ɞ
えぇ…(இдஇ`) 栞ちゃん…
わち
んん…。なくはない…。んんんん…。そういうね…。はいはい……。 ( ´བ` )
リス🐿
いちばんなって欲しくない道だったんだぁ🥲
むーみん🍡
あぁ………(>﹏<。)