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わんわん
『一片の雪』
第5話
『トドノネオオワタムシ。
雪虫も呼ばれ、日本では東北地方や北海道を中心に生息する。
成虫は口がなく、寿命は一週間ほどしかない』
ーーその後、俺と栞は歩きながら、さっきの不思議な虫について話し合った。
二人共、あんな妖精のような虫を見たことがなかったのだ。
虫の話が尽きた時、俺は聞いてみた。
「……なんで、テレビに出るようになったの?」
栞はしばらく無言だったが、やがて口を開いた。
「はじめはね……、街でスカウトされたんだ。
名刺を渡された。私は目立つ事なんかしたくなかったんだけど、家に帰って話したら、なぜか母親がすっかりその気になっちゃって……」
俺は思いきって言った。
「き、君は、可愛いからね……!?」
栞は、フッと微笑んだ。
きっと言われ慣れているのだろう。そんな様子だった。
「私よりもかわいい子が、ほんとうにいっぱいいるから……。でも、ありがとう。わんわん君にそう言ってもらえるなら、自信が持てる」
それは、なぜか少し寂しそうに聞こえた。
「あ、ここが私の家……」
栞が立ち止まった。
建ち並ぶ大きなマンションに囲まれた、日の当たらない古いアパート。それが栞の家だった。
到着したが、家に入らず俺の横にじっとたたずむ栞。
俺は、ゲームや音楽の事なんかを話した。
栞は、年相応に男性アイドルグループが好きなようだった。
俺はそのグループの曲で、好きな歌があったので、その話をした。栞もその曲が特に好きなようだったので、嬉しかった。
ゆっくりと、影が伸び、あたりは暗くなっていく。
「そろそろ帰らなきゃ……」
栞はそう言ったが、やはりその場を動かない。
俺は言った。
「また今度、一緒に帰ろうね!?」
栞は嬉しそうにうなずくと、薄暗いアパートへ入っていった。
俺はそれを見送り、帰路についた。
正体不明の幸せが、俺の胸に次々と湧き上がった。
……大人になった今でも思う。
あの気持ちが味わいたくて、俺たちは恋に落ちるんじゃないかと……。
俺は、走り出したい気持ちを抑えて、早足で歩く。
まるで、スターをとって、無敵になった気分だった。
……この時の俺はまだ知らない。
雪虫の寿命のように、すぐに二人に別れがやってくる事を……。
#一片の雪
#連載小説

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えー…どうなっちゃうんだろう…(´;Д;)
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栞はお家帰るのいやなのかなぁ。 大好きな彼ともっと一緒にいたいとは ちょいとちがうにおい…😎 おかわり🍚!
わち
|゚Д゚`)。o(縄文ドキ弥生ドキ)
✧𝕋𝔸𝕄𝔸𝔾𝕆͙٭͙✧
やっぱり悲しい話やぁああああ(°̴̥̥̥̥̃♜°̴̥̥̥̥̃ ) そんな気がしてた…儚さとフワフワの合間の恋がしゅてきでしゅ…🤞🏻
レモン