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わんわん
『一片の雪』
第4話
中学3年の11月半ば。
俺は生まれてはじめて、彼女と呼べる人と一緒に学校から帰っている……!
彼女は俺から微妙に距離を置き、うつむいて歩いている。
俺も、盛り上がる話題など思いつくわけもなく、ただ黙って歩いていた。
彼女の家は学校から歩いて20分くらいかかるらしいが、すでに沈黙のまま5分が経過していた。
……何か、話しかけなければ!!
今思えば本当にどうしようもないが……。
なんとこの時、中3の俺が会話を広めるためにひらめいたのは、彼女に兄弟がいるかどうかを聞こう、ということだった。
俺は満を持して口を開いた。
「あ、あのさ……!」
彼女は立ち止まり、俺のほうを向いた。
その時だ。
彼女の視線が空中をとらえた。
「え……? 雪……?」
「えっ……!?」
彼女の視線の先を追う。
古い寺の生け垣の片隅。
そこに小さな白い雪が、一片だけ漂っていた。
それは、暖かい空気の中をふわりふわりと舞った後、吸い込まれるように俺の制服の胸に張り付いた。
「……!!」
一片の雪は、なぜか溶けることがない様子だ。
栞が歩み寄り、俺の胸元を覗き込んだ。
彼女のサラサラの長い髪から、花のようないい香りがした。
「 え……? これなに……!?」
栞は、俺の胸に顔をうずめるように言う。
俺は思わず身を引いた。
そして胸についた、白い雪を見る。
ふわふわとした小さな雪。
それには2枚の薄い羽が生えていた。
そして雪を背負うように、小さな身体があった。
「……え!? 虫……!?」
栞が驚いた表情で、それを見つめた。
……それから20年近く経つが、俺は今でも、その時の彼女の顔を明確に思い出すことができる。
柔らかそうな丸い頬に1つだけできた、小さなニキビ。
夕日が彼女の節目がちな目に落とした、長いまつ毛の影の数さえも。
その時、中3の俺の中に不意に湧き上がった感情。
それは「この美しい子が俺のことを好きでいてくれるなら、俺はその美しさを全力で守らなければならない」という、使命感に似たものだった。
「あっ……!」
栞が小さく声をあげる。
雪を背負った虫が、再び俺の胸から飛び立った時、
……俺は恋に落ちたのだ。
#一片の雪
#連載小説

コメント
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さよぬ

すとれ

飴色🐿
静と動を一枚一枚から
伝わって来る
音を奏でるお二人のお姿が
幻想的でもあり美しさもあって
本当こんな素敵な場所での
二人編成のライブを拝見した方が
羨ましいです
お写真から伝わって来る
お二人の誠実さもとっても
素敵です✨️

あいじ

やす

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mamy
直ちにタイムリープしたい✨🏫🏃🏼♀️
✧𝕋𝔸𝕄𝔸𝔾𝕆͙٭͙✧
号泣した😭
わち
(*´罒`*) ニヤニヤ(*´罒`*) ニヤニヤ(*´罒`*) ニヤニヤ
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すてき[照れる]
リス🐿
ごめん💦昨日うっかり見逃してた( ;ᯅ; ) なんかさ、美しいものだったりすると 写真の1ページのように記憶に残ってるものだよね[穏やか] わんわんの中3は好奇心旺盛な悪ガキでなく ぴゅあだったんだね🤲✨