運送会社の所長は知っていた。そのトラックのエアブレーキに、致命的な亀裂が入っていることを。修理をすれば、時間も金もかかる。彼は、天秤にかけた。利益と、運転手の命を。そして、冷酷にも運転手に出発を命じた。「神戸まで、このまま走れ」と。

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かいくんち

2025/12/24

運送会社の所長は知っていた。そのトラックのエアブレーキに、致命的な亀裂が入っていることを。修理をすれば、時間も金もかかる。彼は、天秤にかけた。利益と、運転手の命を。そして、冷酷にも運転手に出発を命じた。「神戸まで、このまま走れ」と。

運転手は、何も知らずにハンドルを握った。街が活気づく昼下がり、下り坂に差しかかったその時、悪夢は現実となる。ブレーキペダルが、何の抵抗もなく床まで沈み込んだのだ。

制御を失ったトラックは、もはや鉄の塊と化した凶器だった。運転手は必死にクラクションを鳴らし続け、縁石や並木に車体をこすりつけて、暴走を止めようと試みる。しかし、巨大な車体は止まらない。その先には、横断歩道を渡る人々の姿があった。

絶望的な状況の中、彼は最後の決断を下す。

自らの命と引き換えに、見ず知らずの誰かの命を救うことを。

彼は、最後の力を振り絞ってハンドルを川に向けた。轟音と共に水しぶきが上がり、トラックは川へと転落。この事故で失われたのは、多くの人々を守り抜いた、運転手ただ一人の尊い命だった。

しかし、この悲劇はまだ終わらない。法廷に立たされた所長は、自らの罪を認めず、全ての責任を亡き運転手になすりつけようとしたのだ。

だが、真実は一つだった。裁判の末、所長には禁錮1年4ヶ月の有罪判決が下された。

多くの命を救うため、自らの命を懸けてハンドルを切った運転手。彼の最後の決断は、ただの事故ではなく、一人の人間が成し遂げた、あまりにも気高い英雄的行為として、人々の記憶に刻まれることとなった。

運転手なんて！幾らでも居るわい！と言う社長が一人でも減ると良いなぁ🥺シモハナもそう言う会社だったなぁ💦