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░モジバケ░永そ哀

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「星々の舌が生まれるとき」

真新しい宇宙の言葉を 濡れた喉で飲み込む

「はじめに言葉ありき」

と誰かが書いた
だがその言葉を最初に喰らったのは
神ではなく沈黙だった
沈黙は光を孕み
光は名を欲しがり
名は支配を覚え
支配は祈りを偽装した
やがて銀河は文法を編み
星々は句読点となり
人は詩を吐きながら滅びを綴る

言葉が宇宙を創ったのではない
宇宙が言葉を産んだのだ
そして 今も私たちは神の口の中で
発音を待つ欠けた音節にすぎない
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░モジバケ░永そ哀

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「咬合する魂」一白き歯の神話

鏡の中白く光るものが笑う
それは幸福の象徴か
それとも 均質化された微笑の仮面か
人は食む 世界を 言葉を 他者の温度を 
咀嚼とは理解 
噛み砕くとは存在を己の中に取り込むこと

だが
甘い思想を噛みしめすぎて
歯茎は疼き 神経は悲鳴を上げる
「真理を噛むには痛みが伴う」と
誰が最初に言ったのだろう
白い歯を誇る文明は痛みを漂白し
腐蝕を恥と呼んだ
だが 虫歯とは思想の熟成
痛みとは魂がまだ生きている証
矯正器具に縛られた笑顔の裏で
自由は整列し均等に磨かれていく
「美しい歯並びですね」
その言葉がどれほど歪んだ社会の象徴かを
誰も知らない 抜かれた歯は問う
「完全とは欠けることのないことか?」
義歯が答える
「いや 失われた部分を 偽りで満たす勇気だ」
そして鏡の奥で微笑む影が囁く
「白さを求めるほど魂は透けてゆく
     美しさを均すほど痛みは形を失う」
嗚呼
咬合とは調和の名をした戦争だ
上と下がせめぎ合い
理性と欲望が歯車のように軋む
それでも我々は噛む
世界を 思想を 他者を その痛みの中にしか
"生きている”という実感は宿らないから

そして夜明け
一本の歯が枕の上に落ちる
それは老いではなく一つの哲学が
抜け落ちた音だった
歯とは存在を噛みしめるための刃
白く光るたび我らはまた問う

「この笑顔は本当に自由か?」
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