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おにぎり

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溺れる深海魚⑤

へたり込む私を、ルアは面倒くさそうに抱きしめた。

ルア「……お前のこと、大切なのは本当だよ。」

その言葉は優しいようで、どこまでも残酷だった。

胸の奥で何かがひび割れ、崩れ落ちていく。

やがて、ルアは私をソファに座らせ、タバコに火をつけた。

ルア「とりあえず落ち着けよ。な?
 今度さ、どっか旅行でも行こうぜ。
 気分転換にもなるし」

そう言いながら、スマホで別の誰かに返信している。
画面に反射した光が、タバコの煙をぼんやり照らす。

(もういないんだ……あのときのルアは)

かつて眩しくて、真っ直ぐで、夢を追いかけていた彼はもういなかった。
目の前にいるのは、ただ“現実という波に飲まれたルア”だ。

目の前が真っ暗になりかけたその時、視界の端にキラリと光るナイフに目が止まる。

そして私は小さく息を吸い、
心の中で――いや、ほとんど声に出すように呟いた。

「……バイバイ、ルア」

彼は気づかない。
煙の向こうの画面を見つめたままだ。

私はかつて見た夢に溺れた。

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