オリジナル短編小説『不在の存在』 第1章(1)
はじめに
※本文はあえて冗長な反復表現を多用しています。
その文学的意義や解釈は読者に委ねます。
-第1章(1)-
969C97A288EA8BF3ーーそれはこの響像界の中で一つの/存在/として認識されているものの名称であり、名前というよりも識別符号に近いものである。
この符号は現実世界での個体識別とは異なり、特定の意味や意図を持たない。
ただの記号として/存在/し、響像界の中で969C97A288EA8BF3はその符号で識別される。
彼、またはそれと呼べる/存在/は明確な形を持たない曖昧な影のような/存在/であり、その実体は霧の中に溶け込んでいるかのようにぼんやりとしている。
969C97A288EA8BF3が/存在/する響像界は物質もエネルギーも否定される異次元の領域である。
全てのものは揺れ動き、固定されるものは何一つとして存在しない。
969C97A288EA8BF3と同様の「影」たちが一時的に現れては消えていくのみである。
それらは存在と非存在の狭間で生まれ、ほんの一瞬だけ形を取る/存在/として漂っている。
この世界を漂う影たちは現実世界における物質的な実体とは無縁であり、形を持たずにただ揺らぎの中で生じ、また消えていく。
969C97A288EA8BF3という影も同様に、定まらない形のまま漂う/存在/であった。
彼は存在と非存在が交差する瞬間にのみ現れる、曖昧で不安定な/存在/に過ぎなかった。
我々の世界で物質の存在が定義される際、その存在作用が双対数次元、超双対数次元にまで浸透し、存在流を形成する。
この非常に不安定で曖昧な存在流はこの異界を満たし、この響像界の全てを形作っている。
影たちは物質的な実体を実現し得ないこの次元の中で存在流によって一時的に生み出され、その流れに身を任せて漂うのである。


