二週間の入院生活を経てまず求めるのは、栄養価や味覚刺激の強さではなく、「日常の回復」を象徴する一口です。私にとってそれは、平凡な湯気を立てる白飯と味噌汁でしょう。なぜなら、病院食の均質で機能的な味覚に慣らされた後、もっとも豊かな快楽は「凡庸さの再発見」にあります。日常の食卓は一見取るに足らないものですが、失われて初めてその重力に気づく。つまり最初に食べたいものは「ごちそう」ではなく「普通」であり、その「普通」こそが人間存在を支える基盤だからです。