【お題】ショートショートを執筆せよ
「母さんがまた人間のエサを買ってきた。」という冒頭から作成
ジャンル不問・AI使用可

晴

ななこ
台所のテーブルの上に、透明なパックに入ったそれをどん、と置く。
「今日は安かったのよ」
母さんは得意げだ。
パックの中では、人間が三匹、ぎゅうぎゅうに詰められていた。サラリーマン風のやつと、学生っぽいやつと、あとスーツケースを抱えた女の人。どれも小さくて、手のひらサイズだ。
「ちゃんと新鮮なの?」と僕は聞く。
「もちろんよ。ほら、この子なんてまだ動いてる」
母さんが指さすと、サラリーマンがパックの中で必死に叫んでいた。でも声は小さすぎて、こちらにはほとんど聞こえない。
「いただきます」
僕が一匹つまもうとしたその時、部屋の電球がぱっと点滅した。
そして、カチャン、と玄関の鍵が回る音がした。
「父さん帰ってきた?」
と思った瞬間、玄関のドアが開いた。入ってきたのは父さんじゃない。黒い影がするりと廊下を歩いてきた。
ネコだ。
うちのネコは普通じゃない。ものすごくでかい。僕の腰くらいまである。名前はミケ。
ミケはテーブルの上のパックを見つけると、目を輝かせた。
「あっ」
僕と母さんが同時に声を出した時にはもう遅い。ミケは前足でパックをひっくり返し、人間たちをぺろりと三匹まとめて飲み込んでしまった。
「もう!ミケ!」母さんが怒る。
ミケは満足そうにゴロゴロ喉を鳴らした。
その時、パックの底に小さな紙が貼ってあるのに気づいた。
僕はそれを拾い上げる。
「なにそれ?」母さんが聞く。
紙にはこう書いてあった。
――本商品は観賞用の人間です。食用ではありません。
さらに小さく、
――食べた場合、体内で成長する可能性があります。
僕と母さんは同時にミケを見た。
ミケの腹が、ぽこっ、と動いた。
その瞬間、ミケの口から小さな声が聞こえた。
「…こちら機内アナウンスです。まもなく当機は着陸体勢に入ります」
僕は固まった。
ミケのお腹がまた動く。
中から、ゴゴゴ…という音。
次の瞬間。
ミケの口から、小さな飛行機が飛び出した。
翼の先には、さっきのサラリーマンがしがみついている。
天井の電球にぶつかり、電球が割れた。
暗闇の中で、母さんがぽつりと言った。
「…やっぱり安売りの人間はダメね。」

