「火星夜想曲」イアン・マクドナルド、古沢嘉通訳(ハヤカワ文庫)長編とは書いてあるが連作短編~掌編くらい。火星に作られた開拓町の話なんだが、発売当時紹介されたようにマジックリアリズムとかブラッドベリ「火星年代記」オマージュとかの要素が色濃く、SFファンも幻想文学ファンにも楽しめる。そしてこの魅力を最高に引き出しているのが古沢嘉通先生の圧倒的に華麗な訳文だ。詩の訳でもここまでのはそうそう見かけんぞ。何か書きたい側の人は読んどいて損は無い。
「かめくん」北野勇作(河出文庫)こちらは緊張感が全く無いゆるゆるな文章で、カメに似せて作られた謎の生き物(?)レプリカメ、かめくんの穏やかな生活を綴った作品。途中から出始める何だか不穏な単語が作中世界の情勢を少しずつ仄めかして行くが、緊張感ではなくどこか遠くのもの悲しい雰囲気として伝わるのは、このゆるゆるな文章の力だろうなあ、やっぱり。