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ていへん

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姉は昔からよく「死ね」という言葉を用いた。

道徳を重んじる母とはそりがあわなくて、母を「偽善者」と嫌って早々に家を出て行った。

30代になってもそれは変わらなかったのだけれど、つい最近、姉がしょっちゅう惚気ていた夫が癌で余命宣告を受けた。

それからというもの、姉は「死ね」という言葉を使わなくなって、逆に死という言葉にとても敏感になった。

自分の大切な人がそれになって初めて、自分が何を言っていたのか気づいたらしい。
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ていへん

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姉の夫が癌で余命宣告を受けた。

姉もその夫もまだ30代前半で、マイホームと犬を買ったばかりだった。

姉は元々忙しい人だったけど、夫の面会やら何やらで忙しくなって、まだ飼い始めてまもない生後4ヶ月の子犬を見る余裕がなくなってしまった。

だけど大好きな人の余命宣告を受け、心も体もボロボロな姉にとってその子犬は心の支えで、どうしても手放したくなかったから、姉は実家に頼ることにしたらしい。

父と母には申し訳ないから、妹の私に一緒に住んでほしいと頼んできた。

私は最初とてもやんわり断った。

私は躁鬱の精神科病院通いだった。

犬の鳴き声はパニックを起こしそうになるくらい苦手だし、

頻繁に理由もないのによくわからない涙が出て来て座り込んで立てなくなることがあるし、

風呂キャンも部屋を荒らすのも常習犯で、正直人様の家だろうが平気で感情的にものをひっくり返す。

姉みたいに大切な人が余命宣告を受けたわけでもないのに、この世で1番辛いみたいな顔をしている自分が、姉と住めると思わなかった。

そもそも私と姉はあまり性格が合わなくて、昔からモラハラ気質なところがある姉は正直苦手だった。

だけど母の電話越しに聞こえてくる姉の声は泣いていて、とても私みたいなただ被害者ヅラしてるだけの女が断れるものではなかったから、結局同居の話を受けることにした。

そして1週間が経過し、私はすでに帰りたい。

犬は小型犬で鳴き声が頭が痛くなるほどうるさい。しかも生え揃っていない歯がかゆいのか、ギザギザの歯で力いっぱい噛みついてくる。

姉には申し訳ないが何がかわいいのか全くわからない。

1人になるのが嫌らしく、私が読書をしたくて1人で部屋に篭っているとすごい声で鳴く。うるさい。だから仕方なく家にいる時はずっとリビングにいる。

自分よりよほど辛い状況にいる人の前で辛い顔なんてできないから、ずっと常人のふりをしている。

漫画やアニメとかでよく「自分より辛い人がいたら守ってあげなきゃって強くなれる」みたいなシーン出てくるけど、私はいつまでたってもそれになれる気がしない。

どんなに同情することがあっても、

姉のことは苦手だし、
犬は嫌いだし、
私の心は変わらず余裕がないし

早く実家に帰りたい。
でもそれは姉の夫の死を意味するわけで。

本当に私って自分のことばかりで最低だなと思いしらされる日々。
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