
折衷庵
羽束の短歌置き場です。
短歌

折衷庵
声しか掛けれず
不甲斐なく
三十一文字に
想い託して

折衷庵
眺め脳裏に
過る君
同じ色の
空を見れたら

折衷庵
過ぎたるものが
二つあり
柏の紋と
かなし吾妹子

折衷庵
悲愁に向かず
明くる年
浅き夢見じ
地に足をつけ

折衷庵
寝ぼけた声で
おはようと
嬉しや何にも
代えがたき朝

折衷庵

折衷庵
頬をば撫でて
過ごす秋
正に逢う日に
相応しきかな

折衷庵
遅れて見ゆる
かの花よ
逢う日は近く
また遠くとも

折衷庵
秋の夜長を
持て余す
寝るには早く
することもなく

折衷庵
内より出づる
詫び言よ
我より他なら
斯様にならずも

折衷庵
かたじけなくも
恐れ入り
ただただひとえ
勘気を憂う

折衷庵
惰性で進めど
後が無く
前にも行けず
後ろに退けず

折衷庵
思いはすれど
意思弱く
目先の楽しみ
縋る哀れよ

折衷庵
言葉を交わすは
良かれども
我がおらずば
気を遣わせまいに

折衷庵
掲げた大義は
我のため
独り善がりの
心配に酔う

折衷庵
切れるカードも
多くなく
減る手札をば
空しく眺める

折衷庵
戯れて放つも
甲斐も無く
空散る言の葉
聞く者もなし

折衷庵
昇る朝暉が
なかりせば
現のままに
見えしものの

折衷庵
悔いに怯えて
流す酒
澱みも深く
浮かぶ瀬もなし

折衷庵
長く伸びたる
影二つ
追えど消え去る
追憶の君

折衷庵
追うて追われて
疲れはて
心底乞わん
黄泉比良坂

折衷庵
八十の思慕をば
胸に秘め
あの日あの時
たられば思う

折衷庵
追うべきながら
目を背け
甘美な言い訳
重ねる夜に

折衷庵
夏の火鉢と
なりしとも
捨てぬ仁慈に
ひたすら謝する

折衷庵
二人で食べた
名物が
名を変え時を経
思い出うすれ

折衷庵
誰が主役か
この人生
喝采よりも
カーテンコールを

折衷庵
願ったけれど
割けた仲
私が変わった?
あなたが変わった?

折衷庵
傾け向かう
霧の中
現(うつつ)を厭い
意識手放す

折衷庵
海のようにと
ままならず
波になれずに
凪にもなれず

折衷庵
甲斐なく出でて
存らえて
無為の畢生
幕引きを乞う

折衷庵
潮(うしお)が如く
ものぞかし
駆け引き寄せ引き
恋を請いて

折衷庵
仕草に呆れ
笑う君
空掻く指先
居ぬ君浮かべ

折衷庵
などは一つも
世には無し
この人も人
あの人も人

折衷庵
恋うか恋わんか
計りかね
ただひたすらに
流るる雲間

折衷庵
恨みもあらじ
今はただ
雲間に見ゆる
月こそ待たん

折衷庵
手酌であおる
酒器一つ
よぎる後悔
胃に流し込み

折衷庵
付けずに「たら」「れば」
繰り返し
振らぬ賽の目
怯える愚か

折衷庵
首をくくるか
決まらずに
前を見据えず
今日も惰性で

折衷庵
浮かぶ面影
掛けるべき
言葉も未だ出ず
追憶の君

折衷庵
麗らか浴びて
君と見ゆ
幾年(いくとせ)越えて
桜を共に

折衷庵
