開ける
誰もがこう言っているようだ。「キンモクセイを買って酒を携えたいが、若気の至りではない」。しかし皆忘れている。「もう遅いと言ってはいけない、空にはまだ雲が満ちている。人生はまだ長く、それぞれの道程にそれぞれの景色がある。20歳で物事を終わらせなくても、30歳で終わらせても構わない。朝に花を摘んで夕方に摘むのは無意味だと思っても、それは問題ではない。人生は天と地の間にあり、白馬が隙間を通り抜けるように
音楽
料理
猫
犬
散歩
旅行
開ける
パリでは詐欺師に50ユーロ騙し取られ、ケニアでは屋台の店主とGoogle翻訳を使って言い合いをし、フィンランドのガソリンスタンドでコインを数えてホットドッグを買ったとき、ふと思い出した。子どもの頃、“世界一周”のあとには必ず“おとぎ話のような”という言葉が続くものだと信じていたことを。
若いうちは失敗が許されると言われるけど、誰も教えてくれなかった。
その“失敗”は肌の下に刻まれるタトゥーのようなもので、消えはしない。
でも、物語として語れば、お金になるかもしれないってことも。
モルディブのビーチで代理購入の企画書を書き、ノルウェーのホステルのトイレでプランを修正し、サハラ砂漠の星空の下でクライアントのメールに返信した。
友人は「それってデジタルノマドの自由だね」と言うけれど、実のところ“自由”とは、オフィスを粉々にして、時差のあるコーヒーカップの中にばらまくことなのかもしれない。
先月、タンザニアの小さなバーで、酔っ払ったドイツ人のおじいさんにこう聞かれた。
「20代で一番贅沢なことって、何だと思う?」
彼の答えを聞いて、飲んでいたテキーラをカウンターに吹き出してしまった。
――「堂々と時間を無駄にする権利さ。」
でも、私の20代はその“時間”を必死に集めている。
飛行機の遅延で生まれた4時間、両替の端数でもらった硬貨、
「せっかくだし」と言って飛び込んだ衝動と、「そんなもんか」と悟る落胆。
人は私のSNSの位置情報を羨ましがるけど、
ヘルシンキの雪の中、安宿を探してバックパックを背負って歩いたことも、
モンテネグロで悪徳ホストに150ユーロ騙し取られたことも、知らない。
そんな“間違った選択”は、やがて有料コラムの「失敗しないためのアドバイス」になり、
飲み会の場で目を輝かせて聞かれる冒険談になっていった。
25歳の今、私の人生は猫にひっかかれた毛糸玉のようにぐちゃぐちゃだ。
でも少なくとも、このごちゃごちゃは、私が自分で稼いだユーロ、ドル、バーツで一つ一つ紡いできたものだ。
ベッドに寝転んで、ふと気づいた。
「わかる」と「わからない」の間にあるものなんて、
きっと“いつでも変更できる航空券”一枚だけなのかもしれない。

開ける


開ける



開ける

