
ちはやふる

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91. きりぎりす鳴くや霜夜のさむしろにころもかた敷きひとりかも寝む

ちはやふる
92. わが袖は潮ひに見えぬ沖の石の人こそ知らね乾(かわ)くまもなし

ちはやふる
93. よのなかは常にもがもななぎさ漕ぐあまのを舟の綱手かなしも

ちはやふる
94. み吉野の山の秋風さ夜ふけてふるさと寒くころも打つなり

ちはやふる
95. おほけなくうき世の民におほふかなわが立つそまに墨染の袖

ちはやふる
96. 花(はな)さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり

ちはやふる
97. 来ぬ人をまつほの浦の夕なぎにやくやもしほの身もこがれつつ

ちはやふる
98. 風そよぐならの小川の夕暮はみそぎぞ夏のしるしなりける

ちはやふる
99. 人も惜し人も恨めしあぢきなく世を思ふゆゑにもの思ふ身は

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100.ももしきや古き軒ばの忍ぶにもなほあまりある昔なりけり
