#オリジナル創作 第一章《生存確率12%と、笑顔の少女》目を覚ましたとき、俺は自分が「詰んでいる」と理解した。理由は単純だ。見知らぬ石造りの天井、冷たい床の感触、そして――《生存確率:12%》そんな文字が、視界の端に浮かんでいたからだ。「……は?」声に出してみるが、誰も答えない。手を振っても、目をこすっても、数字は消えなかった。夢にしてはリアルすぎる。かといって、現実として受け入れるには情報が足りなさすぎる。「異世界転生、ってやつか……?」呟いた瞬間、数字が微かに揺れた。《精神安定率:+3%》「……感情に反応するタイプかよ」どうやらこの世界では、俺の思考や行動が、数値として“見える”らしい。試しに立ち上がろうとすると、《転倒確率:31%》動きを止めると、《転倒確率:6%》「なるほど……」この能力――未来を確定させるものじゃない。ただ、“起こりうる可能性”を可視化しているだけだ。だが、最初に表示された《生存確率:12%》だけは消えない。つまり俺は、このままだと、近いうちに死ぬ。理由を探すため、俺は部屋の外へ向かった。古い木の扉に手をかけた瞬間、《発見確率:74%》《敵対遭遇確率:61%》「……嫌な予感しかしない」だが、ここに留まっても確率は上がらない。覚悟を決め、扉を開けた。薄暗い石畳の通路。揺れる松明の光。そして――剣を持った男と、目が合った。《敵意:確定》《交戦時生存確率:3%》「即死コースじゃねぇか!」男は迷いなく剣を構え、こちらへ踏み込んでくる。逃げ道を探すと、視界に三つの選択肢が浮かんだ。右の通路:《3%》左の階段:《8%》正面突破:《12%》「……正面が一番マシって、どんなクソゲーだよ」だが、迷っている暇はない。俺は歯を食いしばり、男に向かって走った。剣が振り下ろされる。《回避成功率:46%》体をひねる。刃が肩をかすめ、熱い痛みが走った。《生存確率:14%》――上がった。男の表情が、一瞬だけ歪む。《相手の油断発生率:59%》俺は足元の石を蹴り上げ、砂埃を舞わせた。《成功率:72%》男が目を伏せた隙に、俺は横をすり抜け、全力で走った。階段を駆け下り、角を曲がり、息が切れるまで逃げ続ける。物陰に身を潜めた数秒後、《追跡継続確率:5%》……助かった。膝に手をつき、荒い呼吸を繰り返す。《生存確率:26%》「……生き延びただけで倍になるとか、基準どうなってんだ」そのときだった。背後から、軽い足音。《背後接近:検知》《敵意:――不明》反射的に振り向く。そこにいたのは――剣を持った少女だった。年は俺と同じくらい。淡い金髪をポニーテールにまとめ、軽装の旅装束。そして何より、にこっと、太陽みたいに明るく笑った。「わぁ! 本当にいた!ねえねえ、あなた異世界人でしょ?」《敵意:0%》《危険度:測定不能》「……は?」突然すぎて、頭が追いつかない。少女は俺の反応など気にせず、ぐっと距離を詰めてくる。「だって服が変だもん!それにさっき、あの衛兵から逃げ切ったでしょ?普通じゃないよ!」《好奇心:高》《信頼度:初期値》(……やけに察しがいい)俺が警戒していると、少女はくるりと一回転して、胸を張った。「わたしはリリア!職業は――まあ、冒険者ってことで!」その笑顔は、無邪気そのものだった。《表層感情:純粋》《――――》一瞬だけ、表示が乱れる。(……今、何か隠れたな?)俺が違和感を覚えた瞬間、リリアは声を潜めた。「ここ、長居しないほうがいいよ。さっきの衛兵、仲間呼ぶタイプだから」《予測一致率:91%》――当たっている。ただの明るい少女にしては、判断が早すぎる。「……なんでそこまで分かる?」俺が問うと、リリアは少しだけ目を伏せ、すぐに笑顔を作った。「勘、かな?」《虚偽率:42%》(嘘ではないけど、真実でもない)その笑顔の奥に、別の顔がある。確信めいたものが、胸に刺さる。リリアは手を差し出した。「ね、取引しよ?あなたは多分、この世界で一人じゃ生きられない」《否定時生存確率:18%》《受諾時生存確率:41%》「……条件は?」俺が聞くと、彼女は楽しそうに笑った。「簡単!わたしはあなたを守る。その代わり――」一瞬だけ、瞳が冷たく光る。「あなたの“その力”、必要なときは、全部わたしに教えて?」《裏条件存在:確定》――この少女、危険だ。明るくて、優しくて、天真爛漫。でもその奥に、確実に“闇”がある。それでも。《同行拒否時:死亡フラグ発生率 上昇》《同行時:未知の運命分岐》俺は、彼女の手を取った。「……分かった」リリアは、満面の笑みを浮かべた。「決まりだね!じゃあ生き残ろう、異世界人くん!」こうして俺は、笑顔の策士と手を組み、最悪を避け続ける異世界生活を始めることになった。――この選択が、救いになるのか、破滅への近道なのか。その答えは、まだ数字にも表示されていない。最後までご視聴いただきありがとうございました。