きゅー
学生,24歳。
合唱と League of Legends が好き。
趣味は詩を書くこと。
一応数学の人
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詩
きゅー
きゅー
酒だ!
「これは疲れに効く酒だ!」
呑み干して言う。
「これは風邪に効く酒だ!」
咳き込みながら言う。
「これは喉に効く酒だ」
大声を出しながら
「これは歌に効く酒だ」
陽気に唄いながら
「これは心に効く酒だ」
俯きながら
「これは眠気に効く酒だ」
少しうとうとしながら
彼がどんな一日を送ってきたのか
不平の一つも言わないから
ただ酔い潰れるのを見守るしかないのだ
きゅー
私は元気に歌っている
眠くなんかないですよ
私はどっぷり考えている
飽きてなんかないですよ
私はじっくり感じている
嗤ってなんかないですよ
私は微笑ましくにこやかです
ただ少し、ぶっきらぼうな顔をしているだけ
きゅー
きゅー
きゅー
きゅー
きゅー
きゅー
幸せの重みであれば
私は泥になるまで働いて
幸せになれるのです
いいえ、
この 瞼の重みが
幸せの重みになるまで
私は泥に塗れて働きます
きゅー
部屋に置いてある昨日の残りのカレー
明日の七時起き
軽やかなる憂いを
スキップで飛び越えていけば
楽しい明日が待っている……といいな
きゅー
そしてまた
忘れることもないでしょう
何万年も
何億年も
真っ暗な星空で何よりも明るく照らし
この冷たい世界で誰よりも青く
そしてあたたかかった
きゅー
シリウス
お前のことを どうして知ることができよう、
その冷たい輝きの熱さを
触ることのできない私の手で
その冷たい輝きの強さを
見ることのできない私の目で
その冷たい輝きの恐ろしさを
心から信じてしまった私の心で
星よ、暗い星よ
シリウス
お前はまるで愛しいあの人のようだ
仄かな光しか感じられない
その遠く遠くで 青白く煌めいている
きゅー
きゅー
いつも目が醒めた夢をみている
きゅー
空の青が明るく翔ける
きゅー
かあっ、と晴れて
ざあっ、と雨降る
それはまるで昼夜のようだ
毎朝日が昇り
必ず夜が来る
それはまるで歴史のようだ
栄枯盛衰が
あっという間に過ぎ去っていく
それはまるで料理のようだ
煮詰まって味が出て
胃に収まって無に帰した
それはまるで音楽のようだ
予定調和を崩す
その音を待ち遠しく待つ
それはまるで未来のようだ
いつでも気分屋で
揺れ動いている
それは私の心
それはまさに人生だ
それだけが人生だ
きゅー
張り叫ぶことはできない
もやもやとした不安の中に
痛みを見つけることができない
それは霧のように晴れ
また夕立よりも突然現れる
やがて色褪せ
音楽を奪い去り
厚い手袋をはめさせる
その恐怖に
私は震えることさえできない
それは夢のように醒め
また夢のように襲い掛かる
きゅー
いつか空へと吸われて往くか
きゅー
また燦々と明るかった
そして颯爽と通り過ぎてしまった
あの夏に私は戻れない
あの夏の記憶は
少しずつ掌から解けていき
段々とその蒼を増す山々のように
本当に蒼くなってしまった
あの夏は再びはやってこない
遠き蒼に決して近づくことができない
きゅー
きゅー
きゅー
七夕は
天女と牛飼いの熱に冒され
夏日はギラギラと頬を膨らます
暑いな、暑いな
七夕は
天女と牛飼いの汗にまみれ
雲はせっせと蒸し風呂をつくる
これは彼らの情熱で
これは彼らの想いの丈か
嗚呼!そんなことはどうでもいい!
傍若な清涼の寝床を寄越せ!
牛飼いの牛を乗っ取って
涼しげな天の川のほとりを駆け回り
天女の編んだ布を引き千切って
星の川のせせらぎを横に眠るのだ
きゅー
きゅー
そこに激昂はあってならぬ
怒れ、人よ
そこに爆発はあってならぬ
怒れ、人よ
そして畏れよ、遍く
人智を超越した報復を
怒れ、人よ
沸々と煮え滾れ
そして決して破裂してはならぬ
怒れ、人よ
脳裏に血腥い姿を灼きつけ
今にも理性を脱ぎ捨てようとする
怒れ、人よ
しかし、けれども決して手を上げてはならぬ
声を荒らげてもならぬ
罵ることもあってはならぬ
怒れ、人よ
水面のように静かに
その下に潜む世界の安寧を歓べ
きゅー
私は愛の話がしたいのだ
たとえば、木々のさざめきに耳を澄ますこと
たとえば、蚊を叩く前の一瞬の躊躇い
たとえば、恋
たとえば、友情
季節の変わり目を言葉にすること
言葉にならないことを知ること
怒りに身を任せてぶたないこと
挨拶、礼節
アスファルトから滲み出た歴史
火、電気、水、先人達の努力
記念日のケーキ
拍手、声援、花束
未来のこと
過去のこと
辛いこと
嬉しいこと
今のことーー
それは美しいものを愛でること
それは美しさを見出すこと
愛の話をしよう
愛に満ちた話をしよう
きゅー
それはたくさんの水の粒の連なり
地に落ちて、弾け飛び、
バラバラになった
みんなそれぞれ道を下って、
奥底で出逢うのだ
井戸水となって汲み上げられた、
一滴の水
それはたくさんの水の粒の連なり
喉元の一瞬の冷たさとともに
通り過ぎていく
胃に落ちて、掻き混ぜられ、
バラバラになった
みんなそれぞれ道を歩んで、
同じ血潮に呑まれるのだ
私の中に流れる、
一滴の水
それはたくさんの水の粒の連なり
きゅー
ふわふわといい気分になる
楽しいその輪に飛び込むよりも
蕩けている今に抗えない
ここは快楽の沼なのだ
愛しているよ、人々を
ただ遠く、まぶたの向こうから
届かぬ愛を、投げつけるのだ
夢の向こうに……
きゅー
そこで苦しみは濯われるだろう
そして川になり
ときには泥だらけになり
遠くに流れていくだろう
悲しみの歌に傘はいらない
灰色の空を仰ぐ
その悲しみは心地よいものだ
輪郭は滲み
雨になる
川になる
泥だらけになる
そして静かに流れていく
きゅー
その実どこかに往ったり来たり
石の上にはいなかったが
しかし三年経った
私の中に三年分の石ができた
蹴飛ばすような小石か
吐き出したくなるような砂利かもしれない
掛け替えのない宝石か
持ち上がらないほど大きな石かもしれない
言葉遊びのように
固い意志なのかもしれない
どんな石かは知れずとも
これからずっと
背負っていく石なのだろう
きゅー
爽やかな酸味を愉しむが良い
包み込むような芳醇を愛でるが良い
コーヒーは午過ぎに
目醒しい力を感じさせる
あれは南米の高野で戦った人々
コーヒーは夜の味がする
落ち着き払った苦味の中に
抑えきれない興奮の気配がある
きゅー
今日も夜に眠るだろう
人は、昼間の喧騒を忘れ去るように
太陽は、地の底で明日の熱を湧き立たせ
明日という鮮やかな一日に向かうだろう
だが、海は眠らぬ
山は、むしろ活き活きとその蠢きを増すのだ
空を震わせ、地を鳴らし、
私の胸の奥にまでやってくる
つい、その声に耳を澄ましてしまうのだ
そうして眠れぬ夜はやってくる
おやすみ
朝日が夜の蠢きを鎮める
一日で一番静かな時間ーー
烏骨鶏の先唱に
続けて歌い出す朝鳥たち
舞い戻りつつある喧騒を背に
今日も私は眠るだろう
きゅー
為されるままに生きてゆきたい
きゅー
快晴の空を仰ぐ気持ち
イエローの気持ち
爽やかなレモンの香り
ヴァイオレット
道端に生きる可憐
ゴールドな気持ち
稲穂が輝いている
グレーな気持ち
雨に打たれる清々しさ
レッドな気持ち
むしろ、紅な気持ち
グリーンな気持ち
そして、ブラウンの幹
ピンクな気持ち
隠された濃密な恋
ブルーな気持ち
大海原を駆け回りたくなる気持ち
きゅー
止め処なく流れる言葉の渦に
身を任せてしまったがばかりに
苦悩も讃美も欲望も哀愁も
その手紙一つに人生さえ詰め込む勢いで
ただ一言の愛と、
ただ一言の気遣いだけあればそれで十分だった
けれどもあの恋文はきっと字余りだった
今となっては知る由もないけれどーー
この朝は エスプレッソ、春だね
きゅー
「春だもの〜🎶」
きゅー
バラもツツジもスイセンも
新鮮な面持ちをした文字の並びは
アークトゥルス
新顔をニューフェイスと言い
問題のことをイシューと
鼻高に言ってみるのだ
春とはそういうシーズンだ
痛いくらい若々しく
キザなセリフで嘯いてみる
「ニュアンスとは猫のようにしなやかだと
シュレーディンガーは言いたかったのでは?」
カタカナを音にしてみよう
フレッシュなハーモニーが
胸の鼓動でダンスする
春はやっぱりカタカナだ
きゅー
すれ違う人々は肌を見せ
スーパーにはレタスが並んだ
ふいに胸が鳴る
春は本当に高揚だった!
鼻歌が野原を駆けていく
ツツジ、たんぽぽ、ハナミズキ
次から次へと見つかる花々が
私の声に呼応している
きゅー
ふと人集りに立ち寄って
街中の演説を聴いてみる
シャキッとスーツを着て
真面目な顔で仕事をする
凝った料理を作ってみて
塩加減にハラハラする
そのとき以外はずっと
猫背で穏やかに笑っている
きゅー
カーテンのひらひらから
八重歯の隙間から
コンクリートの割れ目から
一瞬の休符から
飛び出してくる
きゅー
エスプレッソ、とぼやくのです
きゅー
深遠なる海よ
それは本で知った砂漠のように
ただ何もない青が広がっているだけ
私は決して知ることができない
深遠なる海の底に
どんな光が渦巻いているのか
静かに目を瞑って考える
瞼の裏を旅する
私は冒険家
ひたすらに闇を漕いで
その海を進んでいく
きゅー
半袖で涼しそうな青年
ワンピースの少女
全ての空気がのどかに流れる
風吹く寒さから解放され
せっせと照り始めた太陽も休む
酒を呷るか
甘味を頬張るか
私も少し肌を見せ
温いお茶でも淹れようか
きゅー
きゅー
無垢な灰色
それは無知という罪であり、
未熟という名の原石だった
知は灰色を喰い
秘めたる色を暴き出す
その断罪は色鮮やかだろう
恋は熟成であって
油絵のような灰色
仮面のように濃く塗り固められるだろう
苦悩は湧き上がる焔
静かに、震えることもなく
だが割り砕いてしまうほどの熱さだろう!
原石は、磨いてはならぬ
霧のように胎動している様を
決して見逃してもならぬ
蟲たちの
音もなく、しかし愛なる大地を割る
ぼこぼこという萌芽を、ひたすらに待て!
さもなくば、
さもなくば、——
すっきりと透き通った穢れ
無垢な漆黒
それは諦めのような悟りであり
ガラスの夜空のようである
きゅー
無垢な灰色
それは無知という罪であり
未熟という名の原石だった
原石は、磨いてはならぬ
霧のように胎動している様を
決して見逃してもならぬ
音もなく、しかし大地を割る
ぼこぼこという萌芽をひたすらに待て
さもなくば、
さもなくば、
すっきりと透き通った穢れ
無垢な漆黒
それは諦めのような悟りであり
ガラスの夜空のようである
