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アロマテラピー
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一人一人がそれぞれ
あたたかい場所に帰っていく


一人一人が胸の内で
あたたかいものを想像して歩く


それが不思議な具合いに
外気に影響するのだ


街全体になんとなく
あたたかい気分がただよう




  江國香織✨
  「ユトリロの色」

🕊️💗🕊️💗🕊️💗🕊️💗🕊️💗🕊️

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心の深いところに触れた人は


一生会えなくても
心の片隅に居座る


命の期限まで
二人で見た景色を忘れない


もう一度だけ会えたら


そんな我儘を
胸にしまってまた日常に戻る


心の中で揺蕩う人を抱きしめながら
みんな生きてる




   Payao✨

💜🌿💜🌿💜🌿💜🌿💜🌿💜🌿

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私の作品じゃなくても
ふと見た景色や鳥のさえずりや


好きな歌 それらにふっと
顔がほころぶ日があったなら


それはきっと
あなたの中の何かが響いて


すべてを眩しく
見せているんだろう


世界が美しく見えるのは
あなたが美しいからだ




 最果タヒ✨
「夜空はいつでも最高密度の青色だ」

🪩💙🩵🪩💙🩵🪩💙🩵🪩💙🩵🪩

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大きな黄いろな月が
しずかにのぼってくるのでした


そして雲が青く光るときは
変に白っぽく見え


桃いろに光るときは
何かわらっているように見えるのでした





  宮沢賢治✨
「グスコーブドリの伝記」

🌝🤍🌝🤍🌝🤍🌝🤍🌝🤍🌝🤍

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息苦しい現実の裏側の
きらきらしたもう一つの世界


誰もがその存在を知っている


風邪の高熱に苦しんだ後で
熱が引いてゆくとき


世界は軽やかで美しい


ライブを観終わった直後の興奮の中で
生きることは自由で熱い


恋の始まりのとき
私たちは炭酸の泡に包まれているようだ




    穂村弘✨

🪩❇️🪩❇️🪩❇️🪩❇️🪩❇️🪩❇️

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誰にどう裏切られても


最後まで誠実でいることを
諦めない人は美しい


誰にどう傷つけられても


優しさを手放さないと
決めた人は強い


信じたいものを信じ抜くと
決めた人は尊い


いつかあなたの誠実が
あなたを救うことになるよ




  Payao✨

🕊️⚜️🕊️⚜️🕊️⚜️🕊️⚜️🕊️⚜️

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私たちは流転のなかにいるのだから

きっと雲が晴れるようにそこここでことばは欠け

ことばの意味もあちこちで欠けて
風が入ってくるはずだ

その風について精確に書き記すことができたら

もしかしてそれは詩なのかもしれない


大崎清夏✨
「意味の明晰な欠け方について」

💜🍃💜🍃💜🍃💜🍃💜🍃💜🍃
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秋という字の下に心をつけて


『愁』と読ませるのは
誰がそうしたのか


いみじくも考えたと思う


まことにもの想う人は
季節の移りかわりを


敏感に感ずるなかにも


わけていわゆる秋のけはいの
立ちそめるのを


ひと一倍
しみじみと感ずることであろう





  織田作之助✨
  「秋の暈」

🍂💜🍂💜🍂💜🍂💜🍂💜🍂

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本当に心を支えるのは
優しい言葉でも温もりでもなく


自分の心を
奪ってくれるものだと思う


それに触れるだけで
モノクロの日々から色を取り戻せる
鼓動のような熱源


生きる理由であり
静かに命を揺らすもの





    Payao✨

💞🤍💞🤍💞🤍💞🤍💞🤍💞🤍

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人は花がしぼみ
葉が落ちるのを見るが


実が熟し
新しい芽がめばえるのも見る


人生は
生きているものに属する


そして生きているものは変化に対する
覚悟を持っていなければならない





 ゲーテ✨
「ヴィルヘルム・マイスターの遍歴時代」

🍂🕊️🍂🕊️🍂🕊️🍂🕊️🍂🕊️🍂🕊️🍂🕊️

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お月さまがとっても好きだ
どんな形でも美しい


でも一番好きなのは
半月になるちょっと前


切り口から蜜が
したたっているように見えるとき





  角野栄子✨
  「月が好き」

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💜りんどうをお気に入りの
花瓶に活けていた時


小さな炎のような
形だなとふと思った


小さなそして青みを帯びた炎
すなわち種火である


りんどうが種火なら
やがて点火されて


この秋はどんなふうに
燃えていくのだろう




   俵万智✨
   「竜胆」

💜🌿💜🌿💜🌿💜🌿💜🌿💜

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🌜私は昔から
月の光をあびると元気がでてしまう


しーんと気持ちが冴えかえるのだ


私は深呼吸を一つした


空気が水を含んでいるので
夜はまるで海の底のようだ





  江國香織✨
  「ぬるい眠り」

🌜🤍🌜🤍🌜🤍🌜🤍🌜🤍🌜🤍

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🪩秋の空が青く美しいという 
ただそれだけで 


なにかしらいいことが
ありそうな気のする 


そんなときはないか


空高く噴き上げては 
むなしく地に落ちる噴水の水も 


わびしく梢をはなれる
一枚の落ち葉さえ 


なにかしら喜びに
踊っているように見える 


そんなときが





   黒田三郎✨
  「ある日ある時」

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🌝皓皓と明るい月光の
漲る空間に身を置くとき


人は放心することしかできない


月光とは人を放心状態に引きずりこむ
至高の導体なのである




   松浦寿輝✨
   「月と放心」

🌝🌉🌝🌉🌝🌉🌝🌉🌝🌉🌝🌉

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⚜️目の前にいなくても


その人がいると思うだけで
幸せになれる


そんな
「その人」がいるのは幸せだ





  谷川俊太郎✨
  「幸せについて」

⚜️🪩⚜️🪩⚜️🪩⚜️🪩⚜️🪩⚜️🪩

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🍂秋って一年における
やはり薄暮であるのだな


誰彼の区別がつかなくなってゆく
黄昏のこの季節


誰かと誰かの記憶と感情が
分かちがたく溶けあって


自分がどこにいるのか
あやうくなるね






  川上未映子✨
 「ダッフルは誰の思い出?」

🍂💜🍂💜🍂💜🍂💜🍂💜🍂💜

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GRAVITY12
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🌳彼らはわたしに思いださせる 


とても遠くまできてしまったことを 


戻る場所などもうないことを 


いくつもの十一月が 


一列になって行進してくる


彼らはまるで冬木立のようだ





  江國香織✨
 「いくつもの十一月が」

🌳🍂🌳🍂🌳🍂🌳🍂🌳🍂🌳🍂

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🍃「いつか」は
来てはならない


「夢が終わってしまうとき」
なのだ


だから日本人の
「いつか一緒にごはん食べましょう」は


「またいつか会いましょう」
の意味なのだ


「いつかごはん」は
先送りされ続ける約束だ





   九螺ささら✨
   「いつか」

🍃🤍🍃🤍🍃🤍🍃🤍🍃🤍🍃🤍

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💝いまは忙しいから
面倒だから


生活が
あるからといって


未遂に終わった
やさしさの透明な気配が


わたしたちの
暮らしを取り巻いている


あーあ だから
誰かのやさしさにふれたとき


まずはその希少さに
驚きうれしくなるのだ





向坂くじら✨
「やさしさ」

💝🕊️💝🕊️💝🕊️💝🕊️💝🕊️💝🕊️

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⚜️本当に美しい人は
人を見下したり怒鳴ったり


そういう一瞬で自分の価値が
下がることを知っている


だから感情のまま悪口を言わない


丁寧でいることを諦めない


人には言葉にできない
痛みがあることを知ってる


美しさは知性




   Payao✨

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⚜️曇り空の下へと踏み出すと
秋の匂いがした



秋の匂いって
いったい何の匂いなんだろうと
わたしはぼんやり思う



乾いていてわずかに香ばしくて
少し悲しい匂い





  川上弘美✨
  「ハッカ」

🍂⚜️🍂⚜️🍂⚜️🍂⚜️🍂⚜️🍂⚜️

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🍁一つ一つが
おそろしいほど精細な 


すべてのかけらの
いっさい間然するところのない
集合が秋なのだ


一つ一つの
うつくしいかけらがつくる
秋のうつくしさ


もしも誰かに
平和とは何かと訊かれたら
秋のうつくしさと答えたい





  長田弘
 「いちばん静かな秋」

🍁💜🍁💜🍁💜🍁💜🍁💜🍁

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💞私は私だったから
この人が好きになった


そしてそれこそが
その人への最大の愛情だと思う


私の歩んできた人生の全てが
その瞬間の感情の伏線になっている


永遠や絶対を約束するより
それは私だけの本当になる





 最果タヒ✨
「全ての出会いが最良のタイミング」

💞🤍💞🤍💞🤍💞🤍💞🤍💞🤍💞
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🕊️感情が豊かで物事に感じやすいことは
人間の最も人間らしい心です

その心は秋という季節に触れ
浸ることによって澄み深められます

秋の示す微妙で複雑な様相は人間の多感多情の一つひとつに適した姿です


与謝野晶子✨
「泥土自像」

🕊️💗🕊️💗🕊️💗🕊️💗🕊️💗🕊️💗
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💝吾亦紅(われもこう)が
庭であかくなると


秋がそこに
すわっているみたい


実のような花は
「吾も亦(また)紅いのよ」と
ちいさな声でつぶやく


そして
「吾も亦 恋う」と告白して
赤くなっているような感じもする





  おーなり由子✨
  「ひらがな暦」

💝🕊️💝🕊️💝🕊️💝🕊️💝🕊️💝🕊️💝

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🌱人それぞれの
ペースがあるから焦らないこと


出会う時は出会うし
別れる時は別れる



愛せる時は愛せるし
泣く時は泣く


人生は
駆け抜けなくてもいい


ただ今日を
丁寧に生きればいいよ





   Payao✨

🌱💞🌱💞🌱💞🌱💞🌱💞🌱💞

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満月はすべてを満たされて
空に光を放っていた


その光景 時が止まるような
神々しさに息も止まるような


満月になったら
あとは欠けていくだけと


堂々と天に鎮座しているあの月も
恐らく知っているのだろう


その不安を見せないように
一点の翳りもないように


欠けていく運命を背負いながら
微塵もそんな素振りなく


今夜だけは
かっこつけさせて!




  新恒杏子✨
  「満月」


🌝✨🌝✨🌝✨🌝✨🌝✨🌝✨

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🌝『中秋の月』 蘇 東坡


暮雲収まり尽くして清寒溢る

銀漢声無く玉盤を転ず

此の生此の夜 
長しえに好からず

明月明年 
何れの処にか看ん




【詩の意味】

夕暮れの雲は跡かたもなく清々しい
冷気が夜空に満ちている

天の川は音もなく玉の皿のような月を
天上にめぐらせている

限りあるわが生涯
いつまでもこのような素晴らしい
明月の夜に会えるとは限らない

この明月のすばらしさを明年は
どこで観ることであろうか


🌝✨🌝✨🌝✨🌝✨🌝✨🌝✨
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🌉がまんできない
暑さの長さはたしかにあったのに 


蟻とともに 
いつもの年のように去った季節 


さよならといえる季節は
いつも夏だけだなと思いながら 


涼しい夜の闇をみる
ねむれないからねむらずに





   北村太郎✨
   「秋のうた」

🌉🍃🌉🍃🌉🍃🌉🍃🌉🍃🌉

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🍇つなぎあって分かれないと
思い込んでいたこの手 


もつれあってほどけないと
思い込んでいたこの手 


果実は時がきたら 
自然と落ちるものだと 


あの人は知っていたのだ 
いつの時もはじめから






  銀色夏生
  「秋の実の落ちる音」

🍐🍇🍐🍇🍐🍇🍐🍇🍐🍇🍐🍇

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💜十月はやさしくて甘い


山の湖のやうに空が碧く澄んで
薔薇の花に思ひ出の匂ひがある


月は一段高い道を渡り星はしきりに
瞬たいて人の心に呼びかける


太陽は遠くから照らして
天国の気温でものを暖める





   堀口大學✨
   「十月の言葉」

🪩💜🪩💜🪩💜🪩💜🪩💜🪩

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🎹夜空から
ピアノの音が降ったので 


高い方の
音をひろいました 


氷と一緒に
グラスに入れて 


ジャスミン茶を注いだら 


小さな白い花が咲いて 


聞き覚えのある
メロディを奏でました




  三倉理恵✨
   「hole」

🎹🎶🎹🎶🎹🎶🎹🎶🎹🎶🎹

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🕊️そう 物語


ほんとうの世界は
ただの断片からなっているだけで


見渡すことなど
なかなかできないはずなのに


ぼくたちはみんな
その断片をつなぎあわせて


自分のためのお話をいつも
作りあげているんじゃないかな





  川上弘美✨
  「三度目の恋」

🕊️🍃🕊️🍃🕊️🍃🕊️🍃🕊️🍃🕊️🍃

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🌳人間は歩き回る樹木である
枝は自己主張である


親しい者同士身近な者同士ほど
互いに傷つくことの多いのは


親しい度合が
深ければ深いほど


枝と枝とが余儀なく
交差するからだと私は思う





   吉野弘✨

🌳🌲🌳🌲🌳🌲🌳🌲🌳🌲🌳

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🍃扉に閂(かんぬき)を落とすように
夏はぱたりと終わる


あ 吹く風に秋が混じった
となればその瞬間


たとえば足先のペディキュアの
色がにわかに浮き上がって映る





   平松洋子✨
   「指」

🍃💜🍃💜🍃💜🍃💜🍃💜🍃💜

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🌬️夏はどんな瞳も


全部溶けはじめの
氷みたいで


涙のすべてが
意味をなさない


どこかで気温が
下がるたび


誰かが
泣いていると思う


知らない誰かが
呼んでくれる秋を


ぼくは愛している





  最果タヒ
  「残暑の詩」

🌬️🍃🌬️🍃🌬️🍃🌬️🍃🌬️🍃🌬️

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💗心から信頼できる友達が
一人いればいいし



読み返す本が十冊あればいいし



いつも聞く音楽が
百曲あれば人生は豊かだと思う



無理して
人を好きにならなくても



無理して
話を合わせなくていいんだと思う



人生の荷物は少ないほどいい





    Payao✨

🕊️💗🕊️💗🕊️💗🕊️💗🕊️💗🕊️💗

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🩷あしたがあるということは
勿論言われなくても
わかってはいるのだが


それでもまっすぐにそう言われると
改めてしみじみ嬉しくなる


安心するのだと思う
『またあしたね』 


なんて幸福な言葉
あしたも会えるということ





   江國香織✨
   「日々の言葉」

🩷🤍🩷🤍🩷🤍🩷🤍🩷🤍🩷🤍

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📕あなたがわたしを
見つけてくれたとき決めたのです


あなたに読まれるときだけ
わたしは生きていこうと


ページを手繰る手のひらの熱が 
一杯の赤ワインのように
この身体に染み渡っていく


ひそやかに読み上げてください
わたしの示す文字の一つ一つを




   文月悠光✨
   「主人公」

📕🔖📕🔖📕🔖📕🔖📕🔖📕🔖

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🪩私たちは生きている


どれだけ終わりが近づいてきても
哀しいほどに生きている


明日も鉄の塊で街を走ろう


行きたい場所にたどりつけるまで


そこはきっと
火星よりも木星よりも遠いのだ





  三浦しをん✨
  「たどりつくまで」

🪩☄️🪩☄️🪩☄️🪩☄️🪩☄️🪩☄️

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🪩あなたの人生が
かけがえのないように


あなたの知らない人生も
またかけがえがない


人を愛するということは
知らない人生を知るということだ






  灰谷健次郎✨
 「ひとりぼっちの動物園」

🪩💗🪩💗🪩💗🪩💗🪩💗🪩💗

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🌬️はなれたぶんだけ 
わすれられなくなるものたちと 
朽ちてゆけばいい


しおかぜ 
おもくぬれたすな 


ひえたままのゆびさき 
くちにしなかったことば 


ちかづくあまぐも
まどがらすをつたうすいてき 


まっちをするにおい 
きつくとじたまぶた





   峯澤典子✨
   「いちまいの」

🌬️🌿🌬️🌿🌬️🌿🌬️🌿🌬️🌿🌬️

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🌿庭は悲しみにくれ
冷たく花の中に雨が沈み落ちる

 
夏は身震いする
静かに最期の時に向かって


黄金色に一枚一枚
葉が滴り落ちる
高いアカシアの木から


夏は驚いて力なく
死に行く庭の夢に微笑みかける


さらに長いことバラのそばに
夏はとどまり休みたいと願う
 

ゆっくりと夏は
眠くなった目を閉じるのだ





  ヘルマン・ヘッセ✨
  「九月」


🤍🌿🤍🌿🤍🌿🤍🌿🤍🌿🕊️🌿

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🌬️すきかもしれないと 
つぶやいた日のきみのまなざし
 

ジャムの瓶に
閉じ込めておけばよかった


夏という夏をよせあつめ 
花束にしてきみにあげる




   吉川彩子✨
   「晩夏」

🌬️💐🌬️💐🌬️💐🌬️💐🌬️💐🌬️

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🕊️自分の意見や本音を
伝えられる人が褒められがちだけど


心の奥に想いを抱えながら
今日を乗り切った人だって偉いと思う


無言は無傷じゃない


誰も褒めてくれないけど


心の傷も言えなかった言葉達も
中々咲かない夢も


全部抱えて生きるなんて
大変よくできました





   Payao✨

🕊️⚜️🕊️⚜️🕊️⚜️🕊️⚜️🕊️⚜️🕊️⚜️

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🌊九月の海には
祭りのあとの寂しさがある


ビーチパラソル・浮き輪・かき氷…


カラフルな夏の装飾品を
とりはらった海


モノトーンの海
夏の喧騒がかすかに残る耳


それを洗い流すように
聞こえてくるのは


ただ波の音である





   俵万智✨
   「九月の海」

🌊🤍🌊🤍🌊🤍🌊🤍🌊🤍🌊🤍

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🌳木という字を
一つ書きました 


一本じゃ
かわいそうだからと思って


もう一本ならべると
林という字になりました 


淋しいという字を
じっと見ていると 


二本の木がなぜ
涙ぐんでいるのかよくわかる 


ほんとに愛しはじめたときにだけ 
淋しさが訪れるのです






   寺山修司
  「ダイアモンド」

🌳💙🌳💙🌳💙🌳💙🌳💙🌳💙

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🌉どこからがきみのもので 


どこからが
ぼくのものだったのか 


今となってはわからない
希望と絶望 


夜空の下で
百万冊の本が閉じられても


夜明け前には
一編の物語が幕を開ける





  吉川彩子✨
  「おやすみ ぼくの…」

🌉🤍🌉🤍🌉🤍🌉🤍🌉🤍🌉

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🕊️あなたに伝えることができるのなら
それは悲しみではありはしない


鶏頭が風にゆれるのを
黙ってみている

 
あなたの横で泣けるのなら
それは悲しみではありはしない


あの波音はくり返す波音は
私の心の老いてゆく音
 
 
悲しみはいつも私にとって
見知らぬ感情なのだ


あなたのせいではない
私のせいでもない




  谷川俊太郎✨
  「九月のうた」

🤍🌿🤍🌿🤍🌿🤍🌿🤍🌿🤍🌿

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