『夏祭り(花火大会)』近所の河川敷で夏祭り。歩道に数々の屋台が並び、祭りを楽しみにして来た人々がお目当てのものが無いかと歩き回る。浴衣着る若いカップル、甚平を着て母親と手を繋いで歩く子供、学校帰りに寄ったのであろう制服姿の学生たち……。どの人もこれから始まるメインイベントに向けてそれぞれ綺麗に見える場所を確保したり、それまでの間腹を満たすため屋台に並んだりする。そんな中、河川敷から遠く離れた公園に幼なじみと花火が上がるのを待っている。「コウ、今年も来ちゃったね」幼なじみが声をかける。僕はそうだなっと返事すると、また話しかける。「もう15年もこの場所で見てるけど、本当に誰も来ないね。私とコウの穴場」幼なじみはそう言うと、買ってきた焼きそばとお好み焼きを取り出す。「コウ、どっち食べる?」幼なじみの問に僕は焼きそばを指差す。でも幼なじみが手にしたのはお好み焼き。「コウ……。1人で来るのはこれで最後にするね」幼なじみがそう言って僕はやっと思い出す。5年前、僕は不慮の事故でこの世から去った。しかも幼なじみの目の前で……。「コウ、私この街を離れて、都会の小さな会社に就職するの。このお祭りも今年で最後になりそう。……コウ、ありがとう」僕は幼なじみの肩にもたれかかる。時が止まった僕と大人になった幼なじみ。身長は変わらないけど、綺麗になった幼なじみを僕は心の中で応援している。