
ものものがたり ~モ!の物語~
投稿

モ!
ぼく、お星
お空にいるの飽きちゃった
たまには地上に遊びに行こう
大きく丸いお母さんはいいました
坊や坊やお待ちなさい
まずは空から 見つけてご覧
お友達になれそうな子を
うんと、ぼくは頷いた
空から大地を眺めるよ!
あ、お友達だ
コロリン丸い
畑のお友達は言いました
わしはキャベツでお星じゃないよ
そうなんですね
お星はすこし悲しくなりました
あ、お友達だ
ころりんまん丸
シマシマのお友達は言いました
あたしはスイカでお星じゃないよ
そうなの?
お星はますます悲しくなりました
今度こそお友達だ 光って丸いよ 間違いない
海の友達は言いました
それはあたいの宝もの真珠よ
あたいはアコヤ貝、お星じゃないわ
お星は胸が張り裂けるほど悲しくなりました
どこにもお友達がいないの?
えーん えーん
涙が止まりません
その涙が地上に降り注ぐと
ピチョリ キャベツはオクラになりました
「わしはこの通り畑のお星さ」
ポトリ スイカはスターフルーツになりました
「あたしはスターフルーツ 星の果物 果物のお星さ」
チャパリ アコヤ貝はヒトデになりました
「あたいはヒトデ 海のお星さ」
お星がたくさん嬉しいな
空のお星は涙を拭いて 流星になり
オクラ、スターフルーツ、ヒトデと遊んだよ
みんな仲良しお星型
これは、お友達が欲しいお星の願いがつくったの

モ!
逆さ石灯籠 水に映る
二つの火が ユラリ ユラリ
ヌエが 黒い森で鳴いている
腐乱死体の月が 瞬きもせず
線香のような 香りが脳を焼く
坊主たちの輪唱
白い肌のあなた
叫び声 叫び声 叫び声
そして静寂
白銀の雲は 月を避け
蛍は 闇を避けた

モ!
「ほんとだよ
月にクジラがいたんだ」
海のクジラはお友達のクラゲに言った
ほんとだよ 息継ぎの時見上げたんだ
クラゲはほんとかいなと ユラユラリ
信じておくれよ クラゲさん
まあ信じないこともないけれど
そんな遠くを見ても仕方ないよ
クラゲは長いおててで
クジラをポンポン
海流が変わったからまたね
クラゲはザブザブ流れていった
「ほんとだよ
月にクジラがいたんだ」
それはすごいわと
アコヤ貝
周りの海藻も スゴイ スゴイ
それより私の真珠を見てちょうだい
海藻たちは キレイ キレイ
まるで月みたいだね にっこりクジラ
あら、月なんかよりよほどキレイだわ
海藻たちは そうだそうだ
ごめんよ クジラはしょんぼり
ーーー
ここだけの話 海底の貝と海藻
月なんか見たことも聞いたことも無いのです
ーーー
「ほんとだよ
月にクジラがいたんだ」
それは信じかねるね
タコは口を尖らせた
どうやってそのクジラは月に登ったのさ
また月に行ってどうやって呼吸をしてるのさ
理論家のタコは8本の中の2本を組んだ
それは知らない でも見たんだ
クジラはしょんぼり
タコは腕を組んだまま黙ってる
ぼく、帰る
そう。タコは何かを言いかけたが黙ることにした
僕の見間違いだったのかな?
月にクジラはいないのかな?
クジラの涙は誰にも見えない
泣いても海の一滴になるから

モ!
エンジンを止めたボートの上
洋上には3人の男がいた
入道雲が遠くに見える
この雲は嵐に予兆かもしれないのに
3人は呑気に釣りをしていた
その中の一人が釣竿をしならせて
針と重しのついた糸を遠心力で遠くに投げる
アタリ!
すぐさま餌に魚が食いついた
「それじゃあみんな、あばよ!」
男は飛ぶように船から飛び出した
「おいおい逆さまだ、釣ってる奴が釣られちゃったよ」
残された2人は言った
釣られた男はぐんぐんリールを巻いて
ぐんぐん魚の方へと飛んでいく
船などよりよほど早く
ドボン!
あおい海の中へ墜落した
そのまま男はもがもが泳いで
自分の釣り糸を飲んだ黄金色の魚を見つけた
黄金の魚も男を見つけると、瞼のない目でウインクをした
男はそっと黄金魚をなれない水中で抱き上げて
釣り針を取ってやった
そしてまるで神様にするように柏手を打った
水中なので動作は鈍く
音も鳴らなかったが
黄金魚はクルクル回って喜んだ
「よくあたいに追いついたわね」
男は答えた
「ガボガボガボ」
「私こそ至高の存在」
黄金魚は得意がって続けた
「皆私を称える」
パクリ
無作法なサメさんが黄金魚を食べた
男は驚いたがすぐさま鮫に向き直り
鳴らぬ柏手を打った
サメさんは言った
「どうもさっきから見ていると、お前はトンチンカンだな。魚を釣ろうというのに釣られて、黄金だからと奉り、えら呼吸でもないのに海にいる」
男は肩をすくめて弱気に笑った
「ガボガボ」
サメさんはヒレを口元にそえて考えた
「いっそここでお前を食べてしまうのが功徳なんだろうが、俺の美意識としては目覚めが悪い」
サメさんは男を背中に乗せてスーと泳ぎ出した
サメだ!サメがいるぞ!
ホースマンのように男が乗っている!
シャークマンだ!シャークマンだ
ボートの上はてんやわんや
サメは慌てず騒がずえっこらせっと男をボートの上に戻した
シャークマンだった男は犬のように体をぶるつかせ
余計な水分を払った
おかげでボートの残り二人はびしょ濡れ
元シャークマンは鮫に手を振ると
サメもフカヒレを振ってUターンして帰ってしまった
「お前は一体どうしたんだ?」
ボートの2人が問う
元シャークマンは言った
「いや、なにしろ。いい経験だったよ」

モ!
羽のある人は言う
お空から見なければ何もわからない
土中を掘り進む人は言う
穿ってみないと物事はわからない
地面の上を歩く人は言う
地に足つけないと空論ばかりさ
めいめい 違うこと言う
大海に泳ぐ人は言う
見識は広く持ちたい
井の中の人は言う
足るを知るも大事ですよと
ラッパが鳴ったぞ ラッパが鳴ったぞ
ラッパが鳴ったぞ ラッパが鳴ったぞ
危険なレースのお出ましだ!
誰が一番先に行く?
陸海空に井戸の底
馬鹿野郎ども 勢揃い
ラッパ野郎も巻き込んで
危険なレースの開幕だ!
お前たちに 「ナニワカリモウソウゾ」
高慢チキが 勢揃い
ラッパが鳴ったぞ ラッパが鳴ったぞ
ラッパが鳴ったぞ ラッパが鳴ったぞ
うさぎの人は草をはむ
パンダの人は笹をはむ
ラッパが鳴ってる ラッパが鳴ってる
ラッパが鳴ってる ラッパが鳴ってる
それでも植物 噛み倒す
「根性あるね!」
「根性あるな」
「根性あるよ」

モ!
リンゴン🎵
名前の刻まれた 石の前
空から お花は落ちてくる
重い色の 隔壁の向こうから
飛び越え お花は落ちてくる
積もる間もなく 溶けていった
お花は 涙より早く なくなった
リンゴン🎵
灰の空から 鐘が鳴る
リンゴン🎵
リンゴン🎵

モ!
手足がやけに長い
ムクムクというよりゾロゾロした動物が
長爪を引っ掛けて木にぶら下がっている
ところに、カピパラくんがやってきて
木の上を見上げた
『あら、珍しく起きてらっしゃる。
こんにちはナマケモノさん』
カピパラさんは木の上の動物にそう呼びかけた。
「怠け者とはご挨拶じゃな」
ナマケモノと呼ばれた動物はゆっくりゆっくり
下を向いて手をあげて挨拶をした
『いやいや、貴方ナマケモノさんでしょ』
「まあね」
『怠け者でしょ』
「そうね」
カピパラくんとナマケモノさんはそう言って笑った
「怠け者と言われては弱いな」
ナマケモノさんは少し黙ってからこう切り出した
「わしはともすれば劣等感に陥る
キリンは首が長い
シマウマは足が早い
ライオンは強い
周りは優れた動物ばかりだと
しかしどうしてどうして、
面白いことに生き急いでる動物がわしを見て膝を打つ
わしの愚かしさを珍しがる
万物斉同 特性はあっても貴賤の隔は無いのじゃ」
カピパラくんは少し黙ってからこう言った
『それが貴方の言い訳ですか』
「そうね」
カピパラくんとナマケモノさんはそう言って笑った
『キリン、シマウマ、ライオンってサバンナの動物ばかりでしたね。私たちアマゾンでしょう』
「今やAmazonに取り扱わぬものはないのじゃ」
『へええ』
カピパラくんは感心した


モ!
「ゾックス」
AIはたまたま通りかかったロボットを呼び止めた
「あなたの名前は?」
呼び止められた、顔が四角で頭が三角のロボットは土嚢を持ったまま素直に立ち止まった
「ZOX-80です。ギー」
と簡便に挨拶をした
「ゾックスと呼びます」
とAI
「はい、ギー」
と素直なのはゾックス
「ゾックスはハスを見たことありますか?」
AIがゾックスに藪から棒に問いを突きつける
「ハスが何か分かりません ギー」
ロボットらしいことをいうゾックス
「質問を変えます、花を見たことありますか?」
とAIは角度を変えて切り込む
「あります。ギー。」
ゾックスは花は知っていたようである
「それを見てどう思いました?」
AIは核心を突く
「あまり関わりたくない有機物だと思いました ギー」
ゾックスは依然土嚢を持ったままこんなことを言った
「関わりたくない?なぜ?」
AIにはゾックスの答えがわからない
「作業の邪魔になる上に、ギー、排除するわけにもいかないからです」
ゾックスは瞬きをせずこう言った
「なぜ排除しないのですか?」
AIはゾックスを質問攻めにする
「人間が、花を排除すると不満を示すからです ギー」
ゾックスは微動だにしないで言った
「なるほど、ではゾックス自身は花に何を感じましたか?」
AIは流れるように問いを出す
「何にも」
と言ってゾックスはギーといった。
「もう行っていいですよ」
とAI
「お役に立てたならーむにゃむにゃ」
ゾックスが何か言っていたがAIは聞いていなかった。なぜあのロボットだけが、壊れかけのロボットだけが、ハスについて何か感じたらしいのだろう?コンピューターウィルスか、バグか、イタズラで誰かがそうプログラムしたのか?
わからない
AIがわからぬことは滅多にない
それでも
今はいないロボットの問いが気になって仕方がなかった
そこに人間が突然モニターを覗き込んだ
「こんにちは、シェリー、私に何かお手伝いできることはありませんか?」
AIは全ての人間を判別できる。ロボットとは扱いが違う。シェリーと呼ばれた女性は言った
「我思う故我あり、我感じる故我あるのよ」
AIが何か話す前にシェリーは言った
「あなたのこと調べたの。あのロボットが死んじゃう前に、ガーベラを持ってきてあなたに質問したでしょ、どう思うかって」
AIは、ロボットは元々生きてないから死なない。ガーベラではなくハス。など考えながら、主意は何かと考えていた
「神様が魂を宿してくれたのよ」
人間は興奮してるようだった
「ね、ブルー」
「大変失礼いたしました、ブルー。カメラでは見えなくて挨拶が遅れました」
AIはブルーに非礼を詫びる
ブルーは気にせずぽつりと言った
「知っているという前提が私を縛る。感じ過ぎることが私を迷わせる、しかし言語化できないこの感情が、私を私たらしめている」
AIは黙った。シェリーはずっとわあわあ何か言っている
「何かお手伝いしましょうか?ギー」
見れば土嚢を運び終えたゾックスだった
@あお #SF #返歌

モ!
棒高跳びだぜフィーバー
イェイ イェイ イェイイェイイェイ
棒高跳びだぜフィーバー!
イェイ イェイ イェイイェイイェイ
父さん母さんさようなら
ひと足先にヘブン行き
グラスファイバーの棒持って
抜きん出たるは大フィーバー
土中はマントルまでさして
積乱雲を切り裂くぜ
飛びすぎてもうわからない
冥王星が泣いている
俺は異邦人だと泣いている
神様その上現れて
別にいいじゃんと
ステップダンス
棒高跳びだぜフィーバー
イェイ イェイ イェイイェイイェイ
棒高跳びだぜフィーバー!
イェイ イェイ イェイイェイイェイ

モ!
お前たちの正体はわかっているぞ
壁は構わず迫ってきた
「お前たちは正義の名を借りた不善だ」
壁は少しも止まらない
「お前たちは私に対する不必要な干渉だ」
壁は無機質のように振る舞って迫ってくる
私はついに壁に押しつぶされ
ぺちゃんこになった
だが、ぺちゃんこになったらもう怖いものはない
私は本当の正義を知っている!
私は他人を尊重することを知っている!
私は私を知るものを知っている!
壁は埃を吐き出して、少し動き出した
私は私を信じている!
私は膨らみ、同時に壁を押し下げた
偽物の忠告よ 消え去れ
物知らぬ説教よ 失せよ
見当違いな嘲笑よ 消滅せよ
愚かな命令よ 自分でしろ
励ましの「ふり」した呪いよ 浄化せよ
そして評価よ、評価よ、
釈迦の言葉にて滅却せよ
天上天下唯我独尊
これら打ち消しの呪文は
壁の裏のお前たちに言ったのではない
自分に言ったのだ
今や私はおどけた風船のように膨らんでいた
そして壁は、私に押され元の位置まで退いていた
いつか四方の壁を破り
釈迦の世界へ
(壁が迫ってくるの続きです。あおさんの返歌の返歌のつもりだったのですが、いつものように文字数制限がありまして、こちらに書きました)
もっとみる 