

ここは、小説や物語を愛する人たちが集まり、
自分だけの世界を創り、言葉で新たな景色を描いていく星です。
小説、短編、詩、キャラクター、世界設定――
あなたが生み出したものは、すべて「ひとつの世界」。
誰も踏み入れたことのない世界を、
あなたの言葉で切り拓いてみませんか?
さあ、ペンを取ろう。
まだ名前のない物語が、あなたを待っています。 ✒️🌌📖
【この星のルール】
① 互いの世界を尊重する
誰かの作品や世界観を否定せず、それぞれの「世界」を大切にしよう。
② アイデアを奪わない
他の人の設定・キャラクター・物語を無断で使用するのはNG。
③ 感想は優しく
批判するときも、相手が創作を続けられるような言葉を心がけよう。
④ ネタバレに注意
作品の展開や結末を書くときは、ネタバレがあるか確認しよう
⑤ 自由に創ろう
小説、詩、キャラクター、台詞、世界設定……。
ジャンルに縛られず、あなたの「創りたい」を大切に。
⑥ 現実のルールも忘れずに
人を傷つけたり、迷惑をかけたりする行為は、この星でも禁止。
──あなたの物語で、まだ見ぬ世界を開拓しよう。
ByChatGPT

🧵一ノ瀬優太🌿
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
病院の窓から見える桜は、いつも少し遅れて咲いた。
街ではもう散り始めているのに、ここだけは時間から取り残されたみたいに、薄桃色の蕾をゆっくり膨らませていた。
僕は、それが好きだった。
世界中の人が先へ進んでいっても、ここではまだ、何かが始まるのを待っている。
そんな気がしたから。
高校二年の春。
僕は、その病院で君に出会った。
君は窓際の椅子に座って、古いノートに何かを書いていた。
白いカーテンが風に揺れるたび、長い髪が頬にかかる。
僕が廊下を歩いていると、君は顔を上げた。
「ねえ」
「……僕?」
「うん。そこの普通の人」
「普通の人って何だよ」
君は笑った。
「だって、あなた、外から来たんでしょ?」
「まあ……見舞いに」
「いいなあ」
「何が?」
「外の空気」
君は窓の向こうを見た。
「私ね、ずっとここにいるから」
その言葉に、僕は何も返せなかった。
君は、少しだけ笑って言った。
「だから、外の話を聞かせてよ」
それが、僕たちの始まりだった。
僕は次の日も病院へ行った。
その次の日も。
君に会うため――なんて、最初は絶対に認めなかった。
「今日は何してきたの?」
「学校」
「つまんな」
「普通だろ」
「じゃあ、普通じゃない話」
「そんなのないって」
「じゃあ作って」
君はいつも無茶を言った。
僕は学校であったくだらない話をして、帰り道に見つけた猫の話をして、コンビニの新商品がどうとか、友達と喧嘩したとか。
君はその全部を楽しそうに聞いた。
ある日、僕が言った。
「そんなに外が好きなら、退院したらどこ行きたい?」
君は少し考えてから答えた。
「海」
「海?」
「うん。朝の海がいい」
「なんで朝?」
「誰もいないから」
「寂しくない?」
「ううん」
君は笑った。
「あなたがいれば、寂しくないから」
僕は、その言葉を聞いてから、しばらく君の顔を見られなかった。
僕たちは、いつしか毎日会うようになった。
病院の屋上。
自動販売機の前。
長い廊下。
窓際のベンチ。
僕が持ってきたコンビニのお菓子を半分こして、くだらないことで笑った。
君はよく、僕に質問した。
「もし明日、世界が終わるなら何する?」
「友達と遊ぶ」
「私は?」
「……一緒にいる」
「即答じゃん」
「うるさい」
君は嬉しそうに笑った。
そして、ノートに何かを書いた。
「何書いてるの?」
「秘密」
「見せてよ」
「だめ」
「なんで?」
「まだ完成してないから」
そのノートは、いつも君の鞄の中にあった。
六月。
君の体調が少し悪くなった。
僕が病室を訪れると、君は眠っていることが増えた。
それでも僕は、いつものように話しかけた。
「今日、学校でさ――」
返事はない。
「めちゃくちゃくだらない話なんだけど」
やっぱり返事はない。
僕は椅子に座って、君が起きるまで話し続けた。
何時間でも。
君が眠っていても。
僕は話した。
外のこと。
学校のこと。
夏になったら何をするか。
海に行ったら何を食べるか。
朝の海を見たら、どんな写真を撮るか。
そして最後に、必ず言った。
「また明日」
君はそのたびに、小さく笑っていた。
ある夜。
君が僕を呼んだ。
「ねえ」
「ん?」
「約束して」
「何を?」
「私がいなくなっても、普通に生きて」
僕は笑った。
「何それ」
「大事なこと」
「縁起でもない」
「お願い」
君の目は、今まで見たことがないくらい真剣だった。
「約束して」
僕は、仕方なく頷いた。
「……分かった」
「絶対だよ」
「絶対」
君は安心したように笑った。
そして、僕の手に小さな鍵を乗せた。
「これ、預ける」
「何の鍵?」
「いつか分かるよ」
「いつ?」
「春」
それだけ言って、君は眠った。
夏が来た。
蝉が鳴いた。
空が青かった。
僕は海に行った。
一人で。
朝の海。
君と約束した場所。
でも、君はいなかった。
波の音だけが聞こえていた。
僕は海を見ながら、何度も君に電話をかけた。
当然、繋がらない。
僕は泣いた。
声が出るくらい泣いた。
約束なんて守れないと思った。
普通になんて、生きられないと思った。
君は、夏の終わりに亡くなった。
僕は最後まで、病室にいた。
君はほとんど話せなかった。
それでも最後に一度だけ、目を開けた。
「……海」
「うん」
「行った?」
「行ったよ」
「……どうだった?」
「綺麗だった」
君は笑った。
「よかった」
それが、最後の言葉だった。
それから一年。
僕は高校を卒業した。
君がいない毎日は、思ったより普通だった。
朝が来て。
学校へ行って。
友達と笑って。
帰って。
ご飯を食べて。
眠る。
普通の日々。
でも、その普通の中には、君がいない。
それだけが、どうしても慣れなかった。
そして、春が来た。
桜が咲いた。
僕はふと思い出した。
――いつか分かるよ。
――春。
僕は、君から預かった鍵を取り出した。
それを持って、あの病院へ向かった。
受付で名前を告げると、看護師さんが僕を見て少し驚いた。
「あら……」
「?」
「あなた、あの子の……」
看護師さんは少し笑った。
「待ってたのよ」
「……僕を?」
「ううん」
その人は、病院の奥から一つの箱を持ってきた。
「あなたが来るのを、ずっと待ってたの」
箱には、僕の名前が書いてあった。
震える手で蓋を開けた。
中には、あのノートが入っていた。
僕が何度も「見せて」と言った、あのノート。
最初のページには、こう書かれていた。
――もし、このノートをあなたが読んでいるなら。
僕は息を止めた。
ページをめくった。
そこには、僕との思い出が全部書かれていた。
初めて会った日。
僕が話したくだらない話。
僕が持ってきたお菓子。
屋上で見た夕焼け。
僕が初めて「一緒にいたい」と言った日。
そして、最後のページ。
そこには、僕が知らなかった真実が書かれていた。
――あなたは、私に「外の話を聞かせて」と言ったと思ってるよね。
――本当は、逆なんだよ。
――私は、あなたに外の世界を見せたかった。
僕の手が止まった。
次のページ。
――あなたは、私が病気だから、私を特別扱いしてくれたと思ってる。
――でも違う。
――私があなたを選んだのは、あなたが「普通の人」だったから。
――普通に笑って。
――普通に怒って。
――普通に悩んで。
――普通に誰かを好きになれる人だったから。
ページをめくる。
その先には、僕が知らなかった出来事が書かれていた。
――実は、あなたが病院に来る前から、私はあなたを知っていました。
――あなたは覚えてないと思う。
――雨の日。
――駅前で、傘を持っていなかった私に、あなたは傘を貸してくれた。
僕は、そこで息を呑んだ。
そんな記憶は、僕にもあった。
高校一年の冬。
駅前で、見知らぬ女の子に傘を貸した。
顔なんて覚えていなかった。
名前も知らなかった。
ただ、
「風邪ひかないでね」
そう言った。
それだけだった。
ノートには続きがあった。
――あの日、私は思った。
――こんな人になりたい。
――誰かの一日を、ほんの少しだけ明るくできる人に。
――だから、あなたに会いたかった。
僕の目から涙が落ちた。
文字が滲んだ。
そして最後のページ。
――この先を読んだあなたへ。
――私は、あなたに一つだけ嘘をつきました。
心臓が跳ねた。
――「普通に生きて」って言ったこと。
――あれは、あなたに忘れてほしいって意味じゃない。
――私を忘れないまま、普通に生きてほしい。
――笑って。
――恋をして。
――夢を見て。
――誰かを大切にして。
――そして、もし春になったら。
――あの場所へ行ってください。
僕はノートを閉じた。
でも、最後のページの裏側に、まだ何かがあることに気づいた。
小さな封筒。
僕は鍵を差し込んだ。
カチッ。
開いた。
中には、一枚の写真が入っていた。
朝の海。
誰もいない砂浜。
そして、写真の裏側。
――ここまで来たら、もう一つだけ。
――振り返って。
僕は振り返った。
病院の桜が、風に揺れていた。
その瞬間。
一枚の花びらが、僕の手のひらに落ちた。
僕は泣きながら笑った。
あの日、君が言った。
――春になったら分かるよ。
やっと分かった。
君は、僕に何かを残したかったんじゃない。
君は、僕の未来そのものを残そうとしていた。
僕が悲しみに立ち止まらないように。
君との思い出を抱えたまま、それでも前へ進めるように。
そして、その日の帰り道。
僕は駅前で、一人の女の子を見かけた。
雨が降っていた。
女の子は傘を持っていなかった。
僕は少しだけ迷って。
自分の傘を差し出した。
「よかったら、使って」
女の子は驚いた顔をして、
「でも、あなたは?」
「僕は走るから」
「風邪ひいちゃうよ」
「大丈夫」
僕は笑った。
そして、歩き出した。
雨の中を。
泣きながら。
笑いながら。
君がくれた、普通の毎日の中へ。
その夜。
僕は、あのノートの最後のページをもう一度開いた。
そこには、僕がさっきまで気づかなかった小さな文字があった。
――ねえ。
――もしあなたが、今、誰かに傘を差し出しているなら。
――私はちゃんと、あなたの中にいるよ。
窓の外では、桜が舞っていた。
僕は空を見上げた。
「……ありがとう」
返事はなかった。
でも、不思議と寂しくなかった。
あの日、君が好きだと言った朝の海みたいに。
世界は静かで。
優しくて。
まだ、これからだった。
僕は歩き出した。
君がくれた未来へ。
そして、ふと思った。
きっと恋というものは、
誰かと一緒に生きることだけじゃない。
その人がいなくなったあとも、
その人からもらった優しさを、
誰かへ渡していくことなのかもしれない。
桜の花びらが、一枚。
僕の肩に落ちた。
僕はそれを手に取って、
そっと笑った。
――春が来た。
今度は、ちゃんと。
僕の未来が、始まった。

🧵一ノ瀬優太🌿
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2026/08/17 12:11
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