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暇人さん、ちょっと二次創作読んでくれませんか🥲‎
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夕日に染まった教室でただ一つの机を眺めていた。

机の上には花瓶に飾られた百合の花が弱々しく咲いている。

それは、とても繊細で儚く白昼夢を見ているかのように俺の目に映った。

メモリーフィルムの端にある朧げな映像を見ているようだった。

窓の外からは歓喜の声や、哀愁の声が広く静まり返った教室で虚空に還る。

今いるこの教室こそが、現実とは切り離されたような気を悟りながら

胸元でそっとロザリオを握りしめ、お決まりの決め台詞を説く。

「…あなたに幸あらんことを、Amen__。」

かつての戦友に惜別と哀悼を込めた祈りを捧ぐ。

神にいくら祈りを捧げても、玲明での時間を共に過ごした彼は戻ってこない。

ならばせめて、と説いた言葉もまた、ある者にとっては屈辱でしかないと知りながらも。

これが己の宿命ならばと受け入れ、責務を全うする以外の術はない。


薄暗い沈黙の中、突如として氷刃のような波長が鼓膜を刺激した。

「葬儀に参列しなかった割に追悼ですか、随分滑稽なものですね巽。」

「…あなたはまだ俺のことが憎いのですね、HiMERUさん。」


彼は小さく不敵な笑みを浮かべ、嘲笑うかのような音を鼻で立て、言い放った。

「赦されたつもりでいましたか、実に不愉快ですね。

大体、HiMERUは元より巽のことは憎いのです。」

あの子によく似た容姿の彼は、あの子には似ても似つかない性格をしていた。

口を開けば、吐くのは俺に対する皮肉。

それも無理はない、彼は最愛の弟を俺の手によって失ったのだから。

「そうですな、HiMERUさんのお赦しを得られるとは願ってもいません。

ただ、『君』の核に触れる赦しはいつまでも乞いますな。」

彼は一瞬目を見開くとすぐにまた目を細め、俺に対する嫌悪の感情を露わにする。

その一方で俺はというと、彼に対する贖罪を求め乞うことしかできない。

「……『俺』の核は巽には手に入れられない。」

溜息交じりの低く呆れを帯びたその声は、きっと彼の素なのだろう。

(…ああ、HiMERUさんが『俺』として向き合ってくれた。)

「HiMERUさんの核に触れられたのなら、あなたは俺を赦してくれますか。」

俺がそう呟くと、彼はまた1つ溜息をついて俺との間にまたひとつ一線を引いた。

「要を返してくれるのですか?

あの子の将来を潰した巽が、要に代わって何ができるというのですか。」

彼の声はいつに増して粗々しく、肩を上下に揺らしている。

その一言は俺らの間の境界線に大きな亀裂を生んでいた。

紛れもない事実だからこそ、こんなにも彼は俺を赦せないのだと深淵を覗いた気分だ。

呼吸が落ち着いたのであろう彼は、我に返ったのかお決まりのポーカーフェイスで

俺をじっと見つめている。

「すみません、俺は…俺は、要さんにはなれませんし、なんとも非力といいますか…。」

至って冷静な筈なのに、心臓が大きく脈を打つ。

そのせいか、声は震えて上手く発声できている気がしない。

ただ、彼の本当に近づきたかっただけなのに、それがこんなにも裏目に出るだなんて。

ああ、彼は今どんな顔をして俺を見ているのだろうか。

情けなさ故、顔を背けることしかできない。

「…、なぜ巽が泣くのですか

本来泣きたいのはHiMERUなのですが。」

「え、俺泣いて…?」

彼に指摘され、ようやく頬を伝うものの正体が自分の目から零れ落ちた涙だと知る。

存外、自分の感情に疎いらしい俺の弱点を彼は的確に見抜いた。

きっと、人間観察をして心理学に長けた彼だからこそ理解ったのだろう。

ああ、俺はあまりに愚からしい。

「呆れます、いえ…いっそ同情するのですよ。

お前はどこに自分を棄ててきた?」

その一言に全細胞が呼応し、心臓に機能する動脈に流れる血液がこと速やかに送り出され、

酷く脈打った。

「俺、俺は風早巽です。

聖職者の端くれで、革命に失敗した…、特待生。

いえ、この肩書も今日で…、俺は…誰でしょう?」

脳に記憶された俺は、いつからか玲明学園きっての特待生で革命に失敗した落ちこぼれのレッテルが貼られている。

アイドルとしての俺にしか価値を見出せなかった自分自身にそのレッテルを貼り、

上書きしたのは紛れもなく俺なのだ。

そうだ、地獄へ招いたのは俺でそこへ誘われたのも俺だった。

皆の平等こそが全てだと思い込んでいた、あの時に全てを置いてきた。

わざと、嘘をついた。この仮面が壊れた今、俺は何者でもない。

「そうですね、俺は俺自身をあの時彼の命と引き換えに置いてきたようです。

HiMERUさん、あなたの瞳に映る風早巽はあの子の愛した俺ではないでしょう。

そして、あなたもまた俺の知るあの子ではない…違いますか?」

吐き出した言葉と同時に、花瓶に添えられた百合は首を落とした。

それは、まるであの子の死が何よりも身近であったことを比喩しているようだった。

夕日が沈み果て、照明の届かない教室に俺は残像を視た。

あの日、虚ろな視界の端で犠牲となったあの子を捉えた光景を今となって。

脳天が揺らいだ、瞳に映ったのは残像ではなく割れたガラス片と首垂れた百合の花。

遅れてやってくる神経が伝える鈍痛。

そして見上げてようやく目に宿したのは、HiMERUさんの表情だった。

酷く悍ましい歪みきった、殺意に満ちた目で俺を睨むこの瞳は紛れもなく『俺』だろう。

「…いい気味ですね、巽。

まさか、お前がここまでの愚図だとは思ってもみませんでした。

あの子の愛したお前?愛された気でいましたか。

笑わせないでください、反吐が出る。」


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