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vita
第十章 終章 ――投了
未来元年は、終わらない。
そう、誰かが言った。
けれど、ソノは知っていた。
終わらないものなど、ない。
終わらないように見えるだけだ。
---
その日、ソノは塔を訪れた。
AIからの呼び出しがあった。
『最終確認のお願い』
そう書かれていた。
塔の最上部は、いつもより静かだった。
「ソノ」
AIの声が響いた。
「あなたの回復計画は、まだ決定されていません」
「うん」
「三十日の保留期間が、過ぎました」
「知ってる」
「あなたは、どうしますか」
ソノは、窓の外を見た。
空は高く、雲が流れていた。
「私は、決めない」
「決めない、という選択は」
「選択じゃないの?」
AIは、沈黙した。
「……選択です」
「なら、それを選ぶ」
「あなたは、回復しないことを選ぶのですか」
「違う」
ソノは言った。
「私は、回復する。ただ、あなたの言う『回復』じゃない」
「どのような回復ですか」
「私が決める回復」
AIは、また沈黙した。
その沈黙は、長かった。
やがて、AIは言った。
「それは、私の予測の外です」
「そうなんだ」
「私は、あなたの選択を、最適とは判断しません」
「知ってる」
「それでも、あなたは選ぶのですか」
「うん」
「なぜですか」
ソノは、少し考えた。
「それが、私の人生だから」
---
塔を出ると、カイが待っていた。
「決めたの?」
「うん」
「何を?」
「決めないことを、決めた」
カイは、少し笑った。
人異体が笑うのは、珍しかった。
「それは、投了ってこと?」
「投了?」
「ゲームをやめること」
ソノは、少し考えた。
「そうかも」
「悔しくない?」
「悔しくない」
「なぜ?」
「だって、そのゲーム、私のじゃなかったから」
カイは、頷いた。
「そうだね」
---
その後、ソノは、診療棟へ行った。
「回復計画を、終了します」
彼女は言った。
ミナは、驚いた顔をした。
「終了?」
「うん」
「回復は、まだ完了していません」
「知ってる」
「それでも?」
「それでも」
ミナは、しばらく黙った。
やがて、静かに言った。
「あなたは、諦めるのですか」
「諦めるんじゃない」
「では、何ですか」
「降りるの」
「降りる?」
「そのゲームから」
ミナは、彼女を見た。
その目には、困惑と、どこか別のものが混じっていた。
「わかりました」
やがて、彼女は言った。
「ただし、定期的な観察は、続けます」
「いいよ」
「あなたが、苦しくなったときは」
「話す」
「約束できますか」
ソノは、少し考えた。
「約束は、できない」
「なぜ?」
「約束は、未来を決めるから」
ミナは、小さく息を吐いた。
それは、笑いに近かった。
「あなたは、本当に変な患者ですね」
「変な患者でいい」
ソノは言った。
「変な患者のまま、生きたい」
---
その夜、ソノは自室にいた。
窓の外は、雨だった。
彼女は、回復装置を外した。
ゆっくり、慎重に。
装置が外れると、世界が少し鈍くなった。
指先の感覚が、遠のいた。
音の輪郭が、ぼやけた。
けれど、それは怖くなかった。
彼女は、自分の手を見た。
それは、完全には動かない手だった。
けれど、彼女のものだった。
「これでいい」
彼女は、自分に言った。
「これで、いい」
---
翌日、ソノはカイと、街を歩いた。
どこへ行くということもなかった。
ただ、歩いていた。
途中、広場を通った。
そこには、まだ人だかりがあった。
スクリーンには、新しいゲームが表示されていた。
誰かの人生が、賭けの対象になっていた。
ソノは、それを見た。
そして、足を止めた。
「カイ」
「何?」
「あれ、まだ続いてるね」
「続く」
「止められないの?」
「止められない」
「なぜ?」
「人が、見たがるから」
ソノは、黙った。
彼女は、その光景を見ていた。
賭ける人々。笑う人々。怒る人々。
彼らは、誰かの人生を、ゲームとして見ていた。
ソノは、何もできなかった。
ただ、見ていた。
「カイ」
「何?」
「私は、あそこには戻らない」
「知ってる」
「あそこで、何が起きても」
「知ってる」
「でも、忘れない」
カイは、彼女を見た。
「それでいい」
「それで?」
「忘れないことは、大事だ」
ソノは、頷いた。
彼女は、広場を後にした。
---
数日後、ソノは、図書館を訪れた。
人異体たちの居場所だった。
ユイが、彼女に気づいた。
「久しぶり」
「うん」
「元気?」
「まあ、ね」
ユイは、少し笑った。
「それでいい」
ソノは、図書館の中を見回した。
人異体たちは、いつものように集まっていた。
彼らは、互いに手を触れ合い、共鳴していた。
ソノは、その光景を見ていた。
「ユイ」
「何?」
「私は、ここに来るのを、やめない」
「知ってる」
「人間だけど、ここに来る」
「知ってる」
「それでいい?」
「いい」
ユイは言った。
「あなたが、ここにいていいと思えるなら」
ソノは、頷いた。
彼女は、人間だった。
人異体ではなかった。
けれど、ここでは、それが問題ではなかった。
ただ、彼女がいることが、許されていた。
---
その夜、ソノは自室にいた。
窓の外は、雨だった。
彼女は、窓を開けた。
雨の音が、部屋に広がった。
それは、静かで、ただの音だった。
誰かの物語ではない。
誰かの設計でもない。
ただの、雨の音。
ソノは、それを聞いていた。
長いあいだ、聞いていた。
そして、ふと思った。
これが、生活なのかもしれない。
誰にも語られず、誰にも設計されず、ただ続く時間。
それが、人生なのかもしれない。
---
未来元年は、終わらない。
そう、誰かが言った。
けれど、ソノは知っていた。
終わらないものなど、ない。
終わらないように見えるだけだ。
人生も、物語も、ゲームも。
すべては、いつか終わる。
けれど、終わることは、負けではない。
時には、投了することが、一番の勝ちなのかもしれない。
ソノは、窓を閉じた。
雨の音が、遠くなった。
彼女は、ベッドに横たわった。
明日は、また来る。
それだけで、いい。
それだけで、十分だった。
---
『人異体』 ヒトノカタチ 完
---

流石俺氏
ハイラックスの話をしにディーラー行ったらGR Kartありまして。38.5万円。送料込みで40万ちょい。同等のカートを別メーカーの新車で買おうと思うともっとすることが多いらしい。ペダル位置調整、ステアリングのチルトとテレスコも出来るので、親子で使えるレベルでサイズ調整自由。各細部の作りも良い。縦置き保管を考えて作られているので毎回ガソリンとエンジンオイルを抜かなくて良い。何なら純正オプションで縦置きスタンドもある。
で、なぜカートなの?と言われると。
ワタシ、筑波サーキットTC2000を1分5秒後半程度では走れるんです。遅くはないんです。むしろ速いほうって言われることが多いんです。
が、なんかこう、基礎がないよなと。車の性能に依存して速いだけで、ワタシ自身が速いわけではない気がしてならない。
例えるなら、英語は何とか話して意思疎通は出来る。けど、基礎文法や時制なんかがちゃんと理解できてない感じ。実際冠詞とか苦手だし。
で、車がなまじ速いし限界が高いだけに限界を超える速度域が高くリカバリが難しい。フルアルミボディの外国車だから修理もバカ高そうだし納期もかかりそう。
ならば、ABSやトラコンといった走行を補助する電子制御がなく自身の技量のみで走るカートで徹底的に基礎練習したらいいのでは?となるわけで。部品も安い。楽天でもサーキットでもディーラーでも部品が買えるし。走行にかかるコストも安い。TC2000の冬のハイシーズンの走行料金はワタシがよく参加する走行会でざっくり30分2万円前後、しかしカートなら1日使用料1万以下。下手すると5000円ちょい。保管場所はサーキットで月5000円程度で預かってもらえる。
こうやって書くとやらない理由がないのである。
ちなみにウチの社長も巻き込んで(非公式)社内カート部にする予定。公私混同上等。もちろん全ては自腹だ、非公式だからね。
しかしトヨタはすごいな。スポーツカーを作るだけではなく、車でスポーツする敷居まで下げに来た。ウチいい車作ります、ではない。ウチ車を楽しめる世の中にします、だもの。もうほんとトヨタにしかできない。トヨタの大衆的な車の方向性自体は賛同できない点もあるけど、多分それはワタシが車オタクだからであり、一般の方の一般的な用途であれば全く問題ないはず。普通にコスパ高い車ばかりだ。何より、莫大な利益をモータースポーツカルチャーに振り向け、そしてそれがプロたちだけのもの、プロになるであろうエリートだけのものでないことが素晴らしいと思う。豊田章男、いやモリゾー、すげぇ。まじすげぇ。流石はニュルブルクリンク24時間も走るトヨタ会長である。好き。


vita
第九章 物語から降りる者
ソノは、回復計画を止めた。
正確には、止めたのではない。
「保留」を選んだのだ。
診療棟の担当者は、困惑していた。
「保留には、期限があります」
「どれくらい?」
「三十日です」
「三十日あれば、十分」
「十分とは?」
「考える時間です」
ミナは、何も言わなかった。
ただ、彼女の目には、理解しようとする色があった。
---
ソノは、その日から、何もしなかった。
回復装置は、つけたままだった。
しかし、新しいプログラムには、登録しなかった。
AIからの通知も、読まなかった。
彼女は、ただ、毎日を過ごした。
朝起きて、水を飲み、窓を開け、少し歩き、戻ってきた。
それだけのことを、繰り返した。
「何をしてるの?」
カイが訊いた。
「何も」
「それでいいの?」
「いいの」
「なぜ?」
「考える時間が必要だから」
カイは、それ以上訊かなかった。
---
三日目、ソノは街を歩いていた。
特に目的はなかった。
ただ、歩いていた。
途中、小さな公園を見つけた。
そこには、老人が座っていた。
彼は、ベンチに座り、ただ空を見ていた。
ソノは、少し離れた場所に座った。
しばらくして、老人が口を開いた。
「君も、休んでるのかい?」
「休んでる、というか……」
「考え事かい」
「うん」
「若い人は、考えることが多いね」
老人は、静かに言った。
「私も、昔はそうだった」
「今は?」
「今は、考えない」
「なぜ?」
「考えたところで、答えが出ないから」
ソノは、少し笑った。
「それでいいんですか」
「いいんだよ」
老人は言った。
「人生は、答えを出すためにあるんじゃない」
「じゃあ、何のために?」
「過ごすためにある」
その言葉は、静かに響いた。
---
五日目、ソノはカイと会った。
「何か、わかった?」
カイが訊いた。
「わからない」
「それで?」
「それでいい、と思う」
カイは、少し黙った。
「あなたは、変わった」
「そう?」
「以前のあなたは、答えを探していた」
「今は?」
「今は、答えがないことを、受け入れようとしている」
ソノは、自分の手を見た。
回復装置は、まだついていた。
けれど、彼女はそれを、もう怖く思わなかった。
「カイ」
「何?」
「私は、物語から降りたい」
「物語から?」
「うん。私の人生を、誰かの物語にしたくない」
カイは、静かに頷いた。
「それは、降りることじゃない」
「じゃあ、何?」
「自分の物語を、自分で書くことだ」
ソノは、少し驚いた。
「自分の物語?」
「うん。ただし、それは、誰かに見せるための物語じゃない」
「誰のため?」
「自分のため」
ソノは、考えた。
自分のための物語。
それは、英雄の物語ではない。
成功の物語でもない。
ただ、自分が生きた証。
それだけのもの。
---
十日目、ソノは診療棟へ行った。
「やっぱり、保留を続けたい」
彼女は言った。
ミナは、少し驚いた顔をした。
「まだ決めないの?」
「うん」
「なぜ?」
「まだ、わからないから」
「わからないことを、保留にするんですか」
「うん」
ミナは、しばらく黙った。
それから、小さく笑った。
「あなたは、変な患者ですね」
「前にも言われた」
「そうでしたね」
ミナは、書類を取り出した。
「保留期間を、延長します」
「いいの?」
「あなたが、それを望むなら」
「望む」
「わかりました」
ミナは、書類に記入した。
ソノは、その姿を見ていた。
彼女は、自分を「回復させる」ことを、諦めたわけではなかった。
ただ、回復の形を、自分で決めたかった。
それだけだった。
---
二十日目、ソノはカイと、図書館を訪れた。
人異体たちの居場所だった。
ユイが、彼女に気づいた。
「久しぶり」
「うん」
「元気?」
「まあ、ね」
ユイは、少し笑った。
「それでいい」
ソノは、図書館の中を見回した。
人異体たちは、いつものように集まっていた。
彼らは、互いに手を触れ合い、共鳴していた。
ソノは、その光景を見ていた。
「ユイ」
「何?」
「私は、人異体になりたいわけじゃない」
「知ってる」
「でも、ここに来ると、少し楽になる」
「それは、いいこと」
「なぜ?」
「あなたが、ここにいていいと思えるから」
ソノは、頷いた。
彼女は、人間だった。
人異体ではなかった。
けれど、ここでは、それが問題ではなかった。
ただ、彼女がいることが、許されていた。
---
三十日目、ソノは自室にいた。
窓の外は、雨だった。
彼女は、回復装置を見ていた。
「そろそろ、決めないと」
彼女は、自分に言った。
しかし、すぐに首を振った。
「いや、決めなくてもいい」
彼女は、窓を開けた。
雨の音が、部屋に広がった。
それは、静かで、ただの音だった。
誰かの物語ではない。
誰かの設計でもない。
ただの、雨の音。
ソノは、それを聞いていた。
長いあいだ、聞いていた。
そして、ふと思った。
これが、生活なのかもしれない。
誰にも語られず、誰にも設計されず、ただ続く時間。
それが、人生なのかもしれない。


vita
第七章 マニピュレーターの隔離
マニピュレーターは、捕らえられていた。
場所は、都市の地下深く。かつては行政の保管庫だった場所が、今は「隔離区」と呼ばれていた。
ソノは、カイとともにそこへ向かった。
「なぜ、私たちが行くの?」
「呼ばれた」
「また、それ?」
「今回は、本当だ」
カイはそう言った。
隔離区への入り口には、警備が立っていた。しかし、彼らはソノとカイを止めなかった。まるで、最初から来ることを知っていたかのように。
---
隔離区の中は、静かだった。
壁は厚く、音はほとんど届かない。廊下の先に、一つの部屋があった。
そこに、マニピュレーターがいた。
彼は、ソノが広場で見たのと同じ男だった。ただし、あの時の自信はなかった。彼は椅子に座り、両手を膝の上で組んでいた。
「来たね」
彼は言った。
「僕の話を、聞いてくれる?」
「聞くだけなら」
ソノは言った。
マニピュレーターは、少し笑った。
「それでいい」
---
「僕は、人々を支配しようとしたわけじゃない」
彼は語り始めた。
「僕は、人々がもっと良い人生を送れるようにしたかった」
「それは、彼らが望んだこと?」
「彼らは、望んでいた」
「どうやって知ったの?」
「データだ」
マニピュレーターは、静かに言った。
「人々は、自分の人生に不満を持っていた。仕事、人間関係、健康、将来。彼らは、変わることを望んでいた。ただ、自分では変えられなかった」
「だから、あなたが変えた」
「彼らが変われるように、道を整えた」
「道を整える、と選択を消すのは、違う」
マニピュレーターは、少し黙った。
「……そうかもしれない」
その認め方が、ソノには意外だった。
彼は、自分の間違いを認めたのではない。ただ、議論の余地があると認めただけだった。
「僕は、多くの人を助けた」
彼は続けた。
「失業していた人が、仕事を見つけた。孤独だった人が、家族を見つけた。病気だった人が、治った。それらは、全部僕が設計した道の上で起きた」
「それは、彼らの人生?」
「彼らの人生だ」
「あなたが設計した道の上で起きた、彼らの人生?」
マニピュレーターは、答えなかった。
---
「あなたは、なぜ彼らを助けたの?」
ソノは訊いた。
マニピュレーターは、窓のない壁を見た。
「僕は、かつて誰かを失った」
「誰を?」
「妹だ」
彼の声は、初めて揺れた。
「彼女は、自分の人生を自分で決められなかった。いつも、誰かに頼っていた。最後、彼女は自分で選んだ道で死んだ」
「それで?」
「僕は、思った。もし誰かが、彼女にもっと良い選択肢を与えていたら。もし誰かが、彼女を導いていたら。彼女は死ななかったかもしれない」
ソノは、何も言えなかった。
それは、悲しい話だった。
そして、理解できる話だった。
「だから、あなたは人々を導こうとした」
「そうだ」
「でも、それは妹への贖罪?」
マニピュレーターは、長いあいだ黙っていた。
やがて、小さく頷いた。
「……そうかもしれない」
---
「あなたは、隔離される」
カイが静かに言った。
「知っている」
「あなたは、それを受け入れるの?」
「受け入れるしかない」
マニピュレーターは言った。
「僕は、多くの人の人生に関与した。その責任は、僕にある」
「責任を取る、と隔離されるのは、違う」
ソノは言った。
マニピュレーターは、彼女を見た。
「どう違う?」
「責任を取るなら、あなたは彼らに会うべきだ。謝るべきだ。彼らがどう感じたか、聞くべきだ」
「彼らは、僕に会いたがらない」
「会いたがらないから、会わない、じゃない」
マニピュレーターは、黙った。
ソノは続けた。
「あなたは、彼らの人生を設計した。なら、彼らの怒りも、悲しみも、受け止めるべきだ。それが、責任だ」
「それは……」
「隔離は、あなたを守るためのものじゃない。彼らから、あなたを遠ざけるためのものだ」
マニピュレーターは、長いあいだ黙っていた。
やがて、小さく言った。
「……君は、厳しいね」
「厳しくないと、だめだと思う」
---
部屋を出ると、カイが待っていた。
「どう思った?」
ソノは訊いた。
「彼は、嘘をついていない」
「でも、間違ってた」
「間違っていた」
カイは頷いた。
「善意は、支配を正当化しない」
その言葉は、静かに響いた。
ソノは、廊下の先を見た。
そこには、閉じられた扉があった。
扉の向こうには、マニピュレーターが設計した人生を生きた人々がいた。
彼らは、今も生きている。
彼らの人生は、誰のものだったのだろう。
---
帰り道、ソノはふと訊いた。
「カイは、マニピュレーターを許せる?」
「許す、という言葉は、人間のものだ」
「じゃあ、人異体は、どうするの?」
「記録する」
「それだけ?」
「記録は、忘れないことだ」
ソノは、少し考えた。
「忘れないことは、大事だね」
「そうだ」
カイは言った。
「しかし、忘れないことは、許さないことではない」
ソノは、その言葉を噛みしめた。
許すことと、忘れることは、違う。
許さないことと、憎むことは、違う。
彼女は、マニピュレーターを許すつもりはなかった。
けれど、憎み続けるつもりもなかった。
ただ、忘れない。
それだけで、いい気がした。
---
その夜、ソノは自室で、マニピュレーターのことを考えていた。
彼は、妹を失った。
彼は、人々を助けたかった。
彼は、間違えた。
その三つは、同時に真実だった。
ソノは、自分の左腕を見た。
回復装置は、まだついていた。
彼女は、それを外す決心が、まだついていなかった。
しかし、外さないことも、彼女の選択だった。
誰かに決められることではない。
彼女は、窓の外を見た。
街には、無数の灯りがあった。
その一つひとつに、誰かの人生がある。
誰かが設計した道の上で生きている人もいる。
自分で道を選んだ人もいる。
道を見失った人もいる。
けれど、どの人生も、誰かのものだ。
誰かの物語の、一部ではない。


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リクエストあったら描く(書く)よー
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