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第五章

　決戦の数日前、王妃ガートルードの身の安全を確認するため、ヨハンとリア姫が異国の行商人夫婦に変装して、王城に潜入することになる(他の家臣たちは皆、王城の関係者らに顔を知られているため、成長して容姿がわからないリア姫とそもそも異国人であるヨハンが適任だと判断された)。リア姫の内通者であり幼なじみでもあるローゼンクランツとギルデンスターンの手引きで、ようやく母親ガートルードとの悲願の再会をリア姫は果たす。ガートルードは先妻に先立たれたクローディアス及び実母を亡くしたルシアスとマーカスを憐れみ、妻として母として彼らに尽くしていた。ルシアスとマーカスもまたガートルードを実の母のように慕い、狩りの獲物を嬉しそうに報告する場面を見たリア姫は複雑な胸中となる。そこに末妹であるタマラが現れる。ガートルードからタマラがリア姫の異父妹であることを告げられ、リア姫はそれを父親と自分への裏切りと捉え激しく非難した。ガートルードは「貴女が死んだと聞かされた時、私も死のうと思った。でもできなかった」「クローディアスは本当は悪い人ではない。これは世の習い、仕方がない」「あの子たちには母親が必要」と弁明するが、それは火に油を注ぐだけに過ぎず、リア姫は「裏切り者！アバズレ！もう母親とは思わない！」と泣き叫び王城から走り去る。ガートルードは一人残されたヨハンに「娘のことをどうかよろしく頼みます」と深々と頭を下げた。
　リア姫に追いついたヨハンは彼女を抱き締めると、姫は幼子のようにその胸の中で泣いた。リア姫は8年前の記憶を思い出す。
　先王ハムレットは老王であり、子供は王女であるリア姫のみ。許婚のレアティーズは外国の貴族の血を引く一族であり、廷臣や侍女たちはハムレットが溺愛するリア姫が跡継ぎとなることに疑問を抱き、王は娘のリア王女ではなく、既に2人の男児(ルシアスとマーカス)がいる年若き王弟クローディアスに王位を譲るべきと語り合っていた。
　リア姫はヨハンに「もし自分が女ではなく男であれば、父は殺されることはなかったのか？」と涙ながらに訊ねる。するとヨハンは「その時はお前の叔父さんと大っぴらに戦争になってただけさ」と慰めた。

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