Uber Jazz ♯ 28 ☆『スウィングジャズの花形ボーカリスト5⃣』 テディウィルソンのリーダー録音を紹介してきたが本回はそのラスト。前回までの二人のヴォーカルは1937年だったが明けて1938年、1月にはビリーホリデイを再び呼んでレスターヤングやバッククレイトンなどのベイシー一党らを中心としたパーソネルが主体だったが、次の3月23日に行われたセッションではガラっと入れ替えて中間派tp.の雄ボビーハケットにシカゴ派のベテランcl.ピーウィーラッセル、as.にタブ スミス、g.はスイング系のリズムギタリスト アランリュースといった布陣で歌手はナン・ウィンである。今回は彼女を紹介したいがこの方の資料は皆無で写真すら出て来ない。声はやはりアルトであるが、これは推測の域を出ないのだが彼女の粘着質な声は多分黒人シンガーだ。 誤解の無いように言っておくがこれは人種差別でも何でもなくジャズに於いては黒白人種の差異はその音楽性に影響が及ぶので、敢えてそう云う表現を使う次第である。 ナンウィンが参加したテディウィルソンのセッション録音盤は結構長く'38.3.23と4.29更に7.29と計3回のレコーディングで美声を聴かせている。 その間にアトラクションやダンスホールなどでのライブも帯同していたと思われるので4ヶ月間在籍していたことになる。ナンウィンの録音ではやはりテディの選曲眼が光っていて3月の録音では名曲♬Moments Like This が秀逸で本回はこちらの音源をチョイスした。2回目の録音に於ける♬If IWere You やスタンダードの♬You Go To My Head も捨て難い。2回目の録音は3月のメンバーにas.がタブスミスからエリントンの所から出張してきたジョニーホッジスが見事なソロを披露している。最後のセッションではジョナジョーンズのtpにベテラン ベニーカーターのas. ベンウェブスターのts. リズムがsb.ジョンカービィにコージーコールのds.と中間派が見事なアンサンブルを保っている。この日も録音最初の♬Now It Can Be Told が1番いいがエラ・フィッツジェラルドのvo.チックウェブ楽団の録音で有名な♬A-Tisket A-Tasket もこのセッションで録音している。