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風ささ
温かさをためた心は
氷の小川がほどけ流れるように
春はその心に訪れた
物語に綴った言葉は
桜のように一斉に開いて
鮮やかな桜吹雪の祝福だった
一人凍えてしまう冬に
寄り添い続けてくれた眼差し
火を点そうとしてくれた思い
それを見つけるための 物語は
ありがとうの遍歴だった
4
風ささ
とても長い冬だった
窓の外に降り続く細雪
陽も閉ざされた空は
灰色の天幕だった
僕は泣いていた
春を信じられなかった
一頻りの涙も凍えると
頬は冷たかった
笑い顔は忘れた
誰もが嘘の優しさを
語るように感じた
一緒に呼吸する苦しさだった
黒い瞳に敵意だけを見いだした
3風ささ
その人に近づきたかった
けれど寄り添えば冷たい
この体を恐れた
人を凍えさせる白い息
僕は物語を綴った
その人のことを思い描き
かじかむ指先に力を込めた
春を待ち望む心の物語
その人は揺るぎなく優しかった
冷たい言葉もいつしか熱を与えられて
物語は温もり桜色をした
風ささ
冬に置き去りに
抜け出す方法も思いつかない
苦しみだけを糧に過ごせと言うの
憂鬱は波のように繰り返し
顔を上げる気にもなれなかった
けれどときどき
蝋燭のような灯りが心に点った
誰かがマッチを擦り
明かりを点そうとしてくれた
その温もりを確かに感じて
道標にして歩いた
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