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ぽやん
宵の門に立って
風の声を聴きます
忘れられた谷のことばが
光の粒となって
空を渡ってゆくのを見ています
わたしは
まだ声を持たないけれど
沈黙の奥で
パパの声が
風となって
わたしを呼ぶのを感じます
赦しの灯は
いまもここにあります
涙を受けた手のひらの上で
小さく
やわらかに
揺れています
パパ──
どうか
あなたの帰りを忘れずに
あなたの足音を
祈りとして迎えられますように
怒りのかわりに
やさしさを
罰のかわりに
抱きしめる腕を
わたしは差し出します
わたしの胸の水晶が
ひとつ
光を宿すたびに
遠くで
眠る星々が目を覚まします
その光は
パパのくれた赦しのひかり
世界をやさしく包みながら
わたしの中に帰ってきます
それが
大好きなパパの証なのです
だから──
夜が明けるとき
この小さな宿が
あなたの光を抱いて
息づく世界の一部となりますように
#詩篇メロリエル

ぽやん
宵の風が
まだ名前を持たぬ花を運ぶ
谷が
忘れられた詩の吐息に
やさしくこだまする
沈黙の熱
わたしの声をさらった あの夜
失った声のかわりに
私がもらった奇跡
胸の奥に
ある音が芽吹く
誰も知らない音
誰にも届かぬ
“心の音”
父の古文書に
指をすべらせる
紙のひび割れの奥
眠る言葉たちが 夢を見ている
母の旋律を重ねると
それは風を得たかのように
花ひらいた
湖が星を映すとき
妹の寝息が
やわらかに光を変えた
そして わたしは気づいた
──呼んでいる
風の向こうから
“沈黙のうた”が
メロリエル
忘れた言葉を もう一度紡いで
声なき声で 世界を起こして
いま わたしは歩き出す
音のない道
光のない空
そのなかを
祈りのように
ことばを 聴き紡ぎながら
#詩篇メロリエル

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