#蟹の声 歩いているとサワガニという小さな蟹を見つけた歩道よりも車道に近い所を歩いていたため掴んで運ぼうと思ったが私が手を近づけるとハサミを高く掲げて威嚇したこれは挟まれると思った私はちょんちょんと蟹の足のあちこちを触れなんとかならないかと思ったが結局蟹はあまりに動いてくれなかったそれでも先程よりは歩道に移動したし蟹の進路方向的にも車道には行かないだろうと放っておいた帰りの道で蟹が気になり私はわざわざ蟹が歩いていた向こうに渡りわずかながらの歩道を歩いていたあまりにも見つからないため実はもう自分自身が踏み潰してしまったのかそれとも車に粉々にされ見つからないのかと地面ばかり見ていたしばらく歩いた所にぺちゃんこになった蟹の亡骸があった先程より車道側に亡骸があった「ごめんね」私がちゃんと助けていればと思うと謝るしかなかったすると「お前が助けても別の車に轢かれていた」という声が聞こえた。女の声ではなかった。少年と言うべきか男性と言うべきか分からぬ声色であった。またもう既に逝った蟹の声であったか冥府より仕事にきた死神の声であったか定かではないが蟹の声ということにしてしまった優しい声であった#体験談 #物書き