母さん あなたの中であなたの世界が広がっているあの思い出がこの今になってあの日のあの夕日の道が今日この足下の道になってあなたはその思い出の中を延々と歩いている手をつないでいる私は父さんですか幼い頃の私ですかそれとも私の知らない恋人ですか妄想と言うなかれ母さん あなたの中であなたの時間が流れている過去と今とが混ざり合ってあの日のあの若いあなたが今日ここに凛々しく立ってあなたはその思い出の中で愛おしそうに人形を抱いている抱いている人形は兄ですか 私ですかそれとも幼くして死んだ姉ですか徘徊と笑うなかれ妄想と言うなかれあなたの心がこの今を感じている~徘徊と笑うなかれ~母が認知症になった30年前には世間の理解がまだ進んでいませんでした認知症の家族を人目につかないよう家から出さないという家庭もありましたでも父は何が恥ずかしいものか俺が愛して愛して結婚したお母さんだ病気が心臓 肺にくる人がいるようにお母さんは病気が脳にきただけだといつも母の手を固く握って散歩に出ていましたがに股で歩きながら たまに立ち止まり"あー あー"と声を上げすれ違う人を誰構わず触ろうとする散歩についていく時 私は恥ずかしくて仕方がありませんでしたある日の散歩中に小学生がばーかと言って母に小石を投げつけ逃げていきました私はカッとなってその子を追いかけようとしましたすると 母に寄り添ったまま歩いていた父が私を諭してくれたのです病気を知らない子を叱ってはダメだあの子よりも問題があるのは幸之助だおまえはお母さんのことをいつも恥ずかしがっているだろう…がに股で歩こうが 声を上げようがそれは母さんが認知症を抱えながら必死に生きている姿なんだぞ息子のおまえにそれが分からんのか認知症になっても人間はその時その時を必死に生きている父の言葉を思い出すといまでも涙が込み上げてきますこの言葉が後に 介護に向き合うことになる私の心を支えてくれました母の心は若い頃の自分に戻り若い頃の世界をしっかり生きている頭の中に広がる世界に生きているという意味では母も私も同じそう思えた時正常な世界と異常な世界という区別が消えていきましたその体験から生まれた詩です#藤川幸之助#徘徊と笑うなかれ#致知