《合作作品》@MEGMU ×あお『花火』(MEGMU)華やかな装い流れる夜風美麗な宝石たちふと、零れた雫気付いた大切な気持ち『貴方』の存在の大きさに…(あお)あの夜の記憶は、まだ肌に残っている。浴衣の裾が揺れて、すれ違う人の香りに、夏が混ざる。屋台の灯りも、金魚すくいの水面も、全部が“楽しげ”で、私はただ、それを横目に歩いていた。打ち上がる音がした。高く高く、夜空を引き裂くように──あまりに見事な光が、胸の奥を刺した。ひとりで見るには、あまりに大きく、あまりに綺麗で、あまりに遠い花火に、私はそっと背を向けた。振り向いた、そこに。花火を見上げる男の子がいた。ひとりで。人ごみの中なのに、どこか、ぽつんと置き去りにされたような存在感で。あんなに綺麗な涙を、私は見たことがなかった。頬を伝う雫が、光に照らされて、きらきらしていた。瞳に花火は映っていたが、心は、もっと遠くを見ているようだった。それでも、今日の花火に“何か”を込めるように、目を細めていた。私は、言葉を失っていた。ただ、その光景に──閃光が走った。心の奥底が──ずっと暗く閉ざされていた場所が──彼のその儚い姿に、やさしくノックされたようだった。恋、とは、たぶんまだ言えない。でも、「この人を知りたい」と、その時、確かに思った。ひとりで見るには、あまりに大きく、あまりに綺麗な、花火の夜だった。---(MEGMU)出来すぎたシナリオ愛なんか信じてなかった今まさにこの瞬間までは容姿が好きな訳でもないましてや、会話なんか勿論した事ない何故か堪らなく離してはいけない衝動にかられた…(あお)私は、どうしても目をそらすことができなかった。その涙は、きっと私の知らない物語を連れていた。声をかける理由なんて、どこにもなかった。それでも、言葉がこぼれたのは、たぶん、私も──誰かに声をかけてほしかったから。「……花火、きれいですね」ぴたりと、声が重なった。お互いが、お互いに言った、その言葉。「……え」彼が少し驚いたようにこちらを見る。「……うん。ひとりで見るには、ちょっと大きすぎたかな」「聞こえてました?」「そんな顔してる」「‥‥」それだけの会話が、なぜだかあたたかかった。沈黙が流れる。それでも、逃げようとは思わなかった。隣に立って、同じ空を見上げる。その距離は──たぶん、偶然じゃなかった。夜空に、また新しい花火が咲く。オレンジ色のしだれ菊。紫と白の牡丹。彼はそのたびに、何かを思い出しているようだった。私は、そのひとつひとつを、ただ見届けていた。やがて、彼がぽつりとつぶやいた。「……忘れたくて来たのに、逆に思い出すなんて、ずるいな」私は何も言えなかったけれど、その言葉が、胸の奥に静かに沈んでいった。---(MEGMU)キラキラと輝く花火のように。年月は2人の距離が縮まるのにかからなかった。白夜のような景色から始まった2人は、やがてまた、同じ景色を眺めていた。(あお)夜空に、音が咲く。あのときと同じように、でも、違う。手のぬくもりがあるから。ふたりで見る花火。それだけで、夏の夜がやわらかく包まれていく。「あお、りんご飴、好きだったよね?」不意に、彼が言った。懐かしい名前を、優しく呼ぶみたいに。私の胸が、じんわりと熱くなる。「……うん。小さい頃、お祭りに行くと、必ず買ってた」「たぶん、今でも好き」りんご飴の屋台は、少し先に見えている。でも、すぐに買いに行く気にはなれなかった。この一瞬を、もう少しだけ抱きしめていたかったから。彼の手が、そっと指を絡めてくる。ぎゅっとじゃない。触れるだけの、やわらかい繋ぎ方。でも、それが確かに“今のふたり”だった。去年の私は、彼の涙に心をノックされた。今の私は、その手に、日々のあたたかさを感じている。「……あのとき、声かけてくれてありがとう」「こっちこそ。あのとき、泣いててよかった」ふたりして笑う。なんでもない会話なのに、胸がいっぱいになる。夜空に、金色の大輪が開く。その光のなかで、私は彼の横顔を見る。まっすぐ空を見上げるその瞳が、少しだけ潤んで見えたのは、花火のせいか、記憶のせいか。言葉にはしなかったけど、私は、手を少しだけ強く握り返した。来年も、また、こうして花火を見られたらいいな。そんな未来を、静かに願いながら。#出会いの物語#花火と涙と#ことばりうむの星#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル~○~○~○~○~○~○~○~○~🎼編集後記🎼(MEGMU)鳥肌と涙止まらんかった…この遊びハマりそう笑(あお)朝、目覚めてすぐに見た「ことばりうむの星」の投稿──そのことばに衝撃を受け、まっしぐらにアタック。思いがけず、快くOKをいただき、こうして生まれたコラボ作品です。まだお互いのことを深くは知らないけれど、それでも、紡ぐ“ことば”が呼応し合って、物語が動き出す。そんな不思議で、とても楽しい時間でした。MEGMUさん、本当にありがとうございました。MEGMU× あお のハーモニー、みなさんにはどう届きましたか?