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あお🫧

あお🫧

《合作作品》
@みっちー ×あおのハーモニー


「カレーのある風景 〜猫は知っている〜」


(みっちーside)

仕事が終わり、
家に着き、玄関の扉を開ける。

食欲をそそる、スパイスの香り。

「今日はカレーか!」

「ただいま!」

この一言で、振り向く彼女と猫。

「おかえり!」
「先にお風呂にする? ご飯にする? それとも私?」

俺はそれを華麗にスルー。
そう、カレーだけにね。
ちゃんと後で全部いただきますけれどね?

それはさておき、帰ってきて一番最初にすることといえば、
猫におやつをあげること。

もうすでに、足元にちょこんっと座り込んで、こちらを見上げている。

「にゃぁん」

「はいはい、今あげるから待ってね」

俺の手のひらを、これでもかというほど舐め回す猫。
そうそう、この時間こそが癒しだ。

猫は食べ終わると、すぐに窓際に向かい、外を眺めていた。

「ご飯の準備できたよ!」

彼女から声がかかる。

「いただきます」

二人で並び、テレビを見ながら、他愛ない話をして、カレーを食べ始めた。

「ッ?! かれぇ?!!?!」

今日のカレーは辛口だった。

彼女は言った。

「カレーは、かれー!笑」


---

(あおside)

「ただいま〜」

玄関の扉を開けると、ふわりと漂うスパイスの香り。
その匂いと同時に、足元にちょこんと現れる猫。
そして、キッチンから顔を出す彼。

「おかえり」
「ご飯できてるよ〜」

その一言に、ふっと肩の力が抜ける。

「先にお風呂にする? ご飯にする? それとも──」

そう言いかけると、彼が言った。

「今日は、ぜんぶ後まわし。まずはこのカレー、食べてほしいんだ」

彼がエプロン姿で、照れたように笑う。
その後ろで、猫が「にゃぁ」と相づちのように鳴いた。

テーブルに並べられた、あつあつのカレー。
トマトと玉ねぎがとろけていて、見るからにやさしい味がしそう。

「いただきます」

一口食べて、私は思わず首をかしげた。

「……あ、甘っ!」

思わず笑ってしまうほどの甘口。
まるでデザートみたいなカレー。

「やっぱり? ちょっと隠し味、入れすぎたかも」
彼は少し恥ずかしそうに言う。

「何入れたの?」

「君のこと考えながら作ってたら、気づいたら……はちみつ、3周くらい回してた」

「そりゃ甘いわ」

「君が笑ってくれるなら、それでいいかな」

そう言って、彼はスプーンを片手に、にっこり笑う。

猫はテーブルの下でごろりと寝そべって、
その空気を読んでるような、読んでないような顔。

ふたりで顔を見合わせて、「ふふ」と笑ったその瞬間、
世界が一段、やさしくなった気がした。

テレビもつけず、スマホも見ず。
ただ甘すぎるカレーと、甘すぎる時間に包まれて──

「ねぇ、次は一緒に作ろっか」

私の言葉に、彼と猫がそろってこちらを見る。
それだけで、今日はもう、充分だった。


---

(みっちーside)

あいしてる
いとおしい
のよきみが
いつまでも
ちかうよ
げんきでいると
きみのそばで


---

(あおside)

ほんとうはね、
しずかに想ってるだけでよかった。
ふりかえるたびに、君がいたから。
るんと心が弾むのも、君がくれた魔法。
よるがふけても、想ひ浮かぶのは君。
るり色の夜空にも君の笑顔だけ浮かぶ。
のこり香みたいに、胸の奥にそっと。
あいたい気持ちは、ふくらむばかりで。
いつしか私の世界の光になった。
こいってこんなに静かで優しいんだね。
ときを越えても、きっと私は君を選ぶ。
ばしょはどこでもいい‥

君のとなり──それがわたしの帰る場所。


---

(みっちーside)

〜手紙〜
元気にしてる?
ちゃんとご飯たべてる?
仕事忙しくても、ちゃんとたべるんだよ?
すぐ食べれるように、レトルトカレーとかカップ麺いれてるから。

たまには、うちに帰ってきなさいね。


---

母親には、全部お見通しのようだった。

「来週の休み、久しぶりに実家に帰るか」

夢の中のようにカレーを作ってくれるような彼女なんていないし、
もうしばらくは、家族との時間を大事にしようと思った。

枯れーる前に相手が見つかるといいな。
カレーだけにね。

……自分で言ってて、辛(つら)いね(笑)

「なんて、妄想ばっかしてないで、そろそろ仕事行かないとなぁ」

妄想のような相手はいない。
でも今は、できることをやっていこう。

俺の仕事は、荷物の配達。
今日も、いろんなお家に届けに行く。

「ん、配達はここのお家だな」

荷物を届けるために、呼び鈴を鳴らした。

ピンポーン──。


---

(あおside)

「おまえの作ったカレーが食べたい」

そう言われたのは、いつだったか。

「お友達も一緒にどうぞ」
「いや、俺もまだ食ったことないのに、あいつにはもったいない!」

そんなやりとりを思い出す。
結局、カレーを食べてもらえることはなく、私たちは終わった。

暑い中、愚痴ひとつこぼさず、淡々と働く彼が好きだった。

彼が少しでも心地よく生きられるように、私の全力で労らせてほしかった。
「おいしい」「お風呂気持ちよかった」
彼の快適を整えて、彼が笑顔になるのを見たかった。
彼のそばで、生きたかった。

一人暮らしも長くなると、誰かの「おかえり」が恋しくなる。

だから今日も──
猫とカレーと、少しの妄想で、生き延びている。

ピンポーン。

「あれ? 何か頼んでたっけ? ……はーい」


---

#荷物がつなぐ物語#傷心のふたり#幸せな妄想#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル


~○~○~○~○~○~○~○~○~

編集後記 〜カレーのあとに〜

(みっちー)

うーん、合作って初めてで。
今までは、自分の書きたいことをただ殴り書きする感じだったけど、
あおさんサイドの描写で、しっかりストーリーができていくのが本当にすごいと思った!

一人でやってたら、ただのアラサーの妄言になってたな〜笑


---

(あお)

みっちーがこの星に降り立ったあの日の衝撃は、今でも忘れられません。
マスカットに愚痴寿限無──太刀打ちできなかった。圧倒的な敗北感。

創作は戦いじゃないけど、
みっちーの作品にのっかってみたいのに、“手も足も出ない”。そんな感じだった。

今回、「合作しよう」と声をかけたのは私から。
ほんとはね、みっちーワールドに翻弄されてみたかったの。

だけど──

「とりあえず何か投げて」の無茶振りに返ってきたのは、
あまりにもかわいい、きゅんきゅんなカレーのお話。

その瞬間、一気にラストまでのイメージが湧いてしまって。
みっちーワールドで踊るつもりが、
気づけば、あおワールドに連れてきちゃってました(笑)

忙しいお仕事の合間に、
このわがまま企画を快く引き受けてくれたみっちーには、感謝しかありません。
みっちー、本当にありがとう!

そして実は──
今回の投稿に添えた、夕陽を閉じ込めたような幻想的な一枚も、みっちーの作品なんです。
文章だけじゃなく、写真にも命を吹き込めるなんて……もう、ほんとに多才すぎて尊敬しかない!うーん、やっぱ完敗!(笑)

さらに今回、途中に登場する“あいうえお作文”は、
みっちーの投稿に、私が返歌として綴ったもの。
物語にぴったりだなと思って、そっと差し込んでみました。

──みっちーとあおの音色、いかがでしたか?
響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
参加
ことばりうむの星ことばりうむの星
GRAVITY24
GRAVITY51
あお🫧

あお🫧

《合作作品》
天雲 × あお
『ひまわりと あさがお と かすみそう』


---

「ひまわり~あおへ~」

ひとつの方向に
まっすぐ伸びて、
わらうように咲く、
りっぱな夏の顔。


(天雲さんへ)
そっぽ向いたって、バレてるし、
ん〜…でもまあ、うれしいかも。
なつの太陽と、勝負してるの。
にっこり咲いた、今日のわたし!
ほめすぎだってば…ほんとにもう。
めを合わせたら、照れて枯れちゃう。
らんまんの夏、笑って咲くよ。
れいかにも負けない!
るんるん♪
ときどきは、風にゆれてたい。
てれちゃうくらい、まぶしい言葉。
れんぞくで言われたら‥
るーぷもういい(笑)。
なつの顔って‥ありがとう。


---

「あさがお~天雲さんへ~」

あなたの声が、
まっすぐに届く。

さりげない一言が、
私を立ち止まらせる。

がんばれ、なんて言わずに、
ただそこにいてくれる──。

おもうたび、
私の心は あたたかくなる。


(あおへ)

ずっと、僕の隣にいてくれる君。

っていうか、気づけば君のことばかり考えてる。

ときどき、僕の弱さを見せるのが怖くなるけど、

あたたかい君の眼差しに、いつも救われるんだ。

お互いの未来が、重なっていくといいな。

のぞみは、ただひとつ。

その細い指を、ずっと離さないこと。

ばかみたいに、君を想うこの気持ちを、

にどとなくしたくない。

いつか、僕の口から「好き」って伝えられるかな。

るり色の空みたいな、君の笑顔は僕の原点。
君がそこにいてくれるだけで僕は強くなれる!

よかったら、これからも僕の「ひまわり」でいてくれないか。


---

「かすみそう~ふたり~」
(花言葉は幸福・感謝・清らかな心・無邪気・親切)

かざらない君の、無邪気で飾らない笑顔が大好き。初めて出会ったあの日から、その笑顔に僕は何度も救われてきたんだよなあ。

するりと、いつの間にか僕の心に入り込んできた君は、運命の人だと確信している。君とだから、どんな困難も乗り越えられるみたい。

みんなが羨むような、最高の思い出をこれからも作り続けたい。君と過ごすすべての時間が、僕にとってかけがえのない宝物だし。

その澄んだ瞳に映る僕が、いつまでも君を笑顔にできる存在でいられますように。そして、僕は君の隣でずっと支え続けるって。

うんと、これから先も、僕の愛を全部君に注ぐから覚悟しててね。たくさん甘やかして、幸せにする。


#ことばで咲いた恋#恋するあいうえお作文#ことばりうむの星#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル



~○~○~○~○~○~○~○~○~

🎼編集後記🎼
(天雲)
合作デビューさせてくれてありがとう!
初めての合作、それは1つのメッセージからはじまった。あお『天雲 × あおしたい』という言葉。初めて誘われて嬉しかったよ!
これを見るみなさんがドキドキして見てもらえれば嬉しいです。

(あお)
天雲さんは、
愛する人の幸せに、祈りのような愛を紡ぐ人。そんなイメージです。
そして、あいうえお作文をいろんな切り口で楽しむ、遊びにまっすぐな人。
わたしは、そんな天雲さんがだいすきです。

「いっしょに遊んだら、どんな世界が生まれるんだろう?」
そんなわくわくの気持ちで合作をお願いしたら、心よく引き受けてくださって。
きゅんが詰まった、とっておきのストーリーが生まれました♪

冒頭の「ひまわり」の“あいうえお作文”は、天雲さんの投稿に、わたしが返歌として綴ったものです。
そこから物語をふくらませて、ふたりで続きの世界を紡げて、すごく嬉しかったです。

今回の合作には、他にも“あいうえお作文”をこっそり散りばめています⭐
いくつ見つけられたでしょうか?

この投稿に添えたひまわりの写真は、天雲さんが撮られたもの🌻
天雲さんの愛や優しさが滲む一枚が、この作品をやさしく彩ってくれました。

天雲×あおのストーリー、いかがでしたか?
響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
参加
ことばりうむの星ことばりうむの星
GRAVITY42
GRAVITY50
あお🫧

あお🫧

《合作作品》
@モ! ×あお

『異音』

ぽんぽこ山に青色たぬき
なにしろ君は、変わってる
腹鼓もふつうはぽんぽこ
君の音はリンリンリン♪

ぽんぽこ山にオレンジの光
降り立ったるはスターマン
銀色タヌキのスターマン
腹鼓は ヘイ、ララ、、♪

たぬきが集まりお月が冴える
月光に光る銀と青と茶
鼓の音がなんだか違うぞ
リンリン ヘイ、ララ
リンリン、wow wow wow♪

薮も木も虫ケラたちも
風も命も笑ってる
リンリン ヘイ、ララ
wow wow ぽんぽこ

大人たちには秘密の話
狐たちにも言わない話
夜が明けて静寂の翆黛
ぽんぽこ山は一人きり

スターマンも青色たぬきも
茶色たぬきさえ皆皆消えて
心弾む鳥たちの歌が
今は山に響いてる

一一一

森のはずれに、夜だけの空き地がある。
そこに、ひとりぼっちの青色たぬきが座っている。
リンリン……
音は響くのに、どこにも届かない。

「ねー銀さん、なんで私の腹鼓は変な音なの?」
夜明け前の森で、青色たぬきがぽつりと呟いた。
白く霞んだ月が、枝の隙間からまだこちらを見ている。
「鳥さんのようにきれいに囀りたいとは言わない。
でも……せめて、たぬきらしく腹鼓を鳴らしたい」

銀色タヌキの銀さんは、星明かりを背にふわりと笑った。
「リンリンは変じゃないさ。
だって、森じゅうがきみの音を聴いて笑ってただろ」

「笑ってたのは……からかってたのかも」
「違うよ」
銀さんは枝の先に止まった風を指さす。
風が鳴った。鈴の音に似ていた。

「風もさ、鳥の真似なんかしない。
風は風の音で森を撫でる。
青い子は青い子の音で森を包めばいい」

青色たぬきはお腹にそっと手を当てた。
月の光はもう白く薄い。
ぽん、じゃなくて――リンリン。
やっぱり変な音だった。

でも、その音のあと、
遠くの山の影から、眠たそうな鳥たちが
こっちを向いて囀った。
まるで、朝がはじまる合図のように。

東の空が、うっすら桃色に染まりはじめた。
林の影は長く伸び、月の光はもう、細い糸みたいに淡くなっていく。
青色たぬきは、こわごわともう一度、お腹を叩いた。
リン、リンリン。
その音は夜の名残を揺らして、森の隅々までしみこんでいった。

――しん、と一瞬だけ、世界が息をひそめた。
そのときだった。

枝先で丸まっていた小鳥が、ひとつ鳴いた。
「チチ……チチチ」
鈴の音に応えるみたいに。

「ほら、聞こえる?」
銀さんが言った。
「森はちゃんと返事してる」

薮の奥で、茶色たぬきが寝ぼけ眼をこすりながら顔を出す。
木の根元では、虫たちがゆっくりと羽音を立てはじめる。
光はやさしく差しこみ、夜と朝の境い目がふわりと溶けていった。

「君の音はね、朝を起こす音なんだ」
銀さんが笑う。
「ぽんぽこも、リンリンも、どっちもたぬきの音。
でも君の音は、森じゅうを目覚めさせる音なんだよ」

青色たぬきは、胸の奥がほんの少しあたたかくなるのを感じた。
風が吹く。
葉がこすれ、鳥がさえずる。
その真ん中に、リンリンと澄んだ音が混ざった。

――それは、まぎれもなく青色たぬきの音だった。

私の音には役割がある。
意味があるんだね。
私が朝を起こす!

そのときだった。
森の奥から、かすかなざわめきが聞こえた。
小枝の下や薮の陰で、動物たちが顔を寄せ合っている。

ひそひそ――

「たぬきのくせにリンリンって、おかしいと思わないか?」
「おかしいさ。ぽんぽこって鳴らないなんて」
「あれは……たぬきじゃないよ」
「何かが化けてるのさ」
「気をつけないと異世界へ連れていかれるぞ」
「気をつけるだけじゃだめだよ。退治しよう」
ひそひそは、やがてざわざわに変わった。

月の光の下で、たぬきも狐も鹿も、互いに目を見合わせる。
誰も一歩も近づかないのに、恐れだけが、夜の森をゆっくりと広がっていった。

青色たぬきは、胸の奥に冷たい風が吹き抜けるのを感じた。
さっきまで、みんな笑っていたのに。
さっきまで、朝が始まろうとしていたのに。

誰かが最初に石を投げた。
小さな音だった。
でも、それを合図に、森全体が彼女を拒んだ。

「出ていけ」
「森を汚すな」
「おまえの音はいらない!」

銀さんの姿は、どこにもなかった。
林の影が長く伸びて、光はどんどん細くなっていく。

森の動物たちは、青いたぬきを森から追い出した。

その夜、森は静まり返った。
リンリンの音は消え、鳥はもう囀らず、
風さえも、耳を塞ぐように止まってしまった。
東の空が白むことはなかった。

森は闇に包まれ、
――二度と朝がくることはなかった。

森を追われて、どれくらい歩いただろう。
月はとうに真上を過ぎ、空の色は夜の奥の、青くて深い闇に沈んでいた。

草は夜露をたっぷり含み、踏みしめるたびにしずくが小さく跳ねた。
風は吹いているのに、音がしない。
虫も鳥も眠ったまま。
森を満たしていたざわめきも、もうどこにもない。

リンリン……

音は響くのに、どこにも届かない。
夜空が、音を飲みこんでしまうようだった。

青色たぬきは、お腹を両手で抱きしめた。
まだ、ほんのりと、朝を呼んだときのあたたかさが残っている。
でも、そのぬくもりも、夜露の冷たさに溶けていく。

――どうして、みんな笑ってくれたのに。
――どうして、あんなにこわい目で見たの。

声にならない言葉が、胸の奥で膨らんでは、夜空に散っていった。
星は遠く、ひとつもこっちを見てはくれない。

「……銀さん」
小さな声が、闇に吸いこまれていく。
返事はない。

木立の向こうでは、もう誰も眠りから覚めない。
夜は長い。
夜だけが、ここにいる。

青色たぬきは、濡れた草の上に膝を抱えた。
音を鳴らすことも、もう怖かった。
鳴らせば、また誰かに見つかる気がした。
それでも、お腹の奥がかすかに鳴る。
――リン……

世界は静まり返っていた。
まるで、朝というものが、はじめから存在しなかったかのように。

一一一

朝が来なくなったぽんぽこ山
青色ぽんぽこもう居ない
鳥は囀りをやめ
猛獣の目が黄色く光る世界になった

茶色ぽんぽこは怯えていた
最初は青ぽんぽこを
次は明けない夜のことを
茶色ぽんぽこは自分たちのことしか考えない

ぽんぽこ山にオレンジの光
銀色ぽんぽこ降り立った
変なぽんぽこまた増えた
礫が流れ、声が後を追う

「お前たちのせいで森に朝が来なくなった」
「そうだそうだ、みんなお前たちのせいだ」
銀色ぽんぽこの手にブラスター
夜が朝に変わるほどの光が発せられ
雷が横ばいに飛び、茶色ぽんぽこの1人を撃った
茶色ぽんぽこ倒れて、周りのぽんぽこは波が引くようにこのぽんぽこから退いた

「お前たちは仲間仲間といいながら
いざ倒れると、このように見捨てる卑怯者だ」
周りの茶色ぽんぽこもう居ない
銀色ぽんぽこ倒れた1匹の茶色ぽんぽこに近寄った
「意識はあるだろう?」
茶色ぽんぽこ動かない
「お前は見捨てられたのだ」
動かぬながらに涙を流す茶色ぽんぽこ

青色ぽんぽこしゅんとして、切り株の上に座ってる
たまにお腹をさすっては、リンと鳴らしてその音を
隠すように目を瞑る
その横にオレンジの光
銀色ぽんぽこ降り立った

「銀さん、、。」
「おいで、帰ろう」
銀色ぽんぽこ手を伸ばす
青色ぽんぽこ逡巡して、手を伸ばしたり引っ込めたり
最後には銀色ぽんぽこの手を取って
ともに空飛ぶ銀の円盤に吸い込まれた

次の瞬間青色ぽんぽこ
山の中の広場に至る
全部夢だったのかと思えば、隣に銀色ぽんぽこ
目の前には数匹の茶色ぽんぽこ
青色ぽんぽこ怖くなり耳がくたりと垂れ下がる

1人の茶色ぽんぽこ、恥いるように
音を消して前に出た
「ごめんね、青色たぬきさん」
もう1人の茶色いたぬき、前に進み出てこう言った
「大人たちは自分が正しいと言うけれど、僕たちは間違ってたと気が付きました」
「大人たちはあなたが朝を奪ったと言うけれど」
「僕たちはあなたが森と会話して、朝を呼んでくれたと信じています」

この森には数百のたぬき
この広場には10に満たないたぬきの数
迫害は免れないけれど、
青色ぽんぽこ友達できた

最初は恐々リン、リン、リン
銀さん横でヘイ、ララ、、。
茶色ぽんぽこ ぽんぽんぽん

青色ぽんぽこ胸の支えが取れていき
リンリン鼓を鳴らしてく
銀色ぽんぽこも調子を合わせ
茶色ぽんぽこは踊りさえする

リンリン ぽんぽこ
へい、らら wow wow

やがて久方ぶりに鳥たちが囀った
森が息を吸い込んだ
木が風が息を吹き返した
東の空が明かるく染まる

世界はこの森の罪を許すかのように明るくなり始め
茶色たぬきはみんなで青色たぬきを抱きしめるのでした


#それぞれの音#友達#ことばりうむの星#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル

𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸

🎼編集後記🎼

(モ!)
続編の続編を書くつもりはなかったのですが
青色たぬきが不憫で不憫で救いたいと思い
書いてしまいました

あおさんから続編の続編の感想はこれ無く
お互い感想を書く段になって
「悪口になってもいい?」
と言われたので、震えております
何よ、悪口ってw

(あお)
数日前、
「モ!さんって…どんな会話にも対応できるし、拾って、回して、“ふつう”というか……社交的なのに、なんで“非社交的”に感じるんやろ?」
——そんな、ちょっと面と向かった悪口みたいな話をしていました(笑)

その対話の途中、ふいにモ!さんが贈ってくれた、たぬきの小さな詩。

ファンとしてはうれしすぎたけれど……「このまま私だけのものにしておくのは、もったいない!」
そう思って、投稿をお願いしたのがきっかけでした。

そこからふくらんで生まれたのが、この『異音』。
久しぶりの、モ!×あおの合作です。
ごちそうさまでした♪
響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
参加
ことばりうむの星ことばりうむの星
GRAVITY
GRAVITY49
あお🫧

あお🫧

《合作作品》
@みっちー ×あお
「歩幅」


(あおサイド)

私は歩幅を合わせるのが苦手。
「変な人」って、よく言われる。
気づけばいつもひとりぼっち。

近づきすぎると息苦しくて、
遠すぎれば寂しい。
そんなめんどうな私。

「着いたよ」
「うん」

車を降りた私は、彼を待たずに歩き出す。

きれい──

変わりゆく景色に心を奪われ、立ち止まる。

辺りが暗くなった頃、
ようやく彼の姿を探す。

と言っても、振り返るだけ。

いつも彼は、変わらず待っている。

私を含めた風景を、静かに見つめながら。

彼のカメラには、後ろ姿の私の写真がたくさんあった。

ねぇ、なんで私なの?

やさしい眼差しに、胸が痛む。

写真に、あなたに、視線を送ってくれる誰かの写真の方が、あなたを幸せにするんじゃない?

「いい写真が撮れた」
そう言って見せる誇らしげな笑顔に、また胸が痛む。

「あのさ、生まれ変われるなら、私はあなたになりたい!」

「え?どういうこと?さては写真の腕に嫉妬してる?」

「ふふ」

そう言って、私は彼を待たずに車へ向かう。


---

(みっちーサイド)

こっちの方がいいかな?

僕はいつも周りに流されてきた。
「優柔不断」や「自分の意思がない」って言われる。

気づけば周りの人に合わせてる。
そんな奴。

でも僕は、自分の意思で彼女といることを望んでいる


「着いたよ」
「うん」

彼女は車を降り、海へと歩き出す。

夕日と彼女が重なった。

「綺麗」

思わず声に出てしまった

あたりが暗くなり、彼女が振り向いた。

僕を探してるように見える。

それがなんだか嬉しい。

パシャッ

思わず持っていたカメラのシャッターを切った

「いい写真が撮れた」
彼女が写った綺麗な写真を見せたくて
近くへ駆け寄った

「あのさ、生まれ変わるれるなら、私はあなたになりたい!」

変なことを言うもんだ
僕は君のようになりたいと思っているのに────
なんて言えずに、おどけてみせた。

「え?どういうこと?さては写真の腕に嫉妬してる?」

「ふふ」

彼女は何故か笑って車へ向かって歩いた。

僕にとってはそんな自由な彼女が好きだった。


---

(あおサイド)

その日も、私は少し先を歩いていた。
潮の匂いと、きれいな貝殻。
ふと足を止めて、しゃがみ込む。

振り返れば、彼はやっぱり少し後ろ。
カメラを構えて、何かを見ている。

「なに撮ってたの?」

覗き込むと、そこには私が見ていた小さな貝殻と、
その向こうに広がる海が写っていた。

「私たち、同じ景色に心を奪われたね。おそろいだね♪」

「うん。でも、君の後ろからだと、君が惹かれた理由がわかる気がする。」

彼はそこで、少しだけカメラを傾けた。

「それに…ここからだと、君の見てた景色に、君ごと入るんだ。」

──その言葉に、胸の奥で何かが静かにほどけていく。
私はずっと、彼が歩幅を合わせてくれていたことを知っていた。
だからこそ、横を並んで歩ける人の方が、きっと彼を幸せにすると思っていた。

でも、違った。

彼は、合わせることを選んでいた。
私のためじゃなく、自分のために。
私ごとの景色を、見るために。

あの日の私たちは、
結局、歩幅を合わせないまま海をあとにした。

それからも変わらず、
私は先を歩き、
彼は少し後ろでカメラを構える。

きっと、この距離が私たちの歩幅。

誰かが見れば「合っていない」と笑うかもしれない。
でも私には、この距離が心地よかった。

私たちは‥‥
この距離感で、これからも歩いていく。

波の音に混じって、風がそっと伝える。
歩幅は違っても、心はひとつ。
互いの景色を尊重しながら、
ゆっくり、でも確かに、歩み寄る。

まだ見ぬ明日へ向かって。


---

(みっちーサイド)

また、海へドライブ
潮風と前を歩く彼女。
彼女は突然しゃがみこんで何かを見つめている

視線の先には小さな貝殻

その後ろに広がる海
いつものように写真を撮る

「なに撮ってたの?」

──綺麗な海とそれに負けない綺麗な君だよ──
なんてキザな言葉が頭に浮かんだがすぐに照れくさくなって、無言でカメラを見せた

「私たち、同じ景色に心を奪われたね。おそろいだね♪」

「うん。でも、君の後ろからだと、君が惹かれた理由がわかる気がする。」
──僕は君に1番惹かれているんだけどね笑

「それに…ここからだと、君の見てた景色に君ごと入るんだ。」

──彼女はずっと何かを気にして、僕との距離を離していたのは気づいていた。
どうせ、「私じゃなく、横を並んで歩いてくれる女性の方がいいよね」なんて考えてるだろうけど。

でもね僕は君といることを選んだんだ。
僕よりも前へ、先に…先に行く君を追いかけていきたいんだ。
これは君のためにじゃなくて、僕がそうしたいから。
自由で、ちょっと天邪鬼なそんな君と居たいから。

他の人から見れば、僕はあの子に振り回されてるように見えてたりするんだろうけど、僕たちはこれがお互いの心地よい距離感なんだよね

僕たちは…
この距離感で、これからも歩いていく。


波の音に混じって、風がそっと伝える。
歩幅は違っても、心はひとつ。
互いの景色を尊重しながら、
ゆっくり、でも確かに、歩み寄る。

まだ見ぬ未来へ向かって。



#海辺の物語#心地いい距離#ことばりうむの星#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル

𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸

🎼編集後記🎼

(みっちー)

今回は私の提案で写真からストーリーを考えるという形にしてみました!
あおさんの創造力には毎度驚かされます。早いのなんの!
切なげで少し甘い 2人の視点で物語をよんで見てください( . .)"


(あお)
みっちーとの合作、第2弾はいかがでしたか?
今回はみっちーの写真からインスピレーションをもらい、そこに写っていない「撮っている人」と被写体の距離感や空気感を描いてみたいと思い、あおサイドからスタートしました。

自己中な女の子(あおサイド)と優柔不断な男の子(みっちーサイド)の関係性も、返歌スタイルを通して自然に表現できたのではないかと思っています。

写真は一瞬の景色ですが、その向こうにあるふたりの心の距離や歩幅の違いを感じていただけたら嬉しいです。

読んでくださり、ありがとうございました!
響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
参加
ことばりうむの星ことばりうむの星
GRAVITY16
GRAVITY47
あお🫧

あお🫧

《合作作品》
@家系ラーメン🤫⛓️‍💥 ×あおのハーモニー🎻

「神とおやつと私」



(家系ラーメンパート)

麦わらの 影の揺らめく
夏の午後 イケメン見つめ
カール貪りし



(あおパート)

麦わら帽子が 風にゆれる
少し色あせた布のリボンに
あの頃の夏が かすかに透けていた

ベンチに腰かける 見知らぬ誰か
白いTシャツ きれいな首筋
伸ばした脚さえ 絵になる配置で
飲みかけのペットボトルさえ
彼の手にかかると 宝石のように輝く

まぶしすぎるイケメン……神!
何をしても 美しい
「ありがとう、ほんとありがとう」
思わず胸の中で 手を合わせる私

片手には 好物のカール
袋を開けると ぽんっと跳ねてくる
あの丸いフォルムが たまらない
かわいいって、正義

でもね……おいしいから
やっぱりこの戦い、カールの勝ちかな

ん?「イケメンの味見、したことないやろ?」って?
味見してみよか?(笑)

「いやいや、おやつの時間に何考えてんの」
自分にツッコミながら
私はまた カールをひとつ、口に放った

でも、ちょっと待って

イケメンは、どこにでもいるかもしれないけど
カールは違う

「カールって、今はもう
 こっち(九州)でしか買えないらしいね」

“限定”という くすぐる冠 持ってるから
やっぱ、あなたが圧勝だよ

そんな会話を カールとする時間

誰も傷つけない
とろける妄想



(家系ラーメンパート)

青空に 舞い飛ぶ帽子 追いかけて
 たどり着いたは 君のもとまで
 これもきっと 風のいたずら



(あおパート)

「エピローグ」

あのベンチ。
あのとき、ひとりで座って
勝手にあなたのこと、神とか言って
カール食べながら妄想してた場所。

今、そこに
あなたと並んで座ってる。

「俺の味、どうだった?」

「……なにそれ、急に……」

カールを口に運びながら
ちょっとだけそっちを見たら、
彼が、ふっと笑った。

「いい時間だったよ。なんか、全部。」

「……うん。わたしも。」

照れるから、
それ以上は見つめられなくて
前を向いたまま、カールをもうひとつ。

「あなたといると、たのしいね」

「うん。俺も思ってた。……ほんとに。」

誰もいない公園のベンチで、
ふたり並んで、カールを食べるだけの午後。

風が吹いて、麦わら帽子のリボンが揺れる。
あのとき妄想してた午後よりも、
すこしだけ、やさしい現実。


#風がつなぐ物語#和歌と散文詩#ことばりうむの星#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル



~○~○~○~○~○~○~○~○~

編集後記
あお「あおとの合作、どうでしたか?」
家系「最初は初めての合作で緊張してましたが、進めていくうちに優しく接していただけて楽しい作品作りをすることが出来ました!」

あお「やってみての感想を聞かせてください」
家系「僕の和歌を最大限活かした作品を作って頂けて、今まで以上にあおさんを尊敬するようになりました笑」(←言わせてません[照れる])

あお「もしまた合作するとしたら、どんなテーマにしてみたいですか?」
家系「今回のようにお菓子をメインテーマサブテーマで初恋を入れた初々しい作品を作りたいですねー」

あお「ことばりうむの星の読者にひとこと、お願いします」
家系「これからも星の為に作品作りに精進するので応援の方お願いします!」



🎼和歌の“余白”に言葉を添えることに、最初は少し抵抗がありましたが、家系ラーメンさんの和歌から風景がはっきり見えてきて、気づけば登場人物たちを動かすのが、とても楽しくなっていました!

和歌 × 散文詩風のコラボ、いかがでしたでしょうか?
響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
参加
ことばりうむの星ことばりうむの星
GRAVITY46
GRAVITY46
あお🫧

あお🫧

「やさしい灯のうまれるところ」
(写真:@らかん  文:あお)

渋滞のテールランプが、
ゆっくりと赤を連ねていく。
街の鼓動にあわせて、
一日の終わりが少しずつ溶けていく。

街灯がひとつ、またひとつと灯る。
まだ頼りない光は、
夜のはじまりを試すように、
淡桃の空へそっとにじむ。

歩道には、
家路を急ぐ人の足音と、
休日を惜しむ笑い声。
どちらも同じ光に照らされて、
同じ空の下を歩いている。

風に揺れる木の葉が、
影絵のように景色を縁取る。
その揺らぎさえ、
暮れなずむ街の呼吸の一部に思える。

今日が終わる。
それだけのことが、
どうしようもなく美しい。

#淡桃の空#都市の呼吸#ことばりうむの星#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル
響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
参加
ことばりうむの星ことばりうむの星
GRAVITY4
GRAVITY45
あお🫧

あお🫧

《合作作品》
@MEGMU ×あお
『花火』

(MEGMU)
華やかな装い
流れる夜風
美麗な宝石たち

ふと、零れた雫
気付いた大切な気持ち
『貴方』の存在の大きさに…

(あお)
あの夜の記憶は、まだ肌に残っている。
浴衣の裾が揺れて、すれ違う人の香りに、夏が混ざる。

屋台の灯りも、金魚すくいの水面も、
全部が“楽しげ”で、
私はただ、それを横目に歩いていた。

打ち上がる音がした。
高く高く、夜空を引き裂くように──
あまりに見事な光が、胸の奥を刺した。

ひとりで見るには、
あまりに大きく、
あまりに綺麗で、
あまりに遠い花火に、私はそっと背を向けた。

振り向いた、そこに。
花火を見上げる男の子がいた。

ひとりで。
人ごみの中なのに、
どこか、ぽつんと置き去りにされたような存在感で。

あんなに綺麗な涙を、私は見たことがなかった。
頬を伝う雫が、光に照らされて、きらきらしていた。
瞳に花火は映っていたが、
心は、もっと遠くを見ているようだった。
それでも、今日の花火に“何か”を込めるように、目を細めていた。

私は、言葉を失っていた。
ただ、その光景に──閃光が走った。

心の奥底が──ずっと暗く閉ざされていた場所が──
彼のその儚い姿に、やさしくノックされたようだった。

恋、とは、たぶんまだ言えない。
でも、
「この人を知りたい」と、
その時、確かに思った。

ひとりで見るには、
あまりに大きく、
あまりに綺麗な、花火の夜だった。


---

(MEGMU)
出来すぎたシナリオ
愛なんか信じてなかった
今まさにこの瞬間までは

容姿が好きな訳でもない
ましてや、会話なんか勿論した事ない
何故か堪らなく離してはいけない衝動にかられた…

(あお)
私は、どうしても目をそらすことができなかった。
その涙は、きっと私の知らない物語を連れていた。

声をかける理由なんて、どこにもなかった。
それでも、言葉がこぼれたのは、
たぶん、私も──誰かに声をかけてほしかったから。

「……花火、きれいですね」

ぴたりと、声が重なった。
お互いが、お互いに言った、その言葉。

「……え」

彼が少し驚いたようにこちらを見る。

「……うん。ひとりで見るには、ちょっと大きすぎたかな」

「聞こえてました?」

「そんな顔してる」

「‥‥」

それだけの会話が、なぜだかあたたかかった。

沈黙が流れる。
それでも、逃げようとは思わなかった。

隣に立って、同じ空を見上げる。
その距離は──たぶん、偶然じゃなかった。

夜空に、また新しい花火が咲く。
オレンジ色のしだれ菊。
紫と白の牡丹。

彼はそのたびに、何かを思い出しているようだった。
私は、そのひとつひとつを、ただ見届けていた。

やがて、彼がぽつりとつぶやいた。

「……忘れたくて来たのに、逆に思い出すなんて、ずるいな」

私は何も言えなかったけれど、
その言葉が、胸の奥に静かに沈んでいった。


---

(MEGMU)
キラキラと輝く花火のように。
年月は2人の距離が縮まるのにかからなかった。
白夜のような景色から始まった2人は、やがてまた、同じ景色を眺めていた。

(あお)
夜空に、音が咲く。
あのときと同じように、でも、違う。

手のぬくもりがあるから。

ふたりで見る花火。
それだけで、夏の夜がやわらかく包まれていく。

「あお、りんご飴、好きだったよね?」

不意に、彼が言った。
懐かしい名前を、優しく呼ぶみたいに。

私の胸が、じんわりと熱くなる。

「……うん。小さい頃、お祭りに行くと、必ず買ってた」
「たぶん、今でも好き」

りんご飴の屋台は、少し先に見えている。
でも、すぐに買いに行く気にはなれなかった。

この一瞬を、もう少しだけ抱きしめていたかったから。

彼の手が、そっと指を絡めてくる。
ぎゅっとじゃない。
触れるだけの、やわらかい繋ぎ方。

でも、それが確かに“今のふたり”だった。

去年の私は、彼の涙に心をノックされた。
今の私は、その手に、日々のあたたかさを感じている。

「……あのとき、声かけてくれてありがとう」

「こっちこそ。あのとき、泣いててよかった」

ふたりして笑う。
なんでもない会話なのに、胸がいっぱいになる。

夜空に、金色の大輪が開く。

その光のなかで、私は彼の横顔を見る。
まっすぐ空を見上げるその瞳が、少しだけ潤んで見えたのは、
花火のせいか、記憶のせいか。

言葉にはしなかったけど、
私は、手を少しだけ強く握り返した。

来年も、また、こうして花火を見られたらいいな。
そんな未来を、静かに願いながら。


#出会いの物語#花火と涙と#ことばりうむの星#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル


~○~○~○~○~○~○~○~○~

🎼編集後記🎼

(MEGMU)
鳥肌と涙止まらんかった…
この遊びハマりそう笑

(あお)
朝、目覚めてすぐに見た「ことばりうむの星」の投稿──
そのことばに衝撃を受け、まっしぐらにアタック。
思いがけず、快くOKをいただき、こうして生まれたコラボ作品です。

まだお互いのことを深くは知らないけれど、
それでも、紡ぐ“ことば”が呼応し合って、物語が動き出す。
そんな不思議で、とても楽しい時間でした。

MEGMUさん、本当にありがとうございました。

MEGMU× あお のハーモニー、
みなさんにはどう届きましたか?
響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
参加
ことばりうむの星ことばりうむの星
GRAVITY19
GRAVITY43
あお🫧

あお🫧

《合作作品》

みっちー × あお
「いちょうのベンチ」


---

(あおサイド)

銀杏の葉が、空からひらひらと落ちてくる。
落ち葉を踏むたび、ぱり、と小さな音が弾けた。

私はベンチに腰かけ、色づいた木々と、移りゆく雲をぼんやり見上げている。

きれいだな。

秋の高い空は、意識を遠くへ連れ出す。
風に乗って世界中を旅し、まだ知らない町や、これから出会う物語を訪ね歩く。

誰にも邪魔されず、景色を感じ、想像をふくらませる──
それが私のごほうびタイム。

秋の公園には、元気に走り回る子どもたち、
おしゃべりに夢中のママたち、
そして手をつないで歩く恋人たち。

みな一様に、幸せそうに見える。

私も、幸せだ。

……でも、にぎわう公園で妄想に花を咲かせる、結婚適齢期女子。
端から見れば、少し痛々しいかもしれない(笑)

いつものように、ひとりで空想の森をさまよっていると──

「すみません、この隣、いいですか?」

顔を上げると、あなたが片手に缶コーヒーを持って立っている。

公園のベンチは、ほかにもいくつも空いている。
……なんで、ここ?

「どうぞ」

とりあえず返事はしたけれど、心の奥で小さく警戒灯が灯る。

腰を下ろしたあなたの足元に、金色の落ち葉がひらりと舞い込んだ。
それを拾い上げ、ひょいと私の膝の上に置く。

「きれいな色ですね」

短い一言。
なのに、風の匂いが少しだけ変わった気がした。


---

(みっちーサイド)

今日は仕事が休み。
よく来る公園で何か飲みながらゆっくりするのが自分流の休日の過ごし方。

自販機でコーヒーを買い、いつもの定位置のベンチへ …

あれ?先客がいる。

珍しい、このベンチ、木の影になっていてあまり座る人が居ないのだが、ここからの景色が1番綺麗だからいつもここに座っていた。

どうしてもそこが良かったので──

「すみません、この隣、いいですか?」

声をかけた。

「どうぞ」

っと返ってきたものの、彼女は明らかに警戒しているような顔でこちらをちらっと見た。

まあ、気にしないけどね。


---

(あおサイド)

ベンチに腰を下ろした時、銀杏の葉が足元に落ちてきた。

ベンチに腰かけたあなたは、足元の銀杏の葉を拾い上げ、そっと私の膝に置いた。

「きれいな色ですね」

その仕草に、少し警戒していた心が揺れる。思わず口をついて出た。

「……このベンチ、景色が一番きれいに見える場所なんですよ」

あなたが驚いたように顔を上げる。

「もしかして…あの?」

私もうなずく。

正面の池に映る銀杏並木。
ちょうど噴水が上がるタイミングで、水面に光の帯が走る。

その瞬間、左右の水筋と映る雲や銀杏が重なり、淡い金色のハートが一瞬浮かぶ。
水面にはハートが映り、二つを合わせるとまるでクローバーのように見えた。

水の揺らぎに反射して形は一瞬で崩れるけれど、その奇跡が私たちの心の距離をそっと縮めるように感じられた。

「……見えました?」
「うん、ハートだ」
「二つ合わせたら──」
「……クローバー!」

目が合った。

その笑顔に、胸の奥がとくんと跳ねる。
小さな反射のクローバーは、私たちの手と手が自然に触れ合う瞬間と重なり、二人の時間をほんのりと照らしていた。

そこからは、時間が溶けるように過ぎた。
コーヒーの話から、好きな音楽、旅の思い出、子どものころの失敗談まで。
笑いすぎて頬が痛くなるほどだった。

翌日も、その次の日も、そしてまた次の日も、気づけば毎日、このベンチで会っていた。

噴水のハートとクローバーの瞬間を何度も一緒に見た。
水面に揺れる小さなハートを、二人で追いかけながら手を触れ合い、触れた手をもう離さなくなった。

幻想的な光景は、日々の何気ない時間に静かな温もりを添え、二人の距離をゆっくりと溶かしていった。

一緒にいる時間は、ただ楽しいだけじゃなかった。
ふと視線が合うたび、胸が温かくなる。
あなたの隣、それがだんだんと私の日常になっていった。

楽しい時間を重ねるごとに、あなたへの愛おしさが少しずつ増していった。
気づけば、自然に未来のことを思い描くようになっていた。

手を重ねるたびに感じるこの大きくて温かい手の感触──
そのぬくもりに触れると、この手を大事にしたいという気持ちと、もうこの手以外では幸せを感じられないという確かな思いが、胸の奥に静かに満ちていった。


---

(みっちーサイド)

彼女もここからの景色が良いと分かっていてこのベンチを選んでいた。

僕には見えていないクローバーまで。
まるで僕はたくさんのクローバーの中で四葉を見つけた気分だった。

目が合い、笑い合う。
自然と触れ合う手。

秋なのに暑いと感じるほどに、2人の感情は高まっていた。

その暑さで、氷が溶けるかのように時間はすぎて、何気ない話をした。
お互い笑いあって頬が痛い!

その日から、次の日も、その次の日も毎日ベンチで会っていた。

2人だけの特別な時間。
何度も見たハートとクローバー、自然に握り合う手。
一緒にいるだけで心があたたかくなる。
彼女の隣が、居心地よかった。

彼女への好意は日を重ねる毎に強く、あつくなっていった。
お互いに何も言っていないのに、二人で暮らしている情景まで浮かんでいるぐらいに。

僕は覚悟を決めた。

───彼女に告白しよう。


---

(あおサイド)

ある朝、目が覚めるとスマホに通知があった。
あなたからの短いメッセージ。

──「もう会わない方がいい」

一瞬、意味が分からなかった。
何度読み返しても、言葉は変わらない。

公園に行った。
いつものベンチは、黄金色のいちょうの葉にすっかり覆われていた。
まるで、私たちの時間をそっと埋めてしまうかのように。

昨日までの笑い声は、落ち葉の下に沈んでしまった。
触れ合ったぬくもりは、冷たい風にさらわれていった。

もう、このベンチであなたと並んで座ることはない。
私の隣にあったはずの未来は、葉の隙間からすり抜けて消えていった。

──クローバーは、一瞬の幻だったのかもしれない。

それでも、あの日見た光のハートだけは、心に焼きついたまま離れない。


---

(みっちーサイド)

告白……緊張する……

今日は早めに公園へ行こう。

鏡を見て身なりを整え、髪型バッチリOK。
よし行くか!の前にもう一度鏡で確認……

今日の自分の格好がいつも以上に気になってしまう。

今度こそ出発!

家を出て、いつもの公園へ向かう。

あと10分ほどで公園につく。
いつも以上に心臓のドキドキがはやい。

あとはこの道を真っ直ぐ行けば公園だ。

しかしその途中、僕は倒れて、病院に運ばれていた。

医者には余命が短いことを知らされた。

頭が真っ白になった。

何も考えられない。

ただ彼女の事だけは頭の中でぐるぐるぐるぐる。

彼女に悲しい思いをさせてしまう。
迷惑かけてしまう。

そう思った時には、本当は言いたくない言葉を送っていた。

「もう会わない方がいい」


---

(あおサイド)

“メッセージの送信に失敗しました”

何度送っても、同じ表示。

せめて理由が聞きたかった。
「会わない方がいい」──その言葉の意味を。

私、何かしてしまったのだろうか。
言い訳も聞きたくないほどに、嫌われてしまったのだろうか。

答えのない問いが、夜ごと胸を埋め尽くす。
眠りかたを忘れ、食べ方も忘れ、笑い方さえ忘れてしまった。

気づけば、目の前にはあのベンチ。
近づくこともできず、離れることもできない。
私はあの日のまま、時を止めてしまった。

記憶の中には、鮮やかに色づくいちょう並木。
けれど現実に広がるのは、色を失った世界と、灰色に沈むいちょう。

あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。

声を失った私は、泣き叫ぶことすらできない。

私が何をしたの?
ごめんなさい、ごめんなさい……
助けて。

会いたいよ。

声にならないその想いは、秋の風に舞い上がり、金色のいちょうに溶けていった。



#灰色のいちょう#届かない声#ことばりうむの星#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル


𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸
🎼編集後記🎼

(みっちー)
今回も私が撮った写真からの物語合作でした!
ちょうど仕事の忙しいのと重なったり体調不良だったりと、あおさんをかなり待たせてしまったので、深くお詫び申し上げます!🙇‍♀️🙇🏻‍♂️🙇🏻‍♀️🙇‍♂️🙇🏻‍♂️🙇🏻🙇🏻‍♀️
今作はちょっと切なくなってます!
考えながらちょっとセンチメンタルになったりしてました笑

拙いとこがあるかもしれませんが、読んでいただけたら幸いです!

あおさん、ありがとうー!!!

(あお)
みっちーとの合作第3弾も、前作「歩幅」と同様、みっちーの撮った写真から生まれた物語です。

みっちーの撮った写真は、とてもきれいで、切ない写真が多く、実は前作のようにハッピーエンドにする方が難しく感じました。

今回は、とことん地獄のような切なさを描いてみました。
みなさん大丈夫ですか?(笑)

最後まで読んで下さり、ありがとうございます。
GRAVITY

First Love

宇多田ヒカル

響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
参加
ことばりうむの星ことばりうむの星
GRAVITY10
GRAVITY42
あお🫧

あお🫧

《合作作品》

@まーゆ‎𖤐 ̖́- まーゆ × あお
『ともだち』


---

こ:このお手紙を拾ったひとへ

手紙は、道ばたに落ちていた。
風にさらわれたのか、だれかが置いていったのか。

「と:とんぼの飛んでいく先」──
それだけを手がかりに、わたしは知らない空を見上げた。

「ば:バックはもったかい?」

あ、と思う前に、足が動いた。


---

り:りゅういてんはひとつ
う:うみの青さを辿るように
む:むかしの言葉を拾い集めて
の:のぞく星は君を待ってる
ほ:ほしへつづく道
し:しずかに見つめて
へ:へやのドアを開けてみよ
よ:ようこそ、ことばりうむの星へ!
う:うえを向いてごらん
こ:こころの翼が羽ばたいた
そ:そこで君を待っていた♡

ことばの破片を拾うたびに、
それはまるで、自分の内側を旅してるみたいだった。


---

最後のことばが揃ったとき、
目の前に、光の扉がひらいた。

──「やあ!ことばりうむの星へようこそ!」

待っていたのは、背中に文字の羽をつけた少年。
手には、小さな便せんを持っていた。

「それ、ぼくが書いたんだ。ずっと待ってたんだよ。
君が来てくれるのを。」


---

「……でも、どうしてわたしに?」

「ことばが君を選んだからさ。」

最初はぎこちなかったふたり。
だけど、ことばのかけらを並べているうちに、
ふたりの作文ができていった。


---

あ:あえたね、やっと
え:えがおって、こんなにうれしいんだ
た:たったそれだけが、心をあたためてくれた
ね:ねえ、これから 友達になろうよ

そこには、少し震える字で、「友達になろう」と書いてあった。

わたしは、それを胸にしまい、
おそるおそる、自分のことばで返した。


---

あ:あっ!!こんにちは。
な:なんだか声かけるってドキドキ
た:たくさん話して仲良くなりたい
と:とおもいつつ
こ:言葉えらびって難しいね
れ:れんらくしたいと思っていても
か:体が動かない、ドキドキする
ら:来年も再来年も、ずっと会えますように
も:もぅ1回、あの場所に戻ったらいるかな?
ず:ずっと待っていてくれてたの?
っ:っっっ……言葉が詰まる
と:友達になってほしいなぁ♡


---

少年は笑った。
「それで、じゅうぶんだよ」って。

わたしのことばは、うまく揃っていなかったけれど──
それでも、あたたかく読んでくれた。

まるで、
欠けたところごと、受け入れてくれるように。


---

その日から、ふたりの間に、
一冊の「ことばノート」ができた。

思いついたことを交互に書いていく。
落ち込んだ日も、うれしい日も、なんでもない日も。

ことばのかけらは、少しずつ増えていって、
やがて、ひとつの星座みたいになった。


---

「ねえ、これ、ぜんぶ集めたらどうなると思う?」

「新しい星ができると思う」

「そしたら、次の誰かが、迷わずに来れるかもね」


---

そうしてふたりは、
まだ見ぬ友だちのために、また新しい「お手紙」を書いた。


---

き:きみに届くといいな、この手紙
み:みあげた空に、ことばがひとつ浮かんだ
と:とおくても、心はそばにいるよ

あ:会いたいと思う気持ちは
え:描いてきた、ここまでの道
る:瑠璃色の星が、そっと見守ってる

の:残した言葉が、風に舞い
を:折りたたんだ夢が、また開く

ま:迷ってもいい、止まってもいい
っ:掴まえてほしい、小さなきっかけを
て:手を伸ばせば、君の手に届くから
る:るんとした笑顔で、「こんにちは」を言ってね


---

物語は終わらない。
ことばりうむの星は、
今日も誰かの「こんにちは」や「ありがとう」を、
小さな光にして、宙に放っている。

君が紡ぐ一文字が、
きっとまた、誰かの扉をひらくから──


#こんにちは#出会いに感謝#ことばりうむの星#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル


𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃𓈒𓏸𓂃
🎼編集後記🎼
(まーゆ)
今回初めて合作に参加させて頂きました。あおさんの投稿を見て素敵だなーとメッセージしたことがきっかけでした。
上手いことあおさんの文章に繋がるのかと思いましたが、あおさんの文章があったことで私の文章が形になることができました。
読んでいるとドキドキしました。
皆さんはどぅ受け止められますか?
またあなたの思った気持ちを教えてください♡

(あお)
いつもの「一緒にあそぼー♪」の体当たりラブコールに、のりよく応えてくれて、この合作が生まれました。
まーゆちゃんの紡ぐことばは、可愛らしかったです。

今回はパート分けをせず、ひとつの物語としてお届けしましたが、
どこがまーゆちゃんで、どこがあおか──わかるかなぁ?

テーマの「友達」を通して、
いつも全力であそんでくれる“星のみんな”への感謝も込めてみました。

まーゆ × あお、いかがでしたか?
響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
響き合う声たち 🎻~自由合作アンサンブル~
参加
ことばりうむの星ことばりうむの星
GRAVITY29
GRAVITY42
あお🫧

あお🫧

《合作作品》
@モ! ×あお
「アカップオブティ」


無限とも思える静寂な空間、
宇宙。
そこを音もなく亜光速で走る船がある。
船名は「サフラゲットビレッジ」
そこの貨物室で、
手のウインチアーム以外大体四角で作られたロボットは同僚のアンドロイドに向かってこう話しかけた。

「ジョニー。僕はほとほと感が鈍い男だ」
髭面のジョニーはほんの一瞬荷物を持ち上げる手を止めた。
「ほう」


「時にだよ、
言葉は現実の模型だ
ただし「本当」のこともあれば
「無意味」なこともある
さらに困ったことに「嘘」の時もある
僕は嘘を見抜く能力が著しく低い」

ジョニーはこれに対してこう言った。
「君は3世代前の量産型とはいえ、人間に遜色のない能力を持った男だ。そんな君でも感は鈍いのかい?」

ロボットは貨物運搬作業の手を止めず、ジョニーに向け180度回した頭で頷いて見せた。
「うむ。僕はそれに対する自己分析をしてみたんだがね、僕は『たとえ嘘でも表面的に取り繕っていれば、というか、もっというと後にもそれが露見に及ばなければそれでいい』と思っているようなのだ」

ジョニーは3メートル四方の貨物コンテナの上に易々と飛び上がり、そのヘリに座って答えた。
「それは開放的だか閉鎖的だかわからん姿勢だね」
ロボットは右手のウインチアームを大変長く伸ばし、コンテナの上にいるジョニーに入れた手のコーヒーを手渡した
「そうなんだよ」

ジョニーは貰った熱々のコーヒーを啜った。
「コロンビア産だね」
ロボットは腕を短く戻して今度は少し首を伸ばした
「そんなわけないだろ」

ジョニーは首を傾げながらぶつぶつ言った。
「これは確かにコロンビア産の味と香りなんだがな?」

サフラゲットビレッジはそんな会話はお構いなしに、白鳥座へと進んでゆく

***

ふたりがコーヒーについて言い争っている最中、
貨物室の天井からふっと、音もなく光の粒が降ってきた。

重力を忘れた塵のように、ゆっくり、ゆっくりと。
その光が床に触れた瞬間、空気が押しつぶされたように波打つ。

光の中心に──宇宙人が立っていた。

「アーアー」

ジョニーの眉がひくりと動き、ロボットのアームが微かに震える。
その宇宙人は、まるでラジオのチューニングのような声で、誰にも属さない言葉を続けた。

「真実は、感覚が作るんじゃない?」

ジョニーはマグカップを見下ろした。
ロボットは、自分のセンサーにはない「味」という概念を思い出そうとした。

「わかんない?
君たちの舌が、世界を作っているだけさ」

***

「あー」
ジョニーは何か気の利いた挨拶を宇宙人にしようとした。その結果出たのが、
「ハロー。」
冴えない挨拶だった。
「「ハロー」」
宇宙人と、なぜかロボットまでもが挨拶を返した。

ロボットは少し考えていた
「ねえ、君、硬いことを言うようだけど搭乗パスは持ってるの?」
宇宙人はイタズラをするときのこどみたいに笑った
「その質問をパスしてもいいかい?」
ロボットは黙ったまま、目からスキャン光線を出して、宇宙人の頭から明日のつま先までを検査した。
「んー」
ロボットはそう言ったきりで、宇宙人は何も言わなかった。
ロボットはスキャンをやめてこう言った。
「じゃあこの質問なら答えてくれるかな?」
宇宙人は笑顔のままこう返した
「当ててみようか?」
ロボットは、
「ほう」
とうなる。
「コーヒーか紅茶か?だろう」

ロボットは宇宙人から目を逸らし、ジョニーへと顔を挙げ大声で言った。
「凄いよこの宇宙人、僕の質問を前もって当てたよ」
コーヒーを啜っていたジョニーはその手を止めて、大声で返した。
「そりゃすごい、何がすごいって、君紅茶も出せるんだね」
ロボットは
「おい」
と言ってピポピポ笑った。宇宙人も横で笑った。

「ところで宇宙人さん、おたくの言うことは一昔前なら問題のない発言だったが、今は危険だぜ」
ジョニーはコンテナの上からこんなことを言った。
「多様性の社会だからかい?」
宇宙人の返事にジョニーは狼狽えた。
「話が早くて怖いね」
ロボットが
「だろ」
とジョニーに同意しながら、答えを待たずに入れた紅茶を宇宙人に渡した。

宇宙人は
「コーヒーが良かったのに」
と寂しそうに言った。
ロボットは
「僕、感が鈍いから」
と弁解し、ジョニーまでコンテナの上から
「彼、感が鈍いから」
とトドメをさした。

「昔はね」
とめげずにロボットは言う。
「そういう哲学をするのは、オリジンだけだった。」
宇宙人は、
「弁当かい?」
といった。
ジョニーは静かだったが、ロボットは
「えっ」
と驚いて、思考スキャンをした。目が虹色に光り、ピポピポ電子音が響く。
たっぷり17秒後、ロボットの目は元の通り黒く戻り、電子音も止んだ。
「やっと見つけた、オリジン弁当、、、。2000年前に地球の人間が作ったお弁当屋さんだ」
ジョニーが感心した声を出す
「古いなぁー」
ロボットも首を振る。
「いやぁー」
宇宙人もそれに加わる
「古いねえ」

「人間、、。オリジンは最初から自らをオリジンと呼んでいたのかい?」
ジョニーの質問にロボットは少し迷惑そうに、
「えぇ」
と唸ってまた目を七色にピポピポ言い始めた。検索を待たず宇宙人が口を開いた。

「人間がオリジンと呼ばれるようになったのは、アンドロイドやロボット、サイボーグや地球外生命体と接触するようになってからだよ」

「じゃあなぜオリジン弁当なんだろう?」
ジョニーの疑問は尽きない。

いつしか検索を終えたロボットが笑いながらジョニーに向かって言った。
「人間弁当って意味の方が気持ち悪いだろ」

「それもそうだな」
ジョニーも笑った。

「5感だけが世界を作る。5感が知り得ないものは知ることができない。5感の知り得ない超次元を考えることは理性の過信からくる、いわば暴走だ」
宇宙人は意のそまぬ飲み物を飲みながらこう言った。
ロボットとアンドロイドは
「うん」
と簡単に答えた。

「しかしね」
と切り出したのはロボットだった。
「5感と言ってもな、オリジン、サイボーグ、アンドロイド、ロボット、地球外生命体、有機生命体、また個体差でそれぞれ変わるからなぁ」

ジョニーは頷いて、空になったマグカップをそっと、コンテナの上に置いた。
「それぞれ同じ世界を見ながら、違うように感じてるってのはわかるけどね」

***

光の粒が床に消えてからも、貨物室の空気はまだ微かに振動していた。

「……おかわり、いいか?」
ロボットが無言でアームを伸ばし、湯気の立つポットから新しいコーヒーを注ぐ。
ふわりと立ちのぼる香りが、貨物室の冷えた空気をやわらげた。

ジョニーはコンテナの端に座り直し、マグカップを握りながら宇宙人を見つめた。

「それにしても、君の“感覚”ってやつは予測できないな」

宇宙人はにっこり笑い、指先で宙の光を撫でた。
「予測できるのは、ただ可能性だけさ。
君たちが世界をどう感じるかまではね」

ロボットは腕を組み、虹色のセンサーを微かに光らせた。
「なるほど。感覚で世界を作るなら、観測者が増えれば宇宙は無限に変化する、と」

宇宙人は少し首をかしげ、ふっと笑った。
「たとえばここに、いっぱいの紅茶があるとするね。
僕にとっては a cup of tea──ほっと一息の光景。
でも、ダニさんにとっては、死の熱湯プールかもしれない」

ジョニーは眉を上げ、ロボットのセンサーがピクリと反応した。
「事実はひとつでも、世界は違う。
歴史上の人物だって同じさ。
たしかに“過去に生きた誰か”だけど、語り継がれるたびに脚色されて、
見る人の数だけ別の姿になる」

「つまり」ロボットが言う。
「真実は、観測者の数だけある」

ジョニーはマグカップを傾け、コーヒーの香りを深く吸い込んだ。
「この匂いも、俺の宇宙なんだ」

宇宙人はゆっくりと首をかしげた。
「面白いことに、君の“宇宙”は君だけのものなのに、僕も感じられる。
観測者は増えるほど、世界を豊かにするのかもしれないね」

ロボットは小さくうなずき、コンテナに背中を預ける。
「では、もし君が紅茶派だったら、俺たちはまた別の世界を味わっていたというわけか」

ジョニーは笑い、コーヒーを一口啜った。
「そうだな。
でも、同じ部屋で笑えるってことは、やっぱり世界の共有はできるんだな」

宇宙人は光の粒をひとつ飛ばし、ゆらりと宙を回る。
「結局、真実も感覚も、観測する者の手の中にあるんだ。
世界を作るのは、宇宙でも、コーヒーでもなく──君たち自身なんだよ」

貨物室の静寂に、三者の笑い声が柔らかく混ざる。
そしてサフラゲットビレッジは、音もなく、白鳥座へと滑り続けた。


#観測者の宇宙 #コーヒー哲学 #ことばりうむの星#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル
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《合作作品》
@モ! ×あお
『魚とトンビと僕』

***

「栄光」

沈んでいる

黄金の塊が沈んでいる

魚には見えていた

胸裏にミミズはどこかななどと考えている

そう、拾わない

空高くトンビが飛んでいる

水中の輝きは見えていた

黄金だなとトンビは思う

だが、拾わない

存在理由が見つめていた

世間も見つめていた

ああ、黄金だなと

だが、拾わない

そこで、僕は潜水服に身を包み

黄金のそばに寄ってみた

右を見て、左を見て

手を伸ばすが しまいには顔を赤くして

拾えなかった

そう

僕も拾えなかった

***

「自分という審判」

人はなぜ、外側の輝きに惹かれるのだろう。
肩書きや称賛、光の当たる場所。
あのまばゆさは、他者のまなざしという燃料をもらって
はじめて灯る一瞬の炎なのかもしれない。

私は…。
自分の評価だけで生きている。
だからこそ、老いがこわい。
怪我がこわい。
それらは、私の「評価軸」を脅かすから。

他人のまなざしが不要なかわりに、
自分という審判は、容赦がない。
若き日の私に、今の私が敵わないと知るとき、
心の中で静かに判決が下される。

あの頃の私の眼差しが、いまも私を裁く。
あの速度、あの冴え、あの無垢な光。
たしかにあのとき、私は栄光を生きていた。

けれど、それは“過去の栄光にすがる”というより、
“過去の自分に認められたい”という祈りに近い。

誰の拍手もいらない。
ただ、自分が自分を讃えられるように。
そのために、私は今日も、
沈んだ黄金のそばで、息をしている。

***

「黄金像」

黄金像が追ってくる

暗い迷宮の中

光を放ち追って来る

黄金像はガシャガシャ音を立てている

一歩、二歩と小うるさく

出口はまだ見当たらない

ただ、追いつかれてはならない

それは確かだ

また見つけなくてはならない

それも確かだ

出口では無いと心に思う

では何を?

わからない

宝なら後ろから迫って来ている

なぜ逃げるのか

逃げ切れるのか

黄金像は懐かしい光を放ち追ってくる

***

「老いない光」

「心が老いない」というのは、
まだ “べき” が燃えているということ。

けれど肉体がそれに応えられなくなったとき、
“創造する手段” を失う恐怖がそこに生まれる。

それは「死」よりも生々しい――
“生きているのに届かない” という喪失。

けれど、肉体が衰えても、
心が感じ、考え、創ることを続けるなら、
“老いない光” がそこに宿る。

「やぁー!」と黄金像と対峙してみる。



「眩しいねん。服着ぃやw」


#栄光の残響#対峙の時#ことばりうむの星#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル
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《合作作品》
@モ! ×あお
『化け物とコーヒー』

***

『その夜』

「どうか私に安らぎを」
そう言ったのは誰の唇だっただろうか?

キャンドルの火が揺れている
オレンジ色の土壁に、投影された影が
化け物のように大きくなったり、揺れて消えたり

その化け物は自分ではないのか?
あの声もまた自分ではないのか?

「ああ、私は化け物だ」
そう語ったのはどこの場所だったであろうか?

皆皆死に絶えて、声も聞こえない
薄ら寒い深夜3時

ガラスを隔てた向こうに見える
街灯は遠く、立ち止まっている
闇に押しつぶされるのを待っているかのように

あの街灯は自分ではないのか?

近くに見える塀は黒く、
闇夜に浮かぶ、雲も黒い

夜の匂いは透徹で
遠吠えをする犬さえ死に絶えていた

耳をつんざく静寂に
祈りを込めてこう言った

「どうか私に安らぎを」

墓を出た亡霊は部屋で呼吸をしている

***

『朝のささやき』

薄ら寒い深夜3時
そりゃ闇も深くなる

化け物の体にゃちときついが
朝の陽を浴びよう
肩の重さはまだあるけれど
光がほんの少し、背中を押してくれる

「おい、化け物よ」
心の奥の声が笑う
「今日も生きるんだ、まあ、ほどほどにな」

目を開けると、窓の外の空は淡く青く
闇はまだ片隅にいるけれど
私は息をして、足を踏み出す

朝のぬくもりは、ちょっとした贅沢
化け物だって、笑いながらコーヒーを飲める

***

『お昼だボンボコボン』

カフェインで目が覚めた化け物は書類に追われる。

安らぎは未だない。などと言っていると課長に睨みつけられた。

右に飛んで左に跳んで
昼のオフィスは大童

今はあの静けさがただただ恋しい


#化け物日和#コーヒーのある風景#ことばりうむの星#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル
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《合作作品》

「未知との遭遇」

@ポリポリ ×@トモモ ×あお


(ポリポリ)
I
意味から読み解きたい漢字
絆(きずな)(ほだし)

N
んん~
(きずな)は言わずもがな美しい
(ほだし)は問答無用で制限してくる鎖のようなもの
自由であるはずの思考ですら…

T
てことは…友達って何だろうね
何のためにあるんだろう
私はいつも自分に問う

J
自由には責任が伴うって言うじゃない?
誰を友達にするのも自由
だけど「これからは友達だね」って言う側は想像もつかない何かを期待してることがある
「うん、そうだね」って答えた時から、ある程度それに応える責任が生まれるものだとしたら…


どうしてそんなに悩むの?って??
それが(ほだし)にしかならない事があるのを私は何度も経験してきたから


嘘抜きで、友達をノリだけで決める選択肢は持ち合わせてない


仕方のない諦めとして、自分にできる事には限界があることを感じてもいる
体力も時間も有限のもの


相手は何をどの程度期待しているか
そのペースに合わせることになるとして、それを歓迎する用意が自分にあるのか
逆に自分の存在が相手にとって(ほだし)になる可能性はないか


一々そんな小難しいことを考えるから友達は多くないし、私はそれでいいと思っていた


思考を働かせ言葉を読み解き、美しい考えに自分を導くのは楽しい作業だ
そんな私が素敵な名前に釣られて訪れてみた星に合作が大好きな女の子がいた
彼女は言葉を自由自在に操って創作する事に何よりも熱量を持っている様子


予想外の展開
「ねえねえ、合作しよ~♪」
なんと屈託のない…
何でも創作していると脳内の快楽物質がドバドバ分泌されるらしい


「う、うん…」創作自体未経験な私。
「合作?何?それ美味しいの??」


把握力はそこそこあるはず…さらにはリアルでじゃじゃ馬呼ばわりされてる私なんだ…
でもこの子には想像を越えた何かがあるぞってピンとくる


?でもその実体は掴めないまま…
脳内アラートが鳴っているのにそれを無視することに慣れていない私は剥き身で動き出した

一一一

(あお)
「あの人変わってるよね」
「まじそれ」

ふん! いいもんだ。私、一人遊びは得意だし。
そう、ちょっと強がる女の子。

でも、本音では思うのだ。
“変”と決めつけずに、おしゃべりできるお友達がいたら……きっと楽しいだろうな。

その気持ちを胸に、私はINTJの星でおしゃべりしてみたい人を探す。
そして、体当たりするのだ。

「ねー遊ぼ!」

野良猫みたいに、自由でちょっとクールなINTJの女の子。
でも、体当たりは簡単には受け止めてもらえないこともある。

「……“挫ける”という言葉は、私の辞書にないの!」

私はまた、声を張る。
「ねー遊ぼー!」

何度でも、何度でも。

一一一

(トモモ)
"みんな"の言動を見ていれば、すぐに分かった。
変なのは自分の方だって。

ニコニコしてるだけなら簡単。
"変"な私は黙ってた方が、みんなにとって効率がいい。
……分かってても、ちょっとずつ疲れる毎日。

「ねー遊ぼー!」

ふらりと立ち寄ったその星には、跳ね回るように色んな人へ声をかける子がいた。

勇敢な子だな、私には到底できないな……。
"みんな"のことを気にしないで、自由におしゃべりしてみたい……だけど。

いつものクセで口を噤んで、ヤドカリみたいに引っ込んで。
ぼんやりとただ眺めていた。

一一一

(あお)
ずっとずっと待ってたんだあ
って、1人で大丈夫なんて嘘 
友達になれる日を夢見た日々  
まるで夢みたいうれしかった  
って心がはずむ、何しよっか  
てくてく歩く?うれしいなっ
たのしい時間を、沢山夢見た
こころからの笑顔が広がるの
野に花びらが舞うみたい…あ
ともに喜びを感じていたいな  
きらきら輝く時間が、瞬いた
をとめな私も愛してねっ、と

一一一

(トモモ)
お友達になりたいって願いが
漣のように寄せて返して満つ
その時ドンピシャだったのさ
一緒に遊ぼうと私の手を引く
澄んだ瞳に照れくさいような
誤魔化しなんてきかない全然
くすぐったいけれど嬉しくて
うーんと悩んでミルフィーユ
冷蔵庫から取り出してお勧め
シェアすればふわりと笑う君
いっぱい紡いでこうと思った
何でもない日を書き残したい

一一一

(あお)
みんなが言う「友達いないの?天然さん?」とか「作るべきだよ」といった押し付けの言葉も、束縛の一種――絆し(ほだし)なのかもしれない。

ちなみに、私の友達の定義は「私のすきな人」。ラベルではなく、固有名詞である。

とにかく、INTJ女って、人口の0.8%。この少なさと、自分基準の価値観を強く持ち、独立志向だったり…、「変人視されやすい」「理解されにくい」一因でもあると思う。

野良猫みたいに束縛を嫌い、警戒心丸出しの愛しきINTJ女たち。

それなのに、私の体当たりに応えてくれた、ポリポリさんとトモモちゃん。両サイドあいうえお作文で、いくよーを軽く無視して持論を展開してくるポリポリさん。

うん、INTJの星で知って、おしゃべりできるまで半年かかったトモモちゃん。

ぐっと心が動く瞬間に…おしゃべりできる喜びを味わう。INTJの相性?さすがに経験不足で、あおにもわかんない(笑)。
「未知との遭遇」──それが今の答え。

うれしい気持ちを胸に、今回は本当にありがとう──また合作しようね(笑)


#友達とは#野良猫女子#ことばりうむの星#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル
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※この作品は“後編”です!ぜひ前編からお読みください。

《合作作品》
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「キノコタウン•クロニクル(後編)」

「キノコタウンが観光で大きくなったのは……表向きだったんだな」

「私は弟を助ける機会をうかがいながら……人間の欲望を見てきた」

ケンイチは、ゆっくりと彼女の方を向いた。
「……君、名前は?」

少女は少し考えたあと、静かに言った。
「リナ」
その名を呼ぶと、不思議と胸の奥があたたかくなった。

リナもまた、同じ感覚を抱いていた。
不安も恐れも、すこしだけ溶けていくような――心の波長が重なる瞬間だった。

「リナ、君はジョーと……外に出るんだ。僕が道を開く」
「でも、それじゃ……あなたが!」
リナの声が震える。

「人間は、弱い生き物だ。でも、弱いままでも……いいと思う」
ケンイチは小さく笑った。
「僕は、それを残したいんだ」

警告灯が赤く点滅し、空気が震え始める。
「ジョー、リナを頼んだ!」

リナは泣きながらケンイチの腕をつかんだ。
「行かないで! 一緒に来て!」

ケンイチはその手を、そっと外す。
「リナ……君に、空を取り戻してほしい」

一瞬、二人の手が重なった。
光の粒が、二人のあいだに舞い落ちる。
時間が止まったような静寂のなかで、ケンイチは微笑んだ。

「──さよなら」

光が弾け、制御装置が破壊される。外へとつながる道が開かれ、リナとジョーの姿は空の向こうへ消えていった。

――夜が明け、銀色の殻は静かにしぼみ、ただの石のようになった。
風が通り抜けるたび、かすかに光が滲む。
それが誰の記憶なのか、もう誰にもわからない。
町は目を覚まし、いつもの朝がはじまる。

ただひとつ、空のどこかで、微かな音が響いた。
それは、名前を持たぬ祈りのようだった。

ーーーー

「つまり、どういうこと?」

ケンイチくんは口についたケチャップを紙ナプキンでぬぐい、それを丸めた。

「だからさ、許せねえってことよ!」

怒声を帯びた涼やかな声だった。
白いワンピースを着たリナは、Mと刻印された紙コップの中のシェイクをストローで吸い上げていた。口元にはマスタードがついていた。
その横にはジョージ・クルーニーがフライドポテトを摘んでいた。
ジョージ・クルーニーの隣には、白面の美少年が恥ずかしそうに座っていた

そこはキアラ市にあるバーガーショップ。
その一角でハンバーグとポテトとシェイクを飲む4人がいた。
ギャラリーがこの4人をして、遠巻きにわいわいしている。
「あそこにいるのはジョージ・クルーニーじゃない!?」
「横に天使のコスプレの女の子もいる」
「その横は子役かな?普通の少年がいる」
「もう1人男装の女の子が居る。綺麗な子だな」

「、、、。ケンイチくん。今、聞こえてきた男装の女の子って我の事かなもし?」

白面の美少年が小声でケンイチくんに話しかける。一人称が我は珍しいと思いつつ、ケンイチくんはこう言った

「もしそうなると、普通の少年ってのは僕か」

ケンイチくんは少し面白くなさそうに言った。

ジョージ・クルーニーは卓上の新しい紙包みを鷲掴みにして、丁寧に開き、中のハンバーガーにかぶり付いた。

「俺は気にしてないよ」

リナは穢れなき灰色の瞳を真顔のジョージに差し向けて言った。

「私が気にするってんだよ!」

リナは心を開くと姉御肌の江戸っ子のように話す女性だった。
ケンイチくんもそれに加わった

「僕もギャラリーに注目されるのは恥ずかしいな」

リナは右手でケンイチくんの肩を叩いた

「そうじゃないっての!」

白面の美少年は頬を赤く染め、消え入るように言った。
「我も恥ずかしい」

リナは、
「弟よ!お前もか!?」
ジュリアスシーザーの今際の際のような事を言った。

ジョージは言った。

「俺は慣れてる」

衆目監視の目には、を省略してジョージは言った。
リナは穢れなき瞳を怒らせてジョージを見た

「お前も、、、。お前たち何聞いてたんだ!」

よこせとばかりに、リナはジョージの手からハンバーガーを略奪し、一口食べられたハンバーガーをガブリと噛み付いた。ジョージは一瞬目をむいて抗議しただけで、卓上の新しいチーズバーガーを手に取り、黙ってこれを食べた。

「キノコタウンの幹部どもが気に入らないの、私は!」

リナは大声で言った。ギャラリーたちが一瞬静かになる。
リナはその視線に気がつくと、にっこり笑ってギャラリーに手を振る。そして小声になり言った。

「弟にやったことも気に入らないし、あの3人が不老不死になってるのも気に入らない。現在進行形で俄然気に入らない!」

ジョージは正面を見ながらチーズバーガーを齧り齧り言った。
「3人って、町長と副町長と神主のことだろ?」

「そう!」
怒気をはらんでいたものの、リナは簡単に返事した。

白面の美少年は身を乗り出して、ジョージ・クルーニー越しにリナに話しかける。絹のような髪の毛がさらりと流れる。

「姉様、我はこの通り元気だし、我らがいなくなったら、あいつらにできることなんて、何もないとおもうぞよ」

リナは唇を尖らせた

「あんた、散々拷問されて、血と涙を搾り取られただろう?」

ジョージはピクリと震え、突然チーズバーガーを齧るのをやめた。
リナはジョージが今の言葉を感じるところがあったのだろうと少し微笑んだ。
リナはジョージの中の義憤に期待していた。
ジョージはチーズバーガーを見つめながらこう言った。

「ピクルスが入ってる」

思惑から大きく外れたリナは目を瞑りワナワナ震えながら俯いた。

「それ僕のチーズバーガーじゃない?」

ケンイチくんは、自分のトレイの中のチーズバーガーの紙包を解き、バンズを剥がしてみた。
果たしてそこには乗ってるべきピクルスがなかった。

「そっちが僕のだ」

とケンイチくんは言った。
ジョージはうんうんと頷いて、半分になった手元のチーズバーガーをケンイチくんのトレイに乗せ、ケンイチくんの解体されたチーズバーがを復元して、つまりバンズを戻して、自分のトレイへと乗せた。

「それはないんじゃないの?」

ケンイチくんは、自分のトレイに残された半分食べられたチーズバーガーを睨み、語尾をあげて文句を言った。

「俺は気にしないよ」

ジョージは真顔のまま、新品になったチーズバーガーをモグモグしていた。横に居る弟はコロコロ笑った。

「おい!」

と、リナが言う。

「気にしろよ!」

リナが左手でジョージの肩を揺すった。

「どっち?」

ゆらゆら揺すぶられながらジョージは尋ねた。
リナは優しく微笑んでこれに答える。

「それは、もちろんハンバーガーのことよ。半分食べたハンバーガーをケンイチくんに渡して、自分は新品のハンバーガーを取っちゃうなんて酷いわ、、、。ってそんなわけあるか!」

リナは紙ナプキンを丸めて、トレイに叩きつけた。ジョージは真顔だがちょっと背中を弓なりに反らした。

「過去だよ、弟が虐待された過去!ジョージ!お前も私とあのキノコの中でずっとみてきただろう!?」

ジョージは目を瞑って頷いた。

「そっちね」

弟は白魚のような手を伸ばし、チキンナゲットを口へと運んだ

「姉様、これはとても美味しい。我は気に入った」

とうとう、リナは激怒した。不甲斐ない男たちを導いてやらねばならぬと決意した。

「お前らもうマックのことは忘れろ!こっからはあのキノコタウンの幹部たちに立ち向かう復讐譚だよ!」

ジョージはナプキンで口を拭うとこんなことを言った。

「リナは人間の欲望を見続けていたし、弟は吊るし切りをされるアンコウのように悲惨な拷問をされていた。2人とも怒らない方が嘘だよな」

リナは、急に物分かりが良くなったジョージの態度に目を丸くした。
弟は黒とうとうとした瞳を差し向け、長いまつ毛のまま、アンコウのとは何かをケンイチくんに尋ねた。
ケンイチくんはすまないが知らないとリナの弟へ答えた。

「我も、」

弟は夢見るような唇を動かした。

「我も、あの者たちは、我の羽をもぎ、足を折り、血と涙を搾り取った者たちは、許すことはできぬ」

リナは片眉を上げた。弟もまた急に物分かりが良くなったことに感じ入り、また言葉の内容にも感じ入ったため、眉だけで返答し、口は沈黙を貫いていた。

ケンイチくんもボソリと呟いた。

「キノコタウン出身の僕からしたら、町長達は家族同然だけど、家族同然だからこそ許しては行けない事がある。」

「お前たち、、、。」

リナは目を潤ませていた。

「やっとわかってくれたんだな」

***

「目には目を、歯には歯を――それでいいのか?」

ジョージ・クルーニーが、先ほどとはまるで違う静かな声でつぶやいた。

「リアムはこんな目にあったんだよ!おまけに、不老不死の力も手に入れて…。黙ってられる訳ないじゃない!」
リナは叫んだ。

「パp……ジョーは悔しくないの?」

「パp?」ケンイチがすかさずツッコむ。

「あー、えっと、うーん。もういっか! あのね、私たちの“パパ”なの。追放したのに心配で、こっそりついてきちゃった(笑)。完全に親バカだよね(笑)」
リナは苦笑しながら、「ジョージ・クルーニーの顔がすっごく好きだったみたいで…」と付け足す。
「だから、作者さんはだいぶジョージ・クルーニーに苦しめられてたみたいだけど、偽物だから安心して(笑)。あ、でも一応、神様なんだよ(笑)」

「えぇぇぇぇーーっ!?」
ケンイチが絶叫する。
「今までのは何だったの!? 演技?」とジョーを見やると、彼は素知らぬ顔でポテトをちびちび食べていた。

「ってか、神様なら、不老不死の力を奪えないの?」
ケンイチが半ば冗談のように言う。

ジョーはポテトを口に運ぶ手を止め、ふっと遠くを見た。
「不老不死は――神の罰なんだ。
永遠に“死ねない”ことこそ、最大の業(カルマ)だよ。」

ジョーは微かに笑った。
「……そう思わんかね?」


#欲望の果て#カルマ#ことばりうむの星#響き合う声たちイベント#自由合作アンサンブル
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