【連続GRAVITY小説】〜Gravity-Link〜外伝ゆかりの決断場所:夜のメインルーム時間:午後11時15分ルームを包む夜の闇は、どこか深くて重い。まぁずは、誰もいない画面を見つめながら、一人の女性を待っていた。あきっくすとの対話を経て、彼は自分の情熱がどれほど身勝手だったかを思い知らされていた。「……来てくれたんだな」マイクがオンになり、ゆかりのアイコンが静かに光った。数日ぶりに聞く彼女の気配に、まぁずの胸が締め付けられる。「俺、あんたがあの夜に残した『いいね』の意味を、ずっと考えてた。……本当に、すまなかった」まぁずの震える声に対し、ゆかりは長い沈黙のあと、落ち着いた声で口を開いた。「……嫉妬していたわけではないの。ただ、あなたの情熱が『声が良ければ誰でもいい』という風に見えてしまったことが、とても悲しかったのよ」彼女の言葉は、まぁずの心の奥底に静かに染み込んでいった。自分は「素直」であることに酔いしれ、一番近くで自分を理解してくれていた人の心を踏みにじっていたのだ。離れた場所から、もちこときびもこの会話を息を潜めて見守っていた。「二人とも、ちゃんと向き合ってるわね……」もちこが小さく呟き、きびも黙って頷く。ルームの守護神である彼女たちも、この二人の行く末を心から案じていた。「ゆかりさん、俺ともう一度、やり直してくれないか」まぁずの切実な願いに、ゆかりはゆっくりと首を振った。「いいえ。今のままの私たちでは、きっとまた同じ過ちを繰り返してしまうわ。だから……私は、あなたと『恋』として向き合うのを、一度おしまいにしようと思うの」「おしまい……?」「ええ。これからは、このルームの大切な仲間の一人として、距離を置いて付き合っていきましょう。それが、今の私が出せる一番の答えよ」ゆかりの決断は、後戻りできないほどに固かった。管理人のあきっくすは、その結末を静かに見届けていた。「私」は、二人が選んだ道の険しさを知っている。だが、それはまぁずが本当の意味で「大人」になるために、避けては通れない道でもあった。しかし、ルームの片隅で、その光景を冷ややかな目で見つめるアイコンがあった。『……ふふ。綺麗な終わり方ね。でも、心に穴が開いた男の人は、とても誘いやすそう』仔猫のつぶやきは、誰にも届くことなくチャットの海へと消えていった。(つづく)#連続GRAVITY小説 #第49話 #この物語はフィクションです #こういうのよくありそう #storysong