【連続GRAVITY小説】〜Gravity-Link〜第三十八話:遠い星の残響、今の灯火 ―きびの視点― ルームの賑やかな声を耳にしながら、私はゆっくりと目を閉じた。まぶたの裏に浮かぶのは、ここではない別の場所――かつての「カナタ」で過ごした日々の景色だ。 あの場所でも、私たちは笑い、悩み、そして激しくぶつかり合った。誰かを想う気持ちが強すぎて、せっかく繋いだ手がほどけそうになったこともあった。多くの絆が生まれ、形を変えていったあの時間は、今でも私の心の大切な場所にしまってある。 ふと意識を今に戻すと、モニター越しに伝わってくるのは、今のルームの「熱」だ。 まぁずさんの真っ直ぐな想い、ゆかりさんの揺れる心、そして二都さんの鋭い執着。彼らのやり取りを見ていると、どうしても昔の自分たちを思い出してしまう。「あぁ、みんな一生懸命に生きているんだな」と、胸の奥が少しだけ熱くなる。 そこへ、テスターさんの冷徹な言葉が響いた。ルームの色が変わってしまうことを予言するような、軍師らしい厳しい問いかけ。 あきっくすさんが守り、けーぞーさんやもちこさん、葵さん、やざわさんたちが支えてきたこの穏やかな場所が、揺らごうとしている。 でも、私は動じなかった。激しい嵐の後にどんな空が広がるのかを、私は「カナタ」で見てきたから。「テスターさん、大丈夫ですよ。どんなに激しい色に塗り替えられても、その下にあるキャンバスは、決して消えたりしないから」 私はマイクをオンにして、そっと言葉を添えた。中心になって引っ張ることは、もう今の私の役目じゃないかもしれない。けれど、もし誰かが道に迷って座り込んでしまったら、その時はそっと隣に座って、過去の経験を物語として話してあげたい。 この「Gravity-Link」が、どこへ向かおうとしているのか。私は一歩引いた場所から、祈るような気持ちで、この新しい星の瞬きを見守り続ける。(つづく)#連続GRAVITY小説 #第38話 #ミステリアスきびさん #カナタ #storysong