【連続GRAVITY小説】〜Gravity-Link〜第三十話:冬の足音と、溶け出す本音夜 21:30 私の音声ルーム 窓の外では、1月中旬の冷たい風が音を立てている。私は一人、自室の椅子に座り、スマホの画面を見つめていた。 そんな寒さを忘れさせるように、スピーカーからはやざわさんともちこさんがコラボ配信をしている賑やかな声が流れてくる。「ねえ、やざわさん。この歌、いっしょに歌いたいな」 もちこさんの弾んだ声がイヤホン越しに響く。彼女がリクエストしたのは、槇原敬之さんの**『冬がはじまるよ』**だった。「外はすごく寒いけど、この歌を聴くと心が温かくなる気がするの」 もちこさんの無邪気な誘いに、やざわさんは一瞬、返信のタイピングを止めたようだった。「……もちこさんがそう言うなら。精一杯、マイクに乗せますよ」 やざわさんの声は少し緊張で震えていた。通信のタイムラグを気にしながら、二人の歌声が重なる。遠く離れた場所にいるはずなのに、画面上のアイコンが並んでいるだけで、二人が特別な関係に見えてくるから不思議だ。 私のルームのチャット欄では、その様子を聴いていたゆかりさんが文字を打ち込んだ。『素敵な歌。でも、やざわさんは少し浮かれすぎかしら』 その言葉に、入室者リストに名前がある葵(あおい)さんときびさんも、無言のままリアクションスタンプで同意を示す。 すると、葵さんがマイクをオンにして、私に問いかけてきた。「あきさん。今度の週末、どちらかの個別通話(個通)に来てくれませんか? ……きびさんと話して決めたんです。私たちのどちらか一人を選んで、じっくり向き合ってほしいなって」 きびさんのアイコンも点滅し、「……お願いします」と、小さな声がネットの波に乗って届く。「感情が入り込みすぎると、ルームの統制が取れなくなりますよ」 いつの間にか入室していた二都(ニト)君が、冷ややかな声で私に警告する。 画面越しの恋心。声だけの選択。 イヤホンの向こう側で渦巻くみんなの想いに、私はどう応えるべきか、一人暗い部屋で考え込んでいた。(つづく)#連続GRAVITY小説 #第30話 #やざわさんリモカラお願いします #最初は打ち上げ花火だったのですが季節的に違ったので変更しました #storysong