【連続GRAVITY小説】〜Gravity-Link〜第二章第二十二話:静寂の対話、歪んだ鏡の正体【 深夜 2:30 / 管理者コンソール 】 ルームのメインチャットは、あきっくすの手によって一時的に「閲覧専用」に設定されていた。猛火のように燃え広がった感情を冷ますための、苦渋の選択だった。『あきっくすさん。3時間が経過しました。』 テスターの無機質な文字が画面に浮かぶ。『これ以上、この傷跡を晒しておく意味はありません。全データの消去、およびルームの強制解散を推奨します。それが、傷ついた彼らへの唯一の慈悲です』「……いいえ、テスターさん。それは慈悲じゃなく、ただの放棄です」 あきっくすは独り言のように呟き、キーボードを叩いた。「僕はまだ、彼らを信じてる。ここで終わらせたら、彼らの『好き』という気持ちまで、嘘になってしまう」【 臨時チャットルーム / 男たちの告白 】 あきっくすは、個別に連絡を取り、まぁずとぽちを秘密のグループに招き入れた。『……あきっくすさん、ごめんなさい。俺、あんなにひどいことを』 まぁずの文字は、先ほどの勢いが嘘のように弱々しかった。『違うんです、まぁずさん……』 ずっと震えていたぽちが、勇気を振り絞って書き込んだ。『俺が、弱かったから。過去にSNSで失敗したことがあって……それを「バラされたくなければ言うことを聞け」って、DMで脅されてたんです。直売会に行けなかったのも、そのせいなんです。俺のせいで、きびさんが犯人みたいに……』『なんだよ、それ……』 まぁずの絶句が伝わってくる。『俺は……きびさんの笑顔が嘘だって決めつけて、自分の正義感を押し付けてただけなのか。……俺、きびさんに、なんてことを』 二人の間に流れるのは、後悔と、そして「同じ痛みを抱える者」としての奇妙な連帯感だった。あきっくすは、二人が自分自身の弱さと向き合い始めたことを確信した。【 ゆかりの涙と、あきっくすの確信 】 次に、あきっくすはゆかりと通話をつないだ。スピーカーから聞こえてきたのは、いつもの落ち着いた事務的な声ではなく、鼻をすする音だった。「……ゆかりさん?」「ごめんなさい、あきっくすさん。……私、ずっと怖かった。完璧な事務局員でいないと、まぁずさんに、あなたに、嫌われるんじゃないかって。だから、きびさんの奔放さが羨ましくて、少しだけ憎かったのかもしれない」 ゆかりの震える声に、あきっくすは優しく応えた。「ゆかりさん。あなたが今日見せたのは、弱さじゃなくて『誠実さ』ですよ。その誠実さが、まぁずを立ち止まらせたんだ」 ゆかりとの対話で、あきっくすは事件の核心に触れた気がした。きびを追い詰めていたのは、外部の黒幕などではない。「カナタ」という理想の自分と、「きび」という現実の自分の乖離——その歪みに付け入るように、彼女自身の自虐心が暴走し、ぽちへの脅迫という形を借りて「自分を壊してほしい」と叫んでいたのではないか。【 仲間たちの灯火 】 その時、管理画面の片隅に、通知がいくつも灯った。『もちこ:あきさん、無理しないでね。明日、美味しいお菓子の写真アップするから!』『けーぞー:状況はわからんが、いつでも戻れるように火は絶やさずにおく。』『ももたろう:あきっくすさん、応援してますよ。』『葵:みんな、待ってます。』 もちこ、けーぞー、ももたろう、葵。ルームを支える仲間たちの温かな灯火が、あきっくすの視界を滲ませた。「……よし」 あきっくすは、一度も既読がつかないままのきびの個人アカウントへ、最後の一通を送った。『きびさん。みんな、泥だらけになってあなたを待っています。綺麗な蓮の花じゃなくていい。泥だらけのままのあなたに、会いたいです』(つづく)#連続GRAVITY小説 #第22話(空白の21話)#現在ミステリー風になってます #23話でこの章は終わります #storysong